255話目【閃きは檻の中で】
シルフハイド国の防壁(精霊の木の根)に
沿って設置された足場を町の入り口側に辿った先、
精霊の木の幹から最も離れた場所で数人の男達が話をしている。
「皇帝がいるかぎり等級制度は無くならない、違うか?」
「特等級は皇帝だけに許された特権だろ、
俺達がどれだけ努力しようがなれやしない、
おまけに特等級は降格することもない、皇帝なんだから当然だな」
「だがその皇帝はビスマス様が亡くなられて一時的に不在になった、
次期皇帝はトリフェン様かアズラ様のどちらかで、
幸い…と言うべきか、どちらも世継ぎがいなかったからなぁ」
「犠牲は少ない方がいいに決まってる、…子供まで殺したくはねぇよ」
「本当にそれで上手く行くと思ったのですか?」
「なら他にどうすりゃよかったんだ? 俺だって散々悩んだんだ!」
「将軍の息子として生まれたお前には俺達の気持ちは分らねぇよ!」
「おい、言い過ぎだ」
「イナセだって選べた訳じゃねぇだろ」
「…すまん、俺にも家族がいて、子供の将来とか考えてそれで…」
「イナセのやって来たことを否定しているわけじゃない、悪かった」
「いえ、気にしていません」
「とにかくだ、等級制度を無くすためにクサウラ将軍の誘いには乗った、
だが何度も言ってるように俺達はアズラ様を殺しちゃいねぇ」
「突然地面が揺れ始めて坑道が崩落したんだ、
別に信じなくてもいいがそれが事実だぜ」
「なぁイナセ、俺達は死罪だろ? 家族はどうなる?」
「わかりません、貴方達を裁くのは私の仕事ではありませんから」
「そうか…飯持って来てくれてありがとな」
「足りなければ言ってください、また頂いて来ます」
「いや、俺達囚人には十分過ぎるって」
「これ旨いな、何食べてるのかよく分からんけど」
「魚だろ、シルフハイド国って森なのに魚捕れるんだな」
「それ植物らしいですよ」
「「「「 へぇ~ 」」」」
一時的にハッスルしていたが兵士長4人とイナセが
見晴らしの良い檻の中で仲良く食事中、
今日の朝食はロウヤクサ(改)のソテーとパンである。
「俺達のことよりお前はこれからどうするんだ?」
「どうとは?」
「シルフハイド王の居場所を突き止めるための偵察だったはずだろ、
この状況はどう考えてもよ…」
「止められなかった俺達の責任でもあるが、
結局クサウラ将軍の言う通りになっちまったな」
「なんで裏切ったんだイナセ? 偵察がバレたらキキン帝国は負ける、
作戦を考えたお前が一番分かってた筈だろ」
「なるほど、そう言って貴方達を差し向けたのですか、
責任感と仲間意識を煽り選択を迫る、クサウラらしい狡猾で下種なやり方です」
「おいおい、仮にも将軍に向かってどうなのよ?」
「クサウラ将軍は実力もあるし頭も切れる、下からの評判もいいぞ~、
俺にはそこまで嫌う理由が分からんね」
「いや、あまり良くない噂は確かにある、俺は全て知った上で話に乗ったんだ」
「マジ?」
「マジだ、コイツもだぞ」
「そうなのか?」
「まぁな、等級制度と魔法の習得制限を無くすために俺は参加した、
なのにもう1人皇族が現れるなんてよ…俺達のやったことはなんだったんだ…」
「「「 それなぁ… 」」」
汚れ役を買って出た彼等は新たな皇帝の登場にとても落胆したらしい。
「…」
「どうしたイナセ?」
「パンにカビでも生えてたか?」
「…、クサウラはカエン様の存在を本当に知らなかったのでしょうか?」
「「「「 なに? 」」」」
「クサウラはカエン様によって将軍に任命されました」
「そりゃそうだろ」
「3本柱を任命出来るのは皇帝だけなんだから当たり前だ」
「…いや待て、皇族を殺して国の根幹を揺るがそうとしてたんだぞ、
バレれば死罪だ、絶対に失敗は許されない、
あのクサウラ将軍がカエン様の存在を見落とすなんてあり得るのか?」
「無いな、カエン様を皇帝にするために
トリフェン様とアズラ様を排除したと考える方が自然だ」
「もっと分かり易く説明してくれ、俺難しいことは苦手なんだよ」
「俺も、何食べてるのかもよく分からんし、旨いけど」
「さっき魚って言っただろ」
「いえ植物です」
