167話目【ギガントバジリスク討伐 1】
「東の街道にて対象を発見であります!
火球を吐く為、上位種のギガントバジリスクの可能性あり!
町に近づけないように現在足止め中であります!
Aランク冒険者の方は急いでほぁぁぁぁ!?
急いで助けて欲しいでありますぅぅぅ!」
ウルダに響く迫真のギルバート速報。
「聞いたかココ、東だとよ」
「当てが外れたな」
「なんで北じゃないのよ~! ギガントバジリスクって何? 聞いてないんですけど!」
「俺にあたるなよリーダー、皆条件は同じだっての」
「年頃の乙女と野郎が同じな訳ないでしょ!
2、3日お風呂に入らなくても問題ない男共と違って、乙女は大変なの! いろいろと!
昨日やっと帰って来てゆっくりできると思ったのに…
夜中だったから誰も後始末手伝ってくれないし…やっと終わったと思ったらお店閉まってるし…
ようやく寝て起きたらこれだし…髪はボサボサだし…お肌もカサカサだし…
あーダラダラしたーい! お腹いっぱいご飯食べたーい!」
「こりゃ相当溜まってんぞドーフマン、急がないと俺達の身が持たん」
「だな、行くぞロジ」
「さっきのギルバートだろ? Dランクなのに何で外に出てんだ?」
「知らんな」
「おらぁ無駄口叩いてないで走りなさい2人共! 私の為に!」
「う~い」
急いで現場に向かう『南南東三ツ星』の3人、
ウルダで多忙な生活をおくるAランク冒険者チームである。
「おらぁ! 固ぇな…」
「余り前に出るなって言ってるだろベルク!
足止めが目的なんだから適当に魔法ぶつけて距離を保つんだよ」
「もうマナ切れだっての! 魔法職じゃねぇからそんなにマナ量ねぇんだよ!」
「それじゃラストリベリオンの誰かと交代しろ!
石化の解毒薬持ってねぇんだから噛まれたらどうなるか分かってんだろ!」
「交代しろってDランクだぜ? 正気かよ?」
「魔法が使えるだけ今のお前よりマシなの! 俺の指示に従う約束だろ~臨機応変に行こうぜ!」
「(っち、確かに効いてねぇ俺の攻撃よりマシだな…)
おーい! マナ切れだ! 誰か変わってくれねぇか?」
「えぇ!? 小生達にベルク氏の代わりを!?」
「む、無理ですぞ、実力に差が有り過ぎますぞ」
「はぁはぁ、いや求められてれるのは魔法なんだな、それなら吾輩達でもなんとかなるんだな」
「そういうことでありますか」
「び、微力ながら尽力致しますぞ」
「頼むから早くしてくれ~! うぉ!? ちょっとこっち来てるって! マジで早くしてくれー!」
モントがギガントバジリスクに追い回されている。
「はぁはぁ、今行くんだな!」
『 我ら生まれた日は違えども… 』
「それはいいから早くしろ! モントのオッサンが1人で抑えてんだぞ!」
『 はぃぃぃぃ! ぐぇ!? 』
急いで走り出すラストリベリオン、透明な壁にぶつかり止まる。
ギガントバジリスクも同様にぶつかり止まっている。
「お? こりゃ…ってことは」
「そこまで、全員下がりなさい!」
カルニの声が響き渡る。
「ふぅ~助かったぜ~俺達の仕事は終わりだな~」
「やっと来たか、とっとと下がるぞラストリベリオン」
『 はい~…あたた… 』
顔を抑えながらモントとベルクの後を追うラストリベリオン。
アクラスと街道ですれ違う。
「いや~流石はカルニギルド長~、頼りになります~んじゃ俺はこれで…」
「待ちなさい」
そそくさと立ち去ろうとするもカルニに掴まるモント。
「貴方だけならまだしも、なんでDランクの人達がいるのかしら? それに戦闘は禁止した筈ですけど?」
「い、いや~これは偶然というか深い訳が…そ、そんなに怒らないで下さいよギルド長~ね? ね?」
「最年長で冒険者歴が一番長いのは誰かしら?」
「すみません! ごめんなさい!」
笑顔から滲み出るカルニに怒りに平謝りのモント。
「モントのオッサンは悪くねぇ、足止めしようとしたのは俺だ、悪かったよ」
『 申し訳ありませんでした! 』
素直に謝るベルクと平伏すラストリベリオン。
「…まぁ、アレを見れば大体の事情は分かるわ、ギガントバジリスクも想定外だし、
貴方達なりに最善を尽くしてくれたのでしょう?
