219話目【ドーナツ、トナツ、パトリコ】
バトーとマダラがポッポ村に向かった同日、
朝食を終えた松本はトナツ先生の診療室にやって来た。
「昨日寝ている間に確認してみたんだけどさ、君予想通り回復症だね」
「ほう、一応確認なんですけど可能性で言うとどれくらいですか?」
「う~んとね、形にするとこれくらい」
机の上に丸いドーナツを2個並べ、スティック状のドーナツを1個横に沿えるトナツ。
「わ~お100%…」
「そう残念だけど100%、マツモト君どっち食べたい?」
「じゃこっち頂きます」
ピンク色のチョコレートがコーティングされたドーナツは松本の元へ、
白色のチョコレートの上にカラフルな粒々がトッピングされたドーナツはトナツの元へ、
シンプルに砂糖がまぶされたスティック状のドーナツは既にトナツが堪能中。
「それ美味しいよ~女性に1番人気のヤツ、中にクリーム入ってるから」
「うむ、うんまい、なんとも贅沢なドーナツですね」
「甘すぎるって言う人もいるけど僕はいいと思うんだよね~、
クリームが甘い分チョコレートがサッパリでさ、ほのかに酸味も感じられるでしょ」
「確かに、いや~本当に贅沢なドーナツですよ(値段と脂質的な意味で)」
ドーナツ大好きトナツ先生は今日もドーナツ三昧である。
「正直昨日のあれを見た時点で確信してたんだけど、やっぱりなぁ~って感じ」
「棍棒ですか」
「いや全部だよ全部、腕立てに懸垂に足のヤツなんて言うんだっけ?」
「スクワットですね」
「あ~それそれ、棍棒もずっと振ってるし、最後の方なんて失神しそうになってたじゃん」
「失神する位じゃないと意味ないんですよ、追い込むためのトレーニングですから」
「駄目駄目明らかにやりすぎ、僕あの棍棒真面に振れなかったからね、もうその時点で異常だからね」
「振ってみたんですか?」
「うん、さっき試しに1回だけ、止められなくて床壊しちゃった…」
「あぁ~(さっきの音これだったのか)」
診療室の床のタイルが2枚割れている。
「あとさ、あのカンカンやってたの何だったの? 天井からぶら下げてたヤツ」
「盾で弾き返す練習です、感覚掴むの難しいんですよ」
「そうなんだ、一生懸命だったから声掛けなかったけどさ、
正直響いて煩いから辞めて欲しかったんだよね、あと奇声も聞いてて不安になる」
「すみませんでしたぁぁぁ!」
深々と頭を下げる松本、騒音問題は放置すると大変なことになります、気を付けましょう。
松本考案、『バトーの様に盾で弾けるようになる練習方法!!』
※実際に成果が出るかは貴方次第です。
1、天井とか木などから適当な紐で適当な重りを吊るす。
2、重りを揺らし適当な盾で弾く。
3、可能な限りやる、腕が震え出してからが本番。
「上達のためのアドバイス」
弾きに成功すると殆ど感覚が無くて無音だよ!
練習音が気になる場合は砂を詰めた袋を使おう!
いきなり正面に弾くのは難しい、始めは斜め方向に円を描くように弾くと良し!
慣れてきたら重りを重くしよう!
(受け止めて自分が吹き飛ばされる位を目標とする)
継続は力、やらないよりは確実に良いという方針の元、
松本は見えないところでいろいろ頑張っています、
多分怪我をするので絶対にマネしないで下さい。
「今はまだ軽症けどあんなこと続けてたら確実に悪化しちゃうから、
症状が進むと慢性的な倦怠感とか頭痛とか大変だよ、
あ、倦怠感ってわかる? 体が疲れて重い感じ、なんにもやる気無くなっちゃうの」
「いや~分かってはいるんですけどねぇ」
「まだ子供なんだし無理しない方がいいよ、
もっと回数減らすとか3日置きにするとか、いっそのこと辞めちゃえば?
