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189話目【悪人、勝手に炊き出しす】

時刻は15時過ぎ。


「はいどうぞ、1人1個ずつありますから焦らなくて大丈夫ですよ~」

「家族の分も頂けないでしょうか? 全部で3人なんですか…」

「大丈夫ですよ、はいどうぞ~」

「ありがとう御座います」


被災者達が身を寄せた建物の中で支援物資を配るダルトンギルド長と数人の冒険者達。


「あの…申し訳ないのですが何か食べる物は無いでしょうか? 

 息子がお腹を空かせてまして…その…買いに行こうにもお金がなくてですね…

 家がああなってしまって交換できるような物も無くて…」


申し訳なさそうに話す男をみてダルトンも申し訳なさそうな顔をする。


「それはその…」


壁際に立つ身なりの整った男達をちらりと見て一瞬額に血管が浮くダルトン、

被災者支援の担当者が監視しているらしい。


「お~い、誰か変わってくれ、ちょっと外で一服してくるわ」

「はい~」

「一緒にどうですか? 多少気分が晴れますよ」

「え? はい? あのダルトンギルド長…」

「まままま、1本だけですよ」

「はぁ…」


冒険者と入れ替わり、目覚まし草を咥えながら男の肩を抱き外へと出るダルトン。

建物の裏にやってきた。


「一応聞きますけど目覚まし草苦手だったしります?」

「いえ、私も吸いますので」

「でしょうね、んじゃ、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

「「 ふぅ~… 」」


壁にもたれ掛かりながら煙を吐く2人。


「本当すみませんね、昼飯抜きになっちゃって、俺も娘がいますんで

 お子さんがお腹空かせてるのは親として心が痛みます」

「あ、いえ…」

「言い訳になるんですけど聞いて貰えませんか?」

「はぁ…」


ダルトンは事の経緯を説明した。


「「 ふぅ… 」」

「そうだったんですか」

「政治のくだらないゴタゴタです、本当すみません」

「貴方が謝る事では…」

「実はレジャーノ伯爵の指示で食料も確保してあるんですけど

 同じ理由で提供出来ない状態でして、二言目には規則に従えの一点張りでしてなんとも…、

 他の人達が差し入れてくれた物も裏で処分されました、俺が個人で差し入れしても結果は同じでしょう」

「誰がそんなことを…」

「ハッキリとは分かりません、まぁ大体の予想は付いてるんですど…

 俺が下手な事をいう訳にはいきませんので、その辺は勘弁して下さい」

「あ、いやいや詮索はしませんので、話して頂いて有難うございました、なんかそちらも大変なんですね」

「被災者の方々に比べれば全くですよ、家族も家も無くしてはいませんからね」

「まぁそれは…」

「食事の件なんですが夜飯は何とか準備できそうです、もう少し辛抱して下さい」

「本当ですか? やっと支援して頂けるんですね、よかった」

「あいや、正規の支援はまだ何も動きはないんですけどね、

 あったとしても量を少なくするとかマズくするとか、

 とにかくレジャーノ伯爵の評判を下げるような嫌がらせをしてくる筈です」

「え? じゃぁダルトンギルド長が?」

「それも考えたんですけどね、ウルダから来た冒険者2人が悪役を引き受けてくれましてねぇ、

 今魔物を狩りに行ってますんで、もうじき炊き出しをしてくれる手筈になってます」

「そうでしたか、有難い話です」

「建前上はバルジャーノの部外者が勝手に炊き出しして皆が勝手に食べに行くってことになりますんで、

 俺達から案内は出来ません、準備が出来たら知らせますんで宜しくお願いします」

「分かりました、他の人達にも知らせておいた方がいいですか?」

「いや、また変な妨害をされても面白くないんで出来れば内緒にしておいてください、

 他の人達の誘導役を頼んでもいいですかね?」

「任せて下さい、それ位は私にも出来ます」

「助かります、あそうそう、お腹空かせてるお子さんを当てもなく我慢させるのは辛いでしょう、

 その場合は説明して頂いても構いませんので」

「え? でも今バレない方がいいと…」

「出来ればの話ですよ、出来ればの、例えバレたとしても誰もあの2人を止められやしませんから」

「はぁ…そうなんですか」

「もう1本どうですか? ギルドじゃ一緒に吸ってくれるヤツがいなくて肩身が狭いんですよ」

「頂きます」

「「 ふぅ~… 」」


ダルトンと男は2本目を吸い終わると中に戻った。




一方その頃、襲撃があった場所から町を挟んで反対側の城壁付近では。


「ワイルドボア(猪っぽいヤツ)4頭にモギ(ワニっぽいヤツ)2匹、これだけあれば十分だろ~」

「やっぱり地元の冒険者がいると違うわね~、貴方達が一緒に来てくれて助かったわ」

「あ、いえ…(見つけただけだけどな…)」

「どうも…(何もしてないんですけど…)」

「(この人達おかしいよ…絶対同じランクじゃないよ…)」


魔物が乗った台車を引く冒険者一同。

満面の笑みのミーシャとルドルフに比べ意気消沈の冒険者チーム。


「ワイルドボアが居たわ! 前に出て!」

「まかせr…」

「どりやぁぁぁ!」

「おらぁぁぁ!」

「「「 えぇ… 」」」


ってな感じで、見つける端からミーシャとルドルフが飛び掛かり討伐するため

何出来ずに実力差を思い知らされたらしい。

※ミーシャとルドルフは基本的には共に前衛という超攻撃的なチームです、

 ギガントバジリスクや巨大モギのように一定の危険性が無い限りルドルフは後衛に回りません。 


「お陰で夜飯に間に合いそうだぜ~、悪いけどよ解体まで手伝ってくれねぇか?」

「いいですよ~、元々そのつもりですし」

「素材は全て置いて行きますんで、申し訳ないんですけどその後は任せていいですか? 