今回はこれで終わりにするから、今後は無茶はしないこと、いいわね?」
「はいはい~気をつけます~」
「あぁ」
『 御意! 』
カルニが指すアレとは虚ろな目で地面に転がる松本である。
「おらぁ走れぇ! 風のように走れぇ!」
「全力で走ってるだろ!」
「うるさぁい! いけいけー! 私の休みの為にー!」
「お前がうるさいわ!」
草原を疾走する何かが近寄って来た。
「よぉし! 対象発見! 戦闘用~意!」
「はぁはぁ、少し休ませろって…」
「走りっぱなしだ…」
「私はねぇ! 1秒でも早くダラダラしたいの!
3日も働き詰めなの! 柔らかいベットに寝転びながらドーナツ食べたいのよぉぉ! 芋でも可!」
「分かった、分かったから少し落ち着け…」
ストレスにより感情が高ぶっている魔法使い、チームリーダー『ココ』
両手剣で1撃を狙うチームの主力『ロジ』
大盾で仲間を守るチームの精神的支柱『ドーフマン』
程よくバランスの取れたAランク冒険者チーム『南南東三ツ星』である。
因みにチーム名の由来は3人の出生地区が南区、南区、東区だったからである。
「あら、アクラスも参加するの?」
「えぇ、カルニギルド長より協力して討伐にあたるよう言われています、
解毒薬を預かっていますので2つどうぞ」
解毒薬をココに渡すアクラス。
「ありがと、よろしくね」
「こちらこそ宜しく願いします」
「ほら、喋ってないで準備しなさーい! 防御魔法そろそろ破られるわよー!」
「ギルド長? いるんだったら手伝って下さいよー」
「貴方達で何とかしなさい! 解毒薬は3つしかないから気を付けるのよー!」
「そんなぁ! ギルド長の薄情者ー! デフラ町長に訴えてやるんだからー!」
「なんとでも言いなさい! これが終わったら暫く休ませてあげるわよー!」
「本当ですかぁ!? おら立てぇ2人共、戦闘用~意!」
「よっし、やるぞドーフマン」
「あぁ」
そんな訳でギガントバジリスク討伐開始である。
手始めにココがライトニングを放つ、直撃するも表面を伝い地面に拡散する。
「噂通り雷魔法は効かなさそうね、ロジ! ドーフマン!」
「はいよ!」
「行くぞ」
ドーフマンに続き走り出すロジ、反対側からアクラスも合わせる。
ギガントバジリスクの尾をドーフマンが防ぎ、ロジが両手剣を振り下ろす。
アクラスは足の付け根を狙い槍を突く。
「おりゃぁ!」
「はぁっ!」
ロジの剣は鱗に弾かれ、アクラスの槍は傷を負わせた。
ギガントバジリスクが体を回転させ3人を振り払う。
ココのフレイムでバジリスク追撃を止めた。
「あまりフレイムも効いてないわね、どうなのロジ?」
「こっちも噂通り固いぞ、傷が付くだけ巨大モギよりマシだな、全力ならいけると思うぜ」
「アクラスは?」
「少しですが右足の付け根に傷を負わせました、可動部が狙い目のようです」
「主攻をアクラスに変更! ロジとドーフマンは陽動、隙あらば攻撃!」
『 了解! 』
ココの指揮により少しずつではあるが確実に傷を負わせてい行く一同。
「いい連携じゃないターレ?」
「連携は良いけど火力不足ね」
「惜しいわねぇ、魔法が殆ど効いてないし、盾はしっかりしてるけど大味な両手剣は今のところ無力、
有効な攻撃は槍だけね、あらよく見たら槍の人すっごく格好いい、私タイプかも」
「そう? 私の好みとは違うね、今回はノルに譲るわ」
「好みが狭すぎよぉターレ、そんなんじゃ恋人出来ないわよ」
「ノルの守備範囲が広すぎなのよ」
「あら心外、イケメンでも筋肉無い人はお断り、私こう見えて結構グルメなの」