体のことを考えると毒だよあれは、辞めたら駄目なの?」
「それはちょっとぉ、やらないと不安になるというか…」
「え? あ、もしかして精神的な話? あぁ~なるほどね、流石に異常過ぎるもんねあれ、
やらないと状情緒不安定になったりする? 突然意味もなく悲しくなったりとかする?」
「いや、そういう精神病的なものでは無いので大丈夫です」
「え? 違うの?」
「違います」
筋肉痛にならないと不安になる人種なのである意味間違ってはいない、
一種の脅迫概念とも言える…かもしれない。
「確かにキツイですけど楽しいんですよ、
筋トレってやった分だけ自分に返ってくるじゃないですか、筋肉は裏切りません!」
「君って光筋教団?」
「違いますよ、魔法の粉は買ってますけど」
「そうなんだ、でもやり過ぎは駄目だから、現に回復症になっちゃてるし暫く控えないとさ」
「先生の言ってることはす~んごくわかるんですけどねぇ、先生はドーナツ辞められます?」
「それは無理かな、ドーナツは僕の生活の一部になっちゃってるんだよね、
ドーナツの無い人生なんてイチゴとクリームの無いショートケーキみたいなもの、
そんなの悲しいでしょ?」
「(ただのスポンジだな、それかフルーツサンド)」
恐らくドーナツ先生も病気である。
「俺にとって筋トレってドーナツみたいなものなんです」
「痛い所を突いてくる…時々君の言葉って妙に説得力あるよね、本当に子供?」
「疑わないで下さいドーナツ先生…ありのままの世界を信じて…」
透き通るような声で囁く松本、心なしか後光が見える。
「心に直接話しかけようとしないでくれる? ちょっと怖いから」
「はい」
天界仕込みの囁きは普通に拒否された。
「はぁ~…正直さ、マツモト君は絶対辞めないと思ってたんだよね、
そういう気質だから子供なのに回復症になってるんだろうし」
「すみませんドーナツ先生、俺も駄目だってのは分かるんですけど…」
「いいよいいよ、僕から伝えるべきことは全部伝えたし好きに選んでよ、
悪化したらまた考えよう、直ぐに死んじゃう病気じゃないからさ」
「そうします」
「筋トレは自分の好きな時に辞められるから多少は無理してもいいけど、
魔物相手にだけは無理しない方がいいよ、ほら君冒険者やってるでしょ、
君みたいに無理ばっかりやって来たんだろうな~って人知ってるんだよね」
「流石に魔物相手には無理しませんって、俺なんかコロッと死んじゃいますからね」
「そうそう、それくらいの慎重な方がいいよ~、あんなの真似したら確実に死んじゃうから、
回復魔法があるのにあれはねぇ…いや本当にもう、ねぇ…」
腕を組んでシミジミ頷くトナツ、相当考え深いらしい。
「冒険者ギルドでは基本的に無理するなって方針ですけど…どんな人なんですか?」
「なんて言うかね~生きる伝説みたいな感じ」
「へぇ~格好いい」
「あんまり憧れない方がいいと思うけどね、無理ばっかりしてたせいで
全身傷だらけで左腕欠損しちゃったみたいだし、魔道補助具って知ってる?」
「めちゃめちゃ高性能でめちゃめちゃ高価な義手とか義足ですよね、カプアさん達が作ってる」
「それそれ、君そこまで知ってたんだ、魔道補助具には僕も携わってるんだけどさ、
初めて魔道義手を装着して魔物と戦ったのがその人、元Sランク冒険者のパトリコさんね」
「ほぉ~Sランク冒険者ですか(最近よく出るな~Sランク)」
人の縁とはそういうもの、Sランク冒険者と知り合いだから同レベルの人達に出会いやすくなる、
現実でも全く縁のなかった界隈に1人知り合いが出来ればそこから関係が広がって行く、