 ギルド長が言うには変な奴らが文句言ってくるらしいので」

「別に何か言われても素直に従う必要なんてないけどな、

 なんなんだソイツ等はよ~、手伝いはしない癖に文句だけ言ってきやがってよ~」

「「 まぁまぁ、抑えてリーダー 」」


カチキレ気味のリーダーをなだめるチームの2人、相当不満が溜まっているらしい。


「炊き出しの件は私達に任せておきなさい、これの事を何か聞かれたら

 適当に脅されたて奪われたとでも言っておけばいいわ」

「だはは、まるで俺達悪人みてぇだな!」

「なんでもいいわよ、とっとと解体して準備するわよ~」

『 はい~ 』


討伐された魔物は解体され素材になった。


「さてと、肉が手に入ったのはいいけど他の材料がないわね」

「材料どころか道具もねぇぞ、どうやって料理するか考えてなかったな」

「「 う~ん 」」


大量の肉を前に悩む2人。


「まぁ爪とか皮とかあるし、コレ売り払って他の材料買いましょ、

 私ちょっと行ってくるからミーシャ留守番お願いね」

「はいよ~、その間に肉切っとくわ」


爪と皮を持って城壁の中に消えるルドルフ、直ぐに野菜とパンが沢山積まれた台車を引いて戻って来た。


「速ぇなおい、もう買って来たのかよ」

「いや、なんか知らないオバちゃんに貰っちゃって」

「そんなに沢山か? ふ~ん…良かったじゃねぇか」

「まぁそうね、爪とか後ろに置いとくわ」

「それ俺が貰うわ、ちょっと換金して鍋とか探してくるからよ、留守番頼むわ」

「はい~、その間に野菜切ってるから」


爪と皮を持って城壁の中に消えるミーシャ、直ぐにデカイ鍋を持って戻って来た。


「速いわね、もう買って来たわけ」

「いや、なんか鍋が落ちててよ、拾って来た」

「んな馬鹿な、そんな都合のいい話ないでしょ、誰かが置いてたヤツじゃないのそれ?」

「いや多分捨ててあったんだと思うぜ、ほら」


ルドルフに鍋の裏側を見せるミーシャ、

『不用品、誰でも自由に使って下さい』と書かれた張り紙が付いている。


「な?」

「…そうね、まぁ丁度いいじゃない」

「他にも皿とかオタマとかテーブルとかあったからよ、ちょっと持ってくるわ」

「私も手伝うわ、台車で行きましょ」


こうして物凄い勢いで材料と道具が揃った。


「早速料理し始めましたよ、上手く行きましたねポルザギルド総長」

「おほほ、後はあの2人に任せて戻りましょうパニー」

「はい、おわぁあ!? 危なかった…」

「まだ片目に慣れていないのだからあまり無理をしてはいけませんよ」

「あははは、大丈夫ですほわぁぁ!?」

「おほほほほ」


当然そんな都合の良い話は無い、材料を集めていたポルザとパニーの仕業である。