魚の切り身に似ているので勘違いするのも仕方ない。
「いいか? トドさんの次に将軍になるとしたら
クサウラ将軍かイナセだっただろ?」
「だな」
「どっちがなってもおかしくなかった」
「だからクサウラ将軍、いやクサウラはカエン様と取引してたんじゃねぇかってこと」
「「 おん? 」」
「カエン様を皇帝にする見返りにクサウラは将軍に任命して貰う、
それなら確実にイナセを出し抜ける」
「「 なるほど 」」
ポンッと手の平を拳で叩く2人の兵士長、
イナセ以外の4人は元々5等級の出生であり、
訓練と実戦と重ね兵士長まで昇進して来た人達である、
真面な教育を受ける機会がなかったので
兵士長といえど深く考えることが苦手な人もいる。
「カエン様が皇帝になってからは従順に従うだけで
クサウラは何もしようとしなかった、…分かっちまったな」
「あぁ、俺達は用済みってことだ」
「元々切り捨てるつもりだったのでしょう」
「そんな!?」
「やめろよイナセ、そんなことねぇよな? な?」
「残念だがあり得るぞ、クサウラは今までも似たようなことをしてきたって噂だ」
「今回の仕事は秘密を知る俺達を処分するのに最適だぜ、
イナセとやり合ってどちらかが死ねば良し、
生きて帰ったとしても裏切者とか適当な理由で投獄でもなんでも出来る」
「マジかよ…だとしたら俺の家族は今頃…」
「まさかお前、話したのか?」
「話すわけねぇだろ、でも…」
「クサウラは自らの評判を気にします、正当な理由がなければ手を出しません」
「本当かイナセ? そう思うか?」
「はい、実際に私とクサウラは互いに敵視していますが
表向きは協力し合っています、秘密を知っているかもハッキリしない方を
無理やり捕えるような危険は冒さないでしょう」
「そうか、よかった」
「ほらな、何も知らねぇんだから大丈夫だって」
「(あくまでもクサウラ自身が動く場合の話ですが)」
「(そうでも考えねぇとやってられねぇよな、助かるぜイナセ)」
「(俺達が迂闊に戻るのは危険だし、これからどうすっかなぁ…)」
パンを齧りながら頭を捻っている。
「ところでよイナセ」
「はい」
「お前の後ろのヤツはなんなんだ?」
「さっきからガジガジ煩さいんだけどよ~」
「「 うんうん 」」
イナセの後ろに巨大なトンボが張り付いて檻をガジガジしている。
「メガドラゴというこの辺り特有の魔物だそうです」
「「「「 ほ~ん 」」」」
「結構凶悪な顎してるぜ」
「強いのか?」
「それなりに危険だとは聞いています、噛まれると手足を寸断されるとか」
「「「「 ほ~ん 」」」」
「全然欠けてねぇし、この檻質の良いミスリル使ってんのな、キキン帝国産か?」
「へへっ、当然だろ」
「なんでお前が誇らしそうな顔してんだよ」
「実は俺、兵士の前はミスリル掘ってたんだ」
「その顔やめろ、腹立つ」
兵士長の1人が親指立ててドヤ顔している。
「取り敢えずガジガジ煩いから何とかしてくれよイナセ」
「槍を置いて来ましたので無理です、飛ばれると厄介ですし」
「棒ならあるぞ、葉っぱ付きの」
「そりゃ枝だ」
「フォークで何とかならないか?」
「追い払う程度なら可能かもしれません、では」
イナセが立ち上がってメガドラゴの腹をフォークでブスッと突くと
ギギァっと鳴いて檻から離れた。
「煩っ!?」
「飛ぶと煩すぎだろコイツ!?」
「何だって?」
「羽音が煩いって言ったんだ!」
「聞こえねぇよ!」
「(悪化しましたね…)」
顎をガチガチ鳴らしながら檻の周りを周回するメガドラゴ、
隣にいても声が聞き取れないほど煩いので一同が両耳を塞いでいる。
「メガドラゴの羽音だ~!」
「近い、町の中にいるわ! 誰かが襲われる前に探して!」
「見つけたらハイエルフに任せるのよ! 子供は家に戻って!」
「慣れてないヤツは迂闊に手を出すな! メガドラゴはしつこいぞ!」
一方、エルフ達は蜂の巣を突いたみたいに大騒ぎ、
音の発信源を探してハイエルフが飛び回っている。
「(騒ぎになってしまった…)」
「煩せぇ! 降りて来いこらぁ!」
「くそっ、剣があればなぁ…」」
「こっちが手を出せねぇと思って調子乗ってんじゃねぇぞ!