世の中ではこれを人脈と言うとか言わないとか。
「元ね、何年か前にSランクは引退して今はAランクとして活動してる」
「Sランクの人でも片腕が無くなっちゃうと流石にですか」
「いやいや違う違う」
「何がですか?」
「よいしょっと、その続きは飲み物おかわりしてからにしよう」
「俺行きますよ、何がいいですか?」
「あ~いいよいいよ、折角立ったし一緒に行こう」
「はい~」
場所を食堂に移しトナツはコーヒー、マツモトは野菜ジュースを持ってテーブルに着席。
「それで何が違うんですか?」
「パトリコさんが左腕を無くしたのはずっと前で片腕になってからSランク冒険者になったの、
だからSランクの時の字名は『隻腕』、凄いよね~」
「はぁ~それで生きる伝説ですか、とんでもない人ですね」
「そうそう、そういう経緯の人だから魔道補助具の耐久試験とデータ取りのために
実際の戦闘で使って貰うことになったんだ、計算したとはいえちゃんと使える保証はなかったし、
そんな危険なことを頼めるのはパトリコさんだけだったんだよね、実際に壊れちゃったし」
「耐久値不足だったんですか」
「主に関節部がね、肘と手首と指が何本がバラバラになっちゃった」
「可動部はどうやっても耐久値落ちるから仕方ないですよ」
「まぁそうなんだけど、あれは半分はパトリコさんが悪いかな、
最初だし僕達は冒険者との軽い模擬戦を想定してたんだけど、
張り切ったパトリコさんが討伐依頼を受けちゃって」
「ひぇ~…無理してますねぇ、いや元々片腕で戦ってたから問題ないのか?」
「元々は右手だけじゃなくて左手は戦闘用の義手使ってたのね、腕がそのまま武器になる感じのヤツ、
それで魔物と戦う前に…あれは気合を入れようとしたのかな?
地面に思いっきりハンマーを叩きつけてね、ボンって壊れちゃったの、ショックだったなぁ…」
「実戦で壊れたんじゃなかったんですか…」
「うん、戦う前に壊れちゃったの、んで魔物は右手だけで討伐してた」
「わ~お…すご~い…」
スプーンでコーヒーをゆっくりと搔き回すトナツ、開発陣の苦悩が滲んでいる。
「とういことは世界で初めて魔道補助具を使用したのはパトリコさんだったんですね」
「それも違うんだな~、初めて装着して実際に動かしたのはカプア主任ね、
魔道補助具の体との接合部って見たことある?」
「無いですね」
「魔道補助具は体から発せられるマナを利用して動いてる、だから魔道補助具との接合部、
生身の肉体側にはマナを感知して魔道補助具を動かすための信号を送る装置が必要になるわけ、
って普通に話しちゃってるけどマツモト君この話理解できそう?」
「大丈夫です、ちゃんと理解できてます(機械を動かす時の入力信号と出力信号だな)」
「え、本当? じゃぁ続けるけど、信号を感知して送る役割のある接合部は
手術で体に取り付けるのね、あ、僕が担当してるのは主にそこのところ」
「ドーナツ先生って手術するんですね、てっきり内科だと思ってました」
「え? うん? うん、手術はするね、出産の立ち合いとか問診とかもするね、医者だもん僕」
「(もしかして内科とか外科の区分ないのか? 凄いなこの世界のお医者さん)」
回復魔法があるのであまり骨折とかの手術はない、
事故で体内に異物が残ったら切開して除去したりはするそうな。
「魔道補助具の試作品を作って動作確認をしただけじゃ不十分でしょ、
最終的には体に取り付けて実際に動かせないと意味がない、
カプア主任は自分の体で確認するために3回? 4回位だったかな? 手術してるんだよね」
「そんなにですか…大変だったんですね」