野菜とワイルドボア2頭分の肉をコトコト煮込み、アクを取り続けて早1時間。

余った肉は冷凍保存中である。


「よし、肉も柔らかくなってるし、いい感じだな」

「これだけ野菜が入ってると冒険者鍋っぽくないわね~、スープに野菜の味が染み出てて美味し」

「だははは、いつもよりちょっと贅沢だな」


味見をしてホッコリとするルドルフ、料理長ミーシャが満足そうである。


『冒険者鍋』

適当に捕れた材料を適当に味付けする冒険者が野宿でよくやる鍋。

基本的に魔物の肉とその辺の山菜で作るので今回のように野菜が沢山入っていることは珍しい。


「でもちょっと作り過ぎたかしらね?」

「まぁ鍋の大きさに合わせちまったからな、

 食べに来る人がどれだけいるか分からねぇけど少ねぇよりはいいだろ」

「そうね」


作業に従事した衛兵や冒険者も食べる予定で鍋が用意されているので概ね計算通りである。

お替りも含めてあるので少し多めだが計算通りである。


「こらそこ! 何してるんだお前達!」


なんて会話をしていると衛兵がやって来た。


「ってまたアンタ等か、なんだこのデカイ鍋は? 何作ってるんだこれ?」


1日前に蟹を持って帰った真面目で仕事一筋の衛兵である。


「何って、肉と野菜を煮てるんですけど?」

「夜飯ですよ衛兵さん、俺達昼も食べて無いんで」

「いや、なに当然のように肉と野菜煮てるの? 大体何そのデカい鍋は?」

「「 冒険者鍋です 」」

「あそう、冒険者鍋ね、取りあえずそういう種類の料理なんだな?」

「その時で味が違うけど結構旨い鍋だぜ」

「素材の味を感じる鍋よ」

「なるほど、冒険者鍋は素材の味を生かした美味しい鍋と…」


メモを取る衛兵。


「アンタ達全く学んでないな? ここ王都ベルジャーノでは城壁近辺で火を使うことは禁止だ」

「えぇ~そんなこと言われてもね~ミーシャ」

「冷めたら美味しくないしなぁ~ルドルフ」

「こら、鍋を掻きまわすんじゃない、早く火を消すんだ」

「「 えぇ~ 」」


明らかに不満そうな2人、ミーシャがデカいオタマで鍋を掻きまわしている。


「あと3時間位待って貰えませんかねぇ?」

「そうよ~、やっと完成したってのにそれは無いわよ~」

「いや3時間ってなに? もうそれ待つってレベルじゃないよね? 普通に夜飯楽しもうとしてるよね?」

「そこをなんとか頼みますよ~、これ実は炊き出しなんですよ」

「炊き出し?」

「昨日の被災者向けの炊き出しよ、なんかいろいろあって食事が提供出来てないみたいでね、

 私達が勝手にやってるってわけ」

「そうか…いやしかし、俺は真面目で仕事一筋の衛兵、見たからには見逃すことは出来ん!