「ハムバターサンドは?」
「ハムバターサンドは合格、雑な美味しさがいいわね」
ハムバターサントをモッチャモッチャしながら観戦するタレンギとノルドヴェル。
「(なんだこのオカマは…)」
「(見かけない方ですな…)」
「(綺麗な女性であります…)」
「(ハムバターサンド食べたいんだな…)」
「(なんか既視感ある…薬持ってないかな?)」
2人のことを知らない一同は勝手な感想を浮かべている。
尾を防ぐも弾き飛ばされるアクアス、着地を火球が襲う。
「くっ…」
片足を被弾し足が止まる、フルプレートのお陰で出血は無いが衝撃で足を痛めた様子。
ロジとドーフマンを無視して突進するギガントバジリスク。
「回復に集中してアクラス!」
「了解!」
足を回復するアクラスのカバーに入るため杖に光を溜めながら走るココ。
「ドーフマン!」
「分かっている」
ギガントバジリスクの後を追うロジとドーフマン。
「フリィィィズ!」
ココが杖を振り上げ光を開放するとアクラスとギガントバジリスクの間に氷の結晶が走った。
衝突し止まるギガントバジリスク、ココに狙いを定め口を開ける。
「させるかぁ!」
吐き出される寸前の火球をライトニングで貫くココ、
口内で爆破しよろめくギガントバジリスク。
「え!? もしかして効いた?」
驚きのココ。
「おぉぉぉらぁ!!」
「ふんっ!」
「はぁっ!」
ここぞとばかりに追い打ちを掛ける3人。
体重を乗せ全力で剣を振り下ろすロジ、片手斧で切りつけるドーフマン、
反対側では回復したアクラスも槍を振るう。
ロジの両手剣は尾の鱗を叩き割り、ドーフマンの片手斧は右腕の関節を、
アクラスの槍は首元に傷を負わせた。
叫び声を上げ倒れるギガントバジリスク、4人の連携により危機は一転し最大の好機。
「いよぉし! 追撃~! 休みを勝ち取るのよぉ!」
「「「 了解! 」」」
ノリノリのココの指示により追撃の3人。
ギガントバジリスクが目を開け、飛び掛かったロジを腕で、アクラスを尾で薙ぎ払う。
咄嗟に割って入り腕を止めるドーフマン
「ぐっ…!?」
「おわっ!?」
先程までとは異なり完全止められずロジ共々跳ね飛ばされた。
「危ない…」
アクラスは自力で躱し距離を取った。
「大丈夫かドーフマン?」
「あぁ、だがこれは…」
「可笑しいと思ったんだよなぁ…尾しかコカトリスと似てねぇし、
上位種なのにムーンベアーより力が弱かったしな…」
「うむ…」
ギガントバジリスクを見上げる4人。
「こっからが本番ってこと!?」
「そのようですね」
先程まで4足歩行で地面に張り付いていたギガントバジリスクが後ろ足で体を支え立ち上がっている。
固い鱗で覆われ、2足で立つ姿はまるで恐竜である。
「最大火力のフレイムで様子を見る! 攻撃を受けないように時間を稼いで!」
「「「 了解! 」」」
杖に光を溜めながら指示するココ、注意を引きながら回避に専念する3人。
「離れて!」
ココの合図で距離を取る3人、バジリスクの前面でフレイムが炸裂する。
傷を負いよろめくギガントバジリスク、すかさず3人が追い打ちを掛ける。
「おぉぉらぁ!」
2度目の全力の1撃で尾を断ちに掛かるロジ、煙を裂き火球が迫る。
「下がれロジ! ぐぅぅっ…」
ロジを突き飛ばし火球を盾で受けるドーフマン、防ぎはしたが四散した炎によりダメージを負う。
「はっ! はぁぁぁ!」
素早い3連突きから体を回転させ横薙ぎで足を断ちに掛かるアクラス。
ギガントバジリスクが体を寄せアクラスを弾き飛ばし、尾で追撃を狙う。