って危ねぇ!? 枝じゃ流石に無理だわ」
「檻から手を出すな! 腕が飛ぶぞ!」
「何だって?」
「回復士もいねぇんだからやめろって言ってんの!」
「聞こえねぇよ!」
『 あ 』
風の刃に寸断されてメガドラゴが輪切りになって落ちた。
「皆さ~ん、ここにいましたよ~、
私がやっつけたのでもう大丈夫ですよ~」
「助かりましたペナさん、後はこちらで処理しますので」
「お願いします~」
エルフ達が輪切りになったメガドラゴを回収して行った。
「すげ~今の魔法だよな?」
「たぶんな、知らんけど」
「イナセ分かるか?」
「エルフの方々が得意とする風魔法です」
「「「「 へぇ~ 」」」」
「やっぱ魔法って必要だと思う」
「空飛んでるヤツにはいいな、剣だと届かねぇ」
「1番は回復魔法だろ」
「だな、兵士の生存率が上がる」
「さっきのエルフ何か太くなかったか?」
「「「 え? 」」」
「オークのペナさんです、エルフではありません」
「へぇ~アレがオークか」
「「「 … 」」」
キキン帝国は鎖国的な一面もあるので
兵士長レベルでも常識的な知識を有していなかったりする、
学校に通っていない松本もキキン帝国なら普通なのかもしれない。
「これ旨いよな」
「何食べてるのかよく分らんけど旨い」
「イカだろ、シルフハイド国って森なのにイカ捕れるんだな」
「さっきのメガドラゴらしいですよ」
「「「「 へぇ~ 」」」」
追加されたメガドラゴリングを囲む一同、
ついでにイナセのフォークも新しいヤツと交換してもらった。
「イカってこんなんだったか?
もっと歯切れが悪くて噛めば噛むほど味がでる…」
「お前それ干物だろ、生のヤツを調理するとこんなんだぞ」
「生のイカ? イカねぇ~…」
「内地の市場で見たことがありませんか?」
「イカなんてわざわざ内地で買わねぇからなぁ、
高いだろ絶対、俺には外地で売ってる干物で十分」
「酒ばっかり飲んでんじゃねぇぞ、これだから独り身は」
「だからあの時結婚しとけって言ったんだよ」
「まずは髭剃れ、ボサボサだと女受け悪い」
「オナラも気を付けた方が良いです、その辺でバスバスやられたらドン引きです」
「何でイカの話でそこまで言われねぇといけねぇんだ…」
『 ははははは! 』
「バス…」
「おいぃぃぃ!」
「いや今のはやるべきだったろ」
「完璧だったなって臭ぁ!? 風でこっちに来た!」
『 ははははは! 』
檻の中ではしゃぐオジサン達、くだらなさに家飲み感を感じる。
因みに、彼らの言う『生のイカ』とは冷凍イカのこと、
キキン帝国は海の幸を交易で手に入れているので、
運搬中に腐らないように干物か氷魔法で冷凍保存された冷凍物になる、
内地の市場では魚とかイカが内包された氷のブロックが積まれているそうな、
輸送時に干物と違って場所を取るし、
保存には数少ない氷魔法習得者が必要となるため
『生のイカ』は中々お高い品となっている。
「なぁイナセ、シルフハイド国との戦争が指示されてから
急にトドさんと険悪になっただろ、アレはクサウラ対策だったのか?」
「はい、皇帝に賛同している間は手を出し難いですから」
「しかも優秀な兵士長で重要な戦力だ、そりゃ排除できんわな」
「なら国を捨てた訳じゃないんだな?」
「はい、私はずっとキキン帝国のために行動しています」
「この状況でもか?」
「はい」
「良かった~、俺はもう駄目かと…」
「いやでも、奇襲作戦のことはシルフハイド国側にバレたんだろ?」
「私の目的はシルフハイド王に謁見し協力を仰ぐことでした、
偵察はそのための建前、多少の差異はありますが予定通りです」
「「 ほ~ん 」」
「「 (よく分からん) 」」
「問題はクサウラの目的が何かということ」
「「「「 おん? 」」」」
「実際に戦争となれば奇襲作戦以外にキキン帝国が勝つ見込みはありません」
「そうだな」
「それは俺にも分かる」
「剣と魔法じゃ相性が悪い」
「誤魔化しが効く程度の監視役を送り込んで来ると思っていましたが」