 …だから何も見ていないってことで宜しく頼む、他の衛兵達にも伝えておく」

「「 何も見ていません! 」」

「俺も何も見ていない!」


ビシッと敬礼する3人、お互いの目を見て軽く噴き出だした。


「折角だがら味見、いや毒見でもして行ってくれよ衛兵さん」

「いや、それは被災者の人達の分だ、私は受け取れん」

「ちょっと作り過ぎたっぽいのよね、助けると思って少しくらい食べて行きなさいよ」

「…仕方ない、頂こう」


真面目で仕事一筋の衛兵は毒見することにした。


「俺は昨晩正門の警備についていたからよく知らないんだが、

 もしかして襲撃犯を追い払ってくれたのはアンタ達か?」

「そうよ」

「なんとか追い払ったぜ」

「そうか、ありがとうな、俺じゃ何も出来なかったから本当に感謝してる」

「気にしないで、好きでやってるんだから」

「なんてたって俺達は冒険者だからな、自由に好きな事をやるのさ」

「そうか、だが冒険者でも規則は守って貰わないと困る、

 取りあえずバルジャーノでは城壁周辺での火の使用は禁止だ、覚えておいてくれ」

「そこは譲らないのねぇのな…」

「ホント真面目ね…」

「なんてたって俺は真面目で仕事一筋の衛兵だからな」

「「「 はははは 」」」


衛兵は帰って行った。


「そんじゃダルトンギルド長に伝えに行ってくるぜ」

「よろしく~ん?」

「どうしたよルドルフ?」

「あれよ」

「お?」


ルドルフの指さす先を見るミーシャ、

3人のリザードマンの子供がこっそり凍ったモギ肉を運んでいる。


「ありゃ昨日の子供達だな、どうするよルドルフ?」

「流石にあの肉はあげる訳にはいかないわね、ほい」

「「「 うわぁぁぁ! 」」」


ルドルフが杖を光らせると足元に氷の塊が出来て転んだ。


「た、助けてお兄ちゃん! 助けてぇぇ!」

「また捕まっちゃたよぉ…今度こそもうダメだぁ…」

「泣くなって言ってるだろ!」

「うぅ…痛い…シクシク…」

「お兄ちゃん助けてぇ!」

「待ってろ今助け…」

「よう、また会ったな!」

「「「 ひぇっ… 」」」


突然現れたモヒカンマッチョに言葉を失う3人。


「昨日ぶりだな、元気にしてたか?」

「「「 人違いですぅ… 」」」


ブンブンと首を振る3人。


「そんなに怖がるなよ、な? 別に怒ってないからよ、蟹旨かったか?」

「うん、美味しかった」

「ご馳走様でした」

「ば、馬鹿! お前達素直過ぎ! すみませんでしたぁぁ! 妹と弟は関係ないんで!