口を開けて迫る尾に槍を突き立て距離を取るアクラス。
4足歩行の時より明らかに素早さと狂暴性が増しているギガントバジリスク。
「離れて!」
3人が距離を取った隙に溜めていたフレイムを放とうとするココ、
反応したギガントバジリスクがココに向けて火球を3つ放つ。
「っく…」
出の早いライトングに切り替え火球を打ち落とすココ、
更に火球を放ちながら迫るギガントバジリスク。
「ココを!」
「あぁ!」
「分かっています!」
後衛職であるココからギガントバジリスクを引き離すため全力で走る3人。、
反応したココがドーフマンとロジ側に走り、後衛、前衛、ギガントバジリスクの形を作る。
ココから引き離すことに成功したが、ロジとドーフマンはギガントバジリスクの正面、
固い鱗が無く、傷を負わせられる腹側であるが両腕の射程圏内、好機だが危険な位置。
一方、アクラスはギガントバジリスクの後方、硬い鱗に覆われており攻撃できる箇所が殆どない。
「皆、集中して」
貼り詰めた緊張感、ココが静かに激を飛ばす。
動いたのはギガントバジリスク、火球と両腕で正面の2人を狙う。
「そこっ!」
「ぬうぅぅ!」
「おらぁぁ!」
「はぁっ!」
瞬時に火球を撃ち落とすココ。
地面に足を減り込ませ右腕を盾で受けるドーフマン。
肉を断ち、左腕を半ばまで剣を叩きこむロジ。
体を回転させ、体重を乗せた横薙ぎで砕けた尾の鱗を裂くアクラス
口、左腕、尾に傷を負い叫び声と共に体制を崩すギガントバジリス。
「追撃!」
「分かってらぁ!」
ココの指示と同時にロジが動き、ガラ空きの腹を目掛け剣を振る。
「マジかよ…」
決まるかと思われた1撃は尾の鱗に防がれ、ロジの左足には尾の牙が食い込んでいた。
「下がるぞ! ココ薬を!」
傷口が石化したロジを担ぎ走るドーフマン。
「急いで飲んで! アクラスは合流して私と後退を援護!」
「了解!」
「すまん! すぐ戻る!」
息を吹き返すギガントバジリスク、好機から一転し窮地に立たされる4人。
ロジを運ぶドーフマンも抜け、迎え撃つのは前衛アクラスと後衛ココの2人。
「フレイムを使うわ、ドーフマンが戻るまで時間を稼ぎましょう」
「分かりました」
迫るバジリスクに向け最大火力フレイムを放つココ、
瞬時に4足歩行に切り替え、フレイムを鱗で防ぎ火球を放つギガントバジリスク。
アクラスがライトニングで火球を打ち落とす。
「うそぉ!? 退いてアクラス、もう1度…」
「無理です! フレイムはもう効かないと思った方がいい! 確実に対応して来ています!」
「ならフリーズで…」
「火球は私に任せて今の内に!」
火球を連続で放ちながら4足歩行で迫るギガントバジリスク。
アクラスが火球を処理するがココのように損傷を与えられない。
「行くわよ! フリィィズ!」
アクラスの前に分厚い氷の壁が生えた。
「ふぅ~、これで暫くは…」
「っは!?」
立ち上がり右腕を振りかぶるギガントバジリスク、氷の壁が粉砕され破片がアクラスを襲う。
「アクラス!」
「はっ! せやぁ!」
槍で破片を振り払うアクラス、ギガントバジリスクと対峙する。
「退いてアクラス、掩護するわ!」
「…いいえ、ここで迎え撃ちます、火球をお願いします」
退けないと判断し槍を構えるアクラス、ギガントバジリスクが右腕と尾を振るう。
「っふ…はぁっ! せやぁ!」
振り下ろされた右腕を躱し、口を開け迫る尾に槍を突き立て、
引き抜いた流れで体を回転させ腹に傷を負わせた。
「えぇ!?」