「俺達のことか、そりゃ悪かった」
「最初から本気でやっちまったからな~」
「仕方ねぇよ、そういう指示だったし」
「全然相手にならんかったけどな」
「クサウラは偵察が失敗するように仕向けました、
この状況で国の勝敗より私の排除を優先したということです、
何故? 他に勝つための奇策があるのでしょうか?」
「「「「 う~ん… 」」」
首を齧げる兵士長達、メガドラゴリングを齧りながら1人が口を開いた。
「勝つ気がないんじゃないか?」
「んな馬鹿な」
「だってよ~」
「負ける戦いを挑む筈がねぇだろ、クサウラだぞ」
「私も同じ答えです」
「ほらな、戦いは勝たないと意味がねぇ」
「いえ、そうではありません」
「「「「 はい? 」」」」
「勝つ気がない、いえ、勝つ必要がない」
「分かるか?」
「「「 分からん 」」」
兵士長達が首を横に振っている。
「この戦争の発端はハイエルフに襲われた方達の報復とされていますが、
実際にはカエン様が風の精霊様の力を欲しているだけです、
シルフハイド国側からすれば只の言い掛かり、
何の正当性も無い無益な争いです」
「「「「 ほう 」」」」
「そのためシルフハイド王は積極的に交戦はせず、
こちら側が攻め込むまでは静観されています、
戦争回避、もしくは早期終戦のためなら助力を得られる可能性は高い、
魔王に関する懸念のあるのですが今は説明を省きましょう」
「「「「 助かる 」」」」
既に2名ほど情報過多でオーバーヒート気味である。
「シルフハイド国側には囮部隊の保護を依頼し、
最大の脅威となるクサウラを私が止める、
それが双方に最も犠牲が少なくなる戦争の終わらせ方です、
愚かな皇帝には無理やりにでも結果を受け入れて頂きます」
「お前、もしかして皇帝を…」
「必要であれば、私が」
「「「「 … 」」」」
「私欲のために多くの国民に命を捨てろと言う、
カエン様は皇帝になられました、
ですがキキン帝国の国民を憐れまない者にキキン帝の名は相応しくない、
その時は私も貴方達と同じです、
もし可能であれば一緒に食事でも如何ですか?」
「そうか、変わらねぇな俺達、昔のまんまだ」
「イカ食おうぜ、生のヤツ」
「干物と酒じゃ駄目か?」
「ははは、皇族殺しにそんな自由が許される筈ねぇっての、直ぐに死罪だ」
「やってねぇけどな」
やってはいないらしい。
「ですが、私の計画は流石に都合が良過ぎる」
「駄目なのか?」
「シルフハイド王に協力を断られました」
「ヤバくね?」
「ヤバいだろ」
「俺の家族がぁぁぁ…」
「泣くなよ、ほらイカやるから」
「そちらはまだ交渉の余地があります、
ルコール共和国とカード王国の代表者も来られていますし、
良い方向に話しが進むと思います、いずれにしろ再考は必要ですが」
「なら、まだ希望はあるか」
「イナセ次第だな、頼むぜ」
「マジで頼むぞイナセェ~、ほらイカやるから」
「(俺が渡したヤツ)」
「問題はクサウラの目的、恐らく私と同じ考えでしょう」
「邪魔なイナセを処分してからシルフハイド王と手を組むってことか」
「攻め込んだ後の交渉なんて上手く行くのか?」
「「 さぁ? 」」
「直前で作戦を変えて来るかもしれません、
適当な理由を付けて囮部隊を動かさないとか、
いや…、私が戻った時点で裏切者とすれば開戦前に対処出来るか」
「マジかよ…」
「おいおい…」
「ならその後は…戦争を止めれば国民の支持を得られる…となると…」
「おいイナセ、お前が戻れないなら詰んでねぇか?」
「問題ありません、クサウラの真意も理解出来ました、
貴方達と話せて良かった」
「「「「 ? 」」」」
一方その頃、キキン帝の宮殿では。
「俺の聞き間違いか? クサウラ将軍もう1度言ってくれ」
「はい、イナセ兵士長がシルフハイド国に寝返る可能性があります」
「あ~?」
玉座に座りながら小指で耳をホジホジするキキン帝、
クサウラ将軍が近況の報告中である。
「今の聞いたかツキヨ参謀?