「本当にね、手術って結構負担が大きいんだよね、感染症の危険もあるし、
カプア主任の功績は大きいよ~、自分で体感して修正点を纏めてさ、
何度も改良を重ねてようやく形にした試作品を見せて
魔道補助具に懐疑的だったパトリコさんを口説いたってわけ」
「(そして実戦前に壊されたと…そりゃ悲しくなる)」
それでもカプアとハンクは泣きながら壊れた試作品を調査したらしい。
「僕にはパトリコさんやカプア主任みたいな強さはないからさ、
尊敬してるんだよね、魔道補助具の開発は言葉にするほど簡単じゃなかったんだ、
事故とかもあって…」
「事故ですか?」
「あ…マツモト君今の聞かなかったことにしてくれない?」
「いいですけど、聞いたら駄目なことなんですか?」
「うん、あんまり明るい話じゃないから、僕の口からはちょっとね」
「了解です」
「聞き分けいいよね君、本当に子供? もっと好奇心とか無いの?」
「いやありますけど、先生が聞くなって言ったんじゃないですか、
疑わないで下さいドーナツ先生…ありのままの世界を信じて…」
「やめてやめて、それなんか不安になるから! 現実見失いそうになるから!」
透き通るような松本の声と後光に怯えるトナツ、
軽い洗脳、精神攻撃の類に分類される。
「そういえば明日暇ですか先生?」
「え? どうしたの急に? 明日はねぇ…今のところ暇かな、今日は駄目だけど」
「ほう、今日は誰かの手術ですか」
「いや手術はまだ先だね、いろいろ問題ありそうだから詳しく調べないと」
コーヒーを飲み干し2杯目を注ぐトナツ、砂糖はスプーン2杯、ミルクは無しである。
「ほら君と一緒に来た賢者の末裔のストックさん、
今日は午後から彼に魔道義手を取り付けるための下調べをする予定なんだ」
「じゃぁ入れ違いになっちゃいますね、俺は午後から出かける予定なんで」
「そうなんだ、一緒に魔道補助具を見せてあげようと思ってたんだけど」
「すみません、どうしても今日中に何とかしないといけない問題があるので、
また今度お願いします」
「いいよ~」
松本の抱える問題とは仕事探しである。
「それで? 明日は僕に何か用なの?」
「劇のチケットを2枚貰ったんですよ、一緒に見に行かないかな~って、ほらこれ」
松本がテーブルに置いたチケットをトナツが引き寄せる。
「おろ? え~これ貰ったの? 高いよ~これ」
「え? そうなんですか?」
「うん高い、一番歴史のある劇場だしさ、席が凄いよこれ、1階の中央のだから一番見やすい場所」
「えぇ!? そんな凄いチケットだったんです痛ぁっ!?」
左耳に走った痛みで椅子から転げ落ちる松本。
「大げさだねぇ坊や、その程度でビビってちゃ傷が泣くよ、だはははは!」
食堂で高笑いする全身傷だらけの女性、
甲冑の左手で指を弾き動作、所謂デコピンを繰り返している、
どうやら松本の左耳を思いっきり弾いたらしい。
「(いったぁぁぁ!? いきなり何!? おぃぃぃ柔道耳になるってぇぇ!)」
床に転がりながら左耳を回復中の松本。
柔道耳とは柔道経験者がよくなっているボコボコに膨らんだ耳のこと、
内出血した血液が耳の形で固まるのでよく餃子とか弄られるヤツ。
血が固まる前のパンパンに膨らんだ状態だと軽く触っただけでも激痛、
学生の諸君は友達がなっていたとしても絶対に触らないように、
冗談ではすまされない激痛なので柔道部のフルパワーで反撃される恐れがある。
もし現在進行形で内出血中の人は病院で血を抜いて貰おう、
多少楽になるのと症状を軽減出来れば将来イヤホンを嵌めることが出来るぞ!
但し出血自体は中々収まらないので繰り返し抜く必要がある、とにかく頑張れ!
