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17話目【野心的で行動的な】

「マツモト、ちょっと支えておいてくれないか?」

「こうですか?」

「あぁ、そのままで頼む」」


トントントントン…

松本が支える看板にバトーが釘を打って固定する。

看板には小麦袋のマークが書かれており、村人が食料を運び込んでいる。


「これで食糧庫も修復完了ですね」

「あぁ、村の建物も半分は修復できた。割と早かったな」

「この食料はみんなで管理してるんですか?」

「いや、緊急時や祭りの時が主な用途でな、悪くなる前にマリーさんが管理してみんなに分配している。

 分配量は多くはないから、結局は狩りや農業で自給自足さ。」

「マリーさんですか、あの人にはいろいろお世話になってて、頭上がりませんよ」


『マリー』は村で加工食品や調味料を扱う店を営んでおり、恰幅のいいマダム3人衆の1人だ。

品物の値段など、いろいろ教えてもらっている。



ゴトゴト…

午前中の作業を終える頃、10日前に出発した馬車が返ってきた。


「おーい、買出しの馬車が戻ったぞー」


来た! ついに来た! 転生後約1か月、待ちわびたズボンとパンツを運ぶ待望の馬車が!

早速受け取りに行こう!


馬車の周りには村人が集まり、注文していた品を受け取っている。


「これはえーと、マツモト? マツモトって誰だっけ?」

「はーい、俺です。 おれが松本です」

「坊主、マツモトって名前だったのか。いや、すまねぇ、いっつも坊主で呼んでたからよ…」

「いいですよ坊主で、その方が俺も慣れてますから」

「はは、すまねぇな坊主」


折り畳まれた布を受け取り、自分の店へと向かう松本。

その顔は希望と開放感に満ち溢れている。



ついに…ついに手に入れたぞぉぉぉぉぉ! ズボンを、なによりパンツを! 

全裸で森を掛け、腰布でウィンナーを揺らし続けた日々…それがついに終わりを迎えるのだ!

今ここに、文明への第一歩を踏み出すのだ! 取り戻すのだ、人間の尊厳を!

刮目するがいい、子供達よ…君達が『全裸マン』と呼ぶ者はもういない…

今日! 今この時より! 俺は『半裸マン』となるのだ!

はーっははははh…  ん?


…んんん?


松本が広げた布は台形の形をしており、裾がフリフリしていた。


んんん? う~ん? これは…俺の生前の記憶では女の子用のスカートだったような?

こっちも恐らく女の子用の下着…というかパンツ…

どういうこどだ? この世界ではこれが普通なのか?

いや、こんなパンツ履いたらウィンナーはみ出るだろ…

う~ん…少し様子を見てみるか



とりあえずスカートとパンツを畳み店を開店させる。

相変わらず腰布である。


「全裸マン、パンちょーだい! 10センチ!」

「2ブロンズねー、ありがとー」


おかしい…さっきから子供達を観察しているが短パンだ、むしろ女の子も短パンだ。

田舎の村だからか、みんな同じ服を着ている。

もしかしてパンツは同じなのか? ちょっと履いてみるか…


ポロン…

パンツの端からウィンナーがこぼれ落ちた…





翌朝、寝床で松本は悩んでいた

地面には腰布と、スカートとパンツが並んでいる。


「こっちはもらった布…こちは15シルバーのスカートとパンツ…どうしようか…

 まぁ、そろそろ村に行くか」




早朝、村では仕事前のポージング練習が行われている。


「サイドポーズからのバックポーズ…しっかりと広背筋を収縮させろー」

「おはようございますー」

「おう、坊主おはよう…なんでスカート履いてるんだ?」

「やっぱり変ですかね?」

「まぁ、そうだなぁ…う~ん」


松本を囲み十数人の村人が頭を捻っている。


「そもそもなんでスカート履いてんだよ?」

「いやー町への買出しにズボンとパンツを注文したんですが、何故かスカートが届きまして」

「パンツは大丈夫だったのか?」

「いや、多分女の子用ですね。まぁ腰布よりスカートの方が布面積大きいんでマシかなと、

 …15シルバーしましたし」


「「「う~~~ん…」」」


村人達は腕を組んで頭を捻っている。


「まぁ、確かに布面積は大きくなったしな…マシかもしれんな」

「大事なのは外見じゃなくて中身よ、パンツ履いたんだろ? 腰布よりはマシだろ!」

「いや…ウィンナー、はみ出てますね…半分くらい…」


「「「う、う~~~~~~~~~~~~~~~ん…」」」」


村人達は額に両手を当て頭を捻っていた。




ま、まぁ目的は服を着ることではなく、服を着て読み書きを習うことだ!

とりあえず行ってみるか…


「あら~マツモト君、素敵じゃない!」

「あのー授業受けられますかね?」

「もちろんよ! 大歓迎よ! さぁ、さぁ! 一番前の席に座って頂戴!」


いつもよりテンションの高いウィンディが招き入れる。鼻息が荒い。


パンッ…

「あら、チョーク落としちゃったわー」


ウィンディが血眼になってチョークを探している…


「おかしいわねぇ…全然見つからないわねぇ…」


眼球の毛細血管がはち切れんばかりに血眼になって探している…

何故か右手が粉末になったチョークにまみれている…



むっふっふっふぅぅぅぅぅ…たまらないわ! 腰布よりイイ!

チラ見ウィンナーの方が断然イイわ! 10日待ったんだもの…刻むのよ、この光景を!

そして将来的に他の男の子達にもこの格好をさせ…あぁ素晴らしき絶景よぉぉぉぉ!


「あれ? マツモト君がいる? …っは!?」

「あれ…レ、レベッカ姉さん…なぜここに? 今は芋ほり中じゃ…」

「ウィンディ…あんたまさか、また…」

「な、なんのことでででですかかか?」


ウィンディは血の気が引いた顔で後ずさりしてる。


「ちょっとマツモト君、いいかしら?」

「はいー」


レベッカ姉さんに呼ばれて外に出た松本は、スカートとパンツの説明をした。


「ウ~ィ~ン~ディ~、ちょっといいかしら」

「は、はいぃぃ…」


レベッカ姉さんに呼ばれ、生まれたての子牛のような足取りで外に出るウィンディ。

小屋の壁に背を付け、逃げ場を塞がれている。


「普段、町への買出しは行きたがらないのに…今回なんで立候補した?」

「た…たまには町を…みみ見てみたいと思いまままま…」


「お前…やったな?」

「やってません!」


ドンッ!

小屋の壁に右手を付いたレベッカ姉さんの眉間には血管が浮いている。

壁にはヒビが走っている。


「やったよなぁ?」

「や…やりました…」

「マツモトくーん、ウィンディが服を買ってくれるそうよー」

「そんな、やめてレベッカ姉さん! 私の楽しみを…」


ドンッ!

ウィンディの左側の壁にもヒビが走る。


「買わせて頂きます!」

「2着な?」

「はぃぃ喜んでぇぇぇ!」


その後、野心的ウィンナー姉さんは馬車に張り付けられ町へと旅立った。

松本が服を手に入れるのは10日後となった。



「しっかし、美人なのにポンコツなの誰かに似てるんだよなぁ」



「びぇっくし! あぁー誰か私の美貌を讃えてるわ…」

「神様ー鼻水出てますよー」

「神様ーティッシュありますよー」


天界は今日も平和である。




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