俺にはイナセ兵士長が裏切ると聞こえたんだが」
「私もそう聞こえました」
「はぁ~馬鹿なことを言うな、聞き分けの無い父親と違って
招集した民を率先して訓練していたのは誰だ? イナセ兵士長だ、
不足した装備の解決案は? 作戦の立案は?」
「イナセ兵士長です」
「そうだ、手腕はクサウラ将軍も認めていただろう、
ははははは、まったくくだらん心配だと思わんかツキヨ参謀?」
「…はい」
「それよりもだ、マツバの残した書簡はいつになったら見つかる?
アレの意味を理解していない訳ではあるまい」
「当然理解しております、お言葉ですがこれだけ探しても
見つからないのであれば存在しないのではありませんか?」
「まぁ、そうかもしれんが…どうする?」
「わずかな可能性でも見過ごすことは出来ません、捜索を続けて下さい」
「ふぅん…了解しました、ツキヨ参謀何か新しい情報は?」
「今のところは特に」
「外地に潜伏していた2人からもか? 俺なら一番最初に事情を聞くが」
「書簡に付いては何も、何度訊ねても頑なに知らないと言っています」
「…もしかして締め上げたか?」
「多少ですよ、ほほほ」
「おいおい…無実かもしれないんだ、あまり無理してやるなよ」
「心配には及びませんよクサウラ将軍、私は回復士ですから」
「(余計に質が悪いだろ…)それではキキン帝、ツキヨ参謀、
これで失礼させて頂きます」
「頼むぞクサウラ将軍、戦力が足り無さそうなら遠慮なく言え、
俺が魔法で支援してやる」
「ははは、その時は是非」
クサウラが部屋を出て行った。
そして人気のない通路。
「クサウラ、さっきの話は本当なの?」
「可能性の話だ、マイの件があるからな」
「そうね、もし寝返っていたら…」
「最悪だな、イナセの相手は俺にしか出来ん、こっちで判断させてもらうぞ」
「えぇ、任せるわ、作戦を考え直した方がいいんじゃない?」
「必要ない、やることは同じだ、シルフハイド王の首を取れば終わる」
「甘く考えすぎじゃないの? シルフハイド王は魔法に長けて…」
「ならお前は俺に勝てるのか?」
「…いいえ」
「そういうことだ、開戦後はハイエルフが戦場を抜けて来るかもしれん、
念のため兵士を増員しておく、絶対に宮殿から出るなよ」
「わかったわ」
「それとだ、冗談でもキキン帝を戦場に来させるなよ」
「当たり前でしょ」
「ははは、兵士達の詰め所に顔を出してから戻る、
次に合うのシルフハイド国とケリが付いた後だ」
「良い知らせを待ってるわ」
「あぁ、期待していろ」
宮殿の外にて待機していた双子兵士長のタラコとスジコと合流。
「「 お疲れ様ですクサウラ将軍 」」
「待たせたな2人共、ダダに会ってから戻るぞ、
今後の動きを説明しておかないといけないからな」
「「 ふふふ、ご報告… 」」
顔を見合わせる双子。
「ちょっとスジコ」
「ちょっとタラコ」
「「 …、どうぞどうぞ、どうぞ… 」」
「(またか、別に一緒に話してもいいんだがなぁ…)」
話す内容が被ったので譲り合う双子、稀によくある。
「じゃ私が」
「お願いね」
今回はスジコが話すらしい。
「おほん、ご報告は上手く行きましたか?」
「必要なことは全てお伝えした、あとは行動あるのみ」
「では予定通り?」
「あぁ、次のご報告でお喜び頂けるように頑張らねばな」
「「 ふふふふふ 」」
悪い笑顔を浮かべた双子とクサウラは詰所へと歩いて行った。