「いらっしゃいパトリコさん、魔道義手の調子が良くない感じ?」
「おう、ちょっと反応が鈍い感じがするんだよ、カプアとハンクは来てるかい?」
「あ~多分接合部が緩んじゃってるんだね、2人は午後からだからもう少し待ってよ」
「了解、そういやあの2人なんか馬車弄ってたぞ」
「フルムド伯爵の馬車らしいよ、いろいろ改造するって張り切ってたね」
「ふ~ん、相変わらず物弄りがすきだねぇ」
慣れた様子で野菜ジュースを注ぎ一気に飲み干すパトリコ、
椅子に座らず2杯目を注いでいる。
「(この女版ミーシャさんがパトリコさんだったのか…なんか納得)」
立ち上がった松本が左耳を擦りながら巨体を見上げている。
『隻腕のパトリコ』
元Sランク冒険者、現Aランク冒険者(ダナブル所属)。
38歳女性、独身。
とにかくパワーで押すタイプの戦闘狂。
ノルドヴェルとタレンギがSランクになった際に
一足先にSランクになっていたミーシャとルドルフと合わせて後継が出来たと判断、
体と年齢のこともあり一線から身を引いた(当時30歳)。
魔道義手を手に入れた現在では全盛期を凌ぐ戦闘力になっているのだが
魔道補助具のデータ取りと後輩育成のためにダナブルに留まっている。
「その左腕は義手だったんですね、自然すぎて気が付きませんでした」
「そうだろうとも、コイツは本物の腕と同じさ、いやそれ以上だねぇ、
鍛えた右腕より力が強い、それに痛みも感じないから無理が効くのさ」
「「 (絶対想定外の使い方してるな…) 」」
拳を握り込み力んで見せるパトリコ、
開発者泣かせの言動にトナツと松本が目を細めている。
「まさかここで会うとは意外だったよ、坊や名前は?」
「松本です、よろしくお願いします~(凄いなこれ)」
差し出された義手を握り返すと固い感触以外は本物と遜色が無く内心驚いている。
「この坊やと何の話をしてたんだいドーナツ先生?」
「魔道義手とかいろいろね、一番直近はこのチケット」
「どれどれ、あぁ~演劇かい、アタイはあんまり興味ない…ん? これ明日の…」
「そうそう、明日のヤツ、しかも一番いい席じゃないそれ? マツモト君が貰ったんだって」
「ふ~ん…坊やコイツを誰から貰ったんだい?」
「ギルドの受付のヤルエルさんですけど」
「何ぃ?」
「ヒェッ…近い、顔が近いですってパトリコさん…」
「気にするんじゃないよ、それよりヤルエルはなんて言ってこれを坊やに渡したんだい?」
「な、なんか渡そうとしていた人が見に来れなくなったとかで…
俺も他の人に渡すように進めたんですけど、ヤルエルさんを知らない俺に見て欲しいって…」
「何ぃぃ!?」
「あだだだ!? ちょっとパトリコさん肩!? 肩痛いんですけどぉぉ!?」
額に血管を浮かせたパトリコの義手が松本の肩にめり込んでいる。
「何ふざけたこと言ってんだいあのヒヨッコは!」
「あだだだだ折れるってぇぇ!! これ折れちゃうぅぅ!! 右肩粉砕しちゃうぅぅ!!」
「おっと悪かったな、つい力が入っちまった、大丈夫かい坊や」
「はぁ…はぁ…ぜ、全然大丈夫ですよ、ははは…」
「(…本当かなぁ? なんか変な汗搔いてるし顔引きつってるけどなぁ…)」
トナツの勘ぐり通り松本の肩甲骨と鎖骨にヒビが入っています。
「ドーナツ先生、ちょっと用事が出来たからコイツの手入れは今度にするわ」
「了解、無理に使うと余計に悪くなるから辞めてね」
「わかってるよ、また来る、じゃな坊や」
「「 はい~ 」」
パトリコは嵐のように去って行った。
「パトリコさん怒ってましたね、なんか悪いことしましたっけ?」
「あの様子だとヤルエルさんでしょ、昔からの知り合いらしいし」
「はぁ、そうなんですか」
「そうそう、それより君本当に大丈夫? 痛いの我慢してるでしょ」
「まぁ…今回復中です」
「やっぱりねぇ、そうだと思ったんだ」
「この程度なら全然大丈夫ですんで」
「この程度って…君本当に子供っぽくないよね、普通泣くよ君位の年齢なら、貫禄あり過ぎ」
「…、疑わないで下さいドーナツ先生…ありのままの世界を信じて…」
「やめて! ちょっともう不安になるんだって! 僕が悪かったから! もう言わないから!」
松本は変な特技を身に着けた、
恐らく今後活躍することは無い。