一瞬の攻防に目を見開くココ、まるで曲芸である。
「(驚いてる場合じゃなかった…何か援護したいけどライトニングは効かないし、
範囲系の魔法は使えない、火球を吐いてくればいいのに…警戒してるわね)」
援護の隙を伺うが打つ手なしのココ。
ギガントバジリスクが半分死んでいる左腕で腹を隠し、再度攻撃を仕掛ける。
先程と同様に右腕を躱し尾を突こうとするアクラス、
ギガントバジリスクの左腕に薙ぎ払われアクラスが宙に浮く。
「ぐぁっ…」
「アクラス!」
溜めていた氷魔法を放つココ、
下半身が氷で覆われ始めるも、止まらず右腕と尾で追い打ちを掛けるギガントバジリスク。
右腕か、尾か、選択を求められるアクラス。
「ぐはぁ!?」
振り下ろされた右腕を槍の柄で受け地面に叩きつけられる。
槍は折れ、全身を強打し、尾に腕を噛まれた。
「はぁ…はぁ…」
荒い息で立ち上がるアクラス、回復魔法を使いながら急いで解毒薬を飲む。
石化した右腕を体の後ろに隠し残された左腕で折れた槍を構える。
「アクラス退いて! 氷が砕ける前に!」
「はぁ…はぁ…私が退けば前衛がいなくなります」
下半身の氷を粉砕し、右腕と尾で仕留めに掛かるギガントバジリスク。
「おおおお!」
雄叫びを上げ迎え撃つアクラス、右腕を躱し尾の目に槍を突き立る。
暴れ狂う尾、再び右腕が迫る。
「ぬぅぅぅあ!」
駆け付けたドーフマンが右腕を止める。
「斧を使えアクラス!」
ドーフマンの腰の斧を取り踏み込むアクラス。
「おおおお!」
迫る左腕を躱し腹に斧を突き立てる、左腕に突き飛ばさるドーフマン。
悲鳴を上げ後退するギガントバジリスク。
「退避! 腹にフレイム食らわせる、地面ごと吹き飛ばすわ!」
「了解! ドーフマン!?」
「俺に構わずやれココ!」
地面に盾を付き刺し身を固めるドーフマン、右足の付け根が石になっている。
「噛まれたのですかドーフマン!?」
「退けアクラス!」
「アクラス退いて! 早く!」
「そこまでよ! 全員回復して後退!」
響き渡るカルニの声、防御魔法に囲まれたギガントバジリスクが見えない壁を破壊しようと暴れている。
3重で囲まれているため安心である。
「そうですか、残念です」
「そんな顔しないでアクラス、ギルド長命令よ、ドーフマンは急いで解毒薬を飲んで」
「あぁ」
「仕方ありませんね、後はカルニギルド長にお任せしましょう」
「お~い誰か手かしてくれ~、歩き難くてさ~」
足を引きずりながらロジが歩いて来る。
「まだ治ってなかったのロジ?」
「もう少しだ、治るの遅いから転んで砕けないように気を付けろよドーフマン」
「あぁ、そうだな」
「お~い、皆大丈夫か~? 手貸すぜ~」
見学していたモント達が駆けつけて来た。
「ささっ、小生の肩に掴まるでありますロジ氏」
「悪いなギルバート、いっちょ頼むわ」
「さ、最後の我が身を厭わぬ提案、感動致しましたぞドーフマン氏、是非背負わせて頂きたい所存ですぞ!」
「背中では無く肩を貸してくれ」
「はぁはぁ、装備は吾輩が回収していくんだな」
「いやぁ~助かる~ドーフマンの盾重いのよね~ それでは撤退ー!」
撤退する南南東三ツ星。
「ほらよ、槍折れちまったなアクラス」
「腕が未熟でしたから…これは修理は無理そうです、新調するしかないですね」
「アンタで未熟だったら俺はカス以下だ、自信を持って貰わねぇと困るぜ、おら行くぞ」
「ふぅ…そうですね、行きましょう」
アクラスとベルクも撤退した。
「(誰か薬持ってないかな…)」
松本は未だに虚ろな目で転がっていた。