 俺だけで何とか! 何とかお願いしますぅ!」

「だはははは! だからいいってあの蟹はお前達にあげたんだよ」

「え? あの…本当に怒ってないですか?」

「怒ってないぞ~」

「衛兵呼ばないんですか?」

「呼ばないぞ、お~いルドルフ、氷解いてやってくれよ」

「はい~」


3人の足枷が砕けて自由になった。


「良かったねお兄ちゃん、怒ってないんだって」

「優しい人だったよぉ…よかったよぉ…シクシク…」

「泣くなっていってるだろラト」

「だってぇ…もう僕達捕まっちゃうかと思ってぇ…怖くてぇ…シクシク…」


モギ肉に抱き着きシクシクのラト、氷がちょっと溶けて来た。


「あの…本当にすみませんでした、ほらラニとラトも立って、ちゃんとお礼言わないと」

「「「 ありがとうございました~ 」」」

「おう、どういたしまして」


横並びで頭を下げる3人。

蟹泥棒ことリザードマン3兄妹、

長男ラル(7歳)、長女ラニ(6歳)、泣き虫の末っ子ラト(5歳)である。


「昨日の蟹もう食べ終わたったのか? 結構量あっただろ?」

「皆で食べたからなくなっちゃった!」

「家族でか?」

「お父さんとお母さんも食べたよ、グスッ…喜んでた」

「そうか、よかったな~坊主、リザードマンって結構大食いなんだな」


まだ少しグズっているラトの頭をポンポンするミーシャ。


「いやあの…家族だけじゃなくて沢山いるんです、リザードマンとゴブリンが集まってて」

「ん?」

「職を追われた亜人種が集まって暮らしてるってことじゃなの?」

「あ、そういうことか、そりゃ直ぐ無くなるわな」


ルドルフが話に入って来た。


「事情は俺達も聞いてるんだけどよ、ちょっとその肉は明日の分だから渡せねぇんだよ」

「「「 残念… 」」」

「その人達って全部で何人くらいいるわけ?」

「多分30人位かなお兄ちゃん?」

「それ位だと思う」

「その程度なら増えても問題ないでしょ、あの鍋でご飯作ってあるから全員呼んできなさい」

「えぇ!?」

「どんなご飯~?」

「ご飯見たい見た~い!」

「よ~し見せてやるぜ、美味しそうだぞ~」


3人肩に乗せ鍋の中身を見せるミーシャ。


「「「 美味しそう~! 」」」

「だははは! そうだろうそうだろ、実際に美味しいぞ~」

「人間も食べに来るけど心配しないでいいわよ、さ、呼んできなさい」

「「「 わぁぁぁい! 」」」


目を輝かせた子供達は城壁の内側に走って行った。


「んじゃダルトンギルド長に…」

「「 すみません 」」


入れ替わりで大人のリザードマンが話しかけて来た。


「今度は何かしら?」

「私達はあの子達の親です、昨日蟹を持ち帰って来まして、不審に思い跡を付けていた次第で…」

「先程のお話をこっそり聞かせて頂きました」

「「 本当にすみませんでした 」」


深々と頭を下げる両親。


「話を聞いていたならわかるでしょ、いろいろ事情があるみたいだし気にしなくていいのよ」

「まぁ困った時は助け合おうぜ」

「「 ありがとう御座います~ 」」

「ところで、あの鍋は昨日の被災者向けの炊き出しなのでは?」

「私達は被災しておりませんし、頂いてしまってよいのでしょうか?」

「いいわよ~、これ勝手に私達がやってるヤツだから別に対象とか決まってないのよね」

「「 はぁ? 」」

「正規の支援じゃねぇからよ、俺達が勝手に作って勝手に配ろうとしているだけなんだよ」

「そうでしたか、あの、もし宜しければ何かお手伝いをさせて頂きたいのですが…」

「ただ食べさせて頂くだけですと気が引けるといいますか…」

「お、助かるぜ~、なんか変な奴らが文句言って来るかもしれねぇからよ、

 その時は俺達に脅されてるってことにしといてくれ」

「「 えぇ… 」」

「あんまり深く考えなくてもいいわ、人間側もいろいろあるってことよ」

「俺達今回は悪役だからな、だははははは!

 んじゃ今度こそダルトンギルド長に伝えて来るぜ」

「頼むわよ~」


こうして城壁の外で勝手に炊き出しが行われ、

被災者、作業に従事した衛兵、冒険者、貧困に喘ぐ亜人種などが勝手に食べに来たそうな。


「スープが美味しい~!」

「お腹いっぱい食べられて幸せ~!」

「お肉柔らかい~!」

「お替りありますよ~、欲しい人は並んでくださ~い」

「あれ? お父さんいないと思ったらここにいたんだ」

「お母さんもいるよお兄ちゃん」

「ちょっとこの人達を手伝っててな」

「そうなんだ、沢山いれてよお母さん!」

「私も大盛がいい!」

「僕も!」

「お替りなのによく食べるわね~、残しちゃ駄目よ」

「「「 は~い 」」」


パンと木製の器を持つ者達は皆笑顔になり、城壁の外を束の間の幸せが満たしたそうな。


「やっぱ腹が空いちゃいかんよなぁ~、見てみろあの笑顔を、

 人間も亜人種も飯を食えば皆幸せになるんだよ」

「はぁ…(すげぇニッコニコだなこの人…)」


城壁の上ではダルトンの笑顔が衛兵達を照らしていた。



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