15話目【お金の稼ぎ方】
ブロンズ、シルバー、ゴールド、この世界の基本通貨である。
100ブロンズ = 1シルバー
100シルバー = 1ゴールド
つまり、10,000ブロンズ = 1ゴールド
1ブロンズを1円と考えると非常に理解しやすい。
1ブロンズ = 1円
1シルバー = 100円
1ゴールド = 1万円
100ゴールドあれば100万円である。
となれば50シルバーをシルバー硬貨で支払う場合は50枚用意する必要があるのか?
流石にそんな不便なことは無い、財布が硬貨でパンパンになってしまう。
10ブロンズ硬貨、50ブロンズ硬貨、
10シルバー硬貨、50シルバー硬貨、
と、ブロンズとシルバーには10と50の単位で硬貨が用意されている、
ゴールドにはない特に用意されていないが、
時より『100ゴールド硬貨』みたいな記念硬貨が発行されることがある、
100万円球みたいなものなので、先ず一般市場で使用されることはない。
恰幅の良いマダム3人衆によると、
一番近い街で販売されている飾りのない粗悪な服なら以下の通り。
シャツ = 10シルバー
ズボン = 10シルバー
パンツ = 5シルバー
靴 = 15シルバー
全て合わせると40シルバー、つまりは4000ブロンズ、
日本円換算なら4000円程度で全部揃うらしい。
「(この世界の金銭感覚がわからないけど4000円で一式揃うなら安いか?
着心地は期待できないけど今の俺には贅沢過ぎる悩みだな、
とりあえず40シルバー稼いで次の買出しの時に一緒に買っててもらうか、
文字が読めるようになったら町で生活とかできるのか?
まぁ何かしら稼ぎを見つけないとすぐに野宿することになるんだろうけど、
…ん? 今と大して変わらんな)」
森の寝床で横になりながら考えを物思いにふける松本、
土の上に直で寝ているので多分何処でも生きていける。
松本の当面の目標は服を手に入れ文字を学こと、
という訳で、村長にお願いして村の外で物を売る許可を得た、
村の中で店を出すことも可能だったが場所代が掛かる、
1ブロンズも持っていないので当然却下、
ちなみに、マダム達はちゃんと場所代を収めている。
ただし、条件が2つ。
1つ目は『午前中は村の復旧を手伝うこと』
これは願ったりかなったりで力仕事の従事すれば光魔法の強化に繋がる、
それに木材加工で使用している道具が借りられるし、
要らない破材が貰えるかもしれない、
枝だけで生活している身からすればとても有難い。
2つ目は『子供達に計算と買い物を教えること』
村長を説得する際に自身の勉強のためと言ったら、
ついでに村の子供達にも教えることになった、
まぁ、教えるといっても体験させる程度で良いらしい、
本格的な計算は勉強小屋で教えているし、
マダムの店でお金の使い方は学んでいるので、
村長の優しさみたいなものである。
翌朝、いつものように精霊の池で顔を洗い、
レムとワニ美に挨拶してフランスパンを3等分。
「てなわけで、村で店を出すことになりました」
「なるほどねぇ、村の人に服を分けはもらえないのかい?」
「頼めば分けてくれるでしょうけど村は今大変ですからねぇ、
それに出来るだけ自分で何とかしたいですし、今後のためにも」
「なかなか逞しいね、いいことだよ」
「っとまぁ大口を叩いておいてあれなんですけど、
パン以外に売るのもが無いのでまたナーン貝を頂けないでしょうか?
自分で食べたいってのもあるんですけど」
「いいよ、以前も言ったけど僕の森じゃないからね」
「助かります~、正直パンだけじゃ栄養が足りなくて…」
「ははは、肉は食べないのかい?」
「食べたいですねぇ肉…この世界にきて食べてないですからねぇ…」
「森の生き物を狩ればいいんじゃないかな?」
「いや~何も道具持ってないですから、素手じゃ流石に…
石器なら作れるかもしれないですけど火がないから焼けませんし、
っていか野生の生き物って強いんじゃないですか? 俺多分死にますよ」
「そうだねぇ…」
「そうですねぇ…」
ナーン貝は松本にとって貴重なタンパク質なのだ。
起床して池で顔を洗いパンを齧ってポッポ村へ、
午前中は村の復旧を手伝い休憩時間にポージング練習、
午後からは端材を貰って店用のテーブルと椅子を作成、
数日間そんな生活を繰り返して店舗? が出来た。
恰幅の良いマダム3人衆いわく、
町でのフランスパンの値段は1本2~3シルバー、
つまりは200~300ブロンズ、日本円で200~300円程度。
マダムの店では町で仕入れた物を売っているが
価格は特に高くはない、所謂ポッポ村価格というヤツ、
村でせっせとお金を溜めても仕方がないし
助け合い精神が村の基本なので特に儲けを求めていないそうな、
そのうえ元々パンは村でも作られており、小麦が備蓄された今では
売ってもわざわざ買いに来る人は少ないだろう、との助言を受けた。
「(こりゃ駄目だな、普通に売るのは無理だ)」
てなわけでパン自体は子供達の勉強用に市販の1/10の値段設定にした、
1本じゃ大きい過ぎるので切り売りスタイル。
「(う~ん…ナーン貝は5シルバーでいいか?
え~と500ブロンズ、つまりは500円…このデッカイ貝が500円か…格安だな、
あまり安売りするのは経済的に良くないとも思うが、
まぁ40シルバーさえ手に入ればいいし、ポッポ村価格があるからな)」
ナーン貝は5シルバーに決定、もはやナーン貝が主力商品である。
「(一応値段が分るように看板でも作るか)」
と思って適当な板を用意したのだが、
文字が書けないことを思い出してウィンディにお願いすることに。
「お願いします」
「ふふふ、いいわよ~ウィンディお姉さんが書いてあげる~ふふ、でゅふふふ…」
「た、助かります~(この人凄いよなぁ)」
こうして開店準備が整ったのだった、
店は村の入り口のすぐ外側に出店、
大人がよく出入りして子供達が来ても危なくない場所である。
「こんにちはゴードンさん」
「お? 坊主、今日から店出してるのか」
「そうなんですよ、まぁパンとナーン貝だけですけどね、値段はそこに」
立てかけられた看板を指し示す松本。
『パン 1本 20ブロンズ、1/10から切り売りできます』
『ナーン貝 1個 5シルバー 1日1個限定』
「パン1本で20ブロンズってのはのちと安すぎねぇか? 」
「作ってますし売れないでしょうから子供達の勉強用、兼、間食用です、
ナーン貝は安いとは思いますが服が買えるだけのお金が稼げればいいので、
一応マダム達に確認して貰いましたから他の商売の邪魔にはならないかと」
「意外としっかりしてんだな、お? 最初のお客さんだぞ坊主」
松本とゴードンが見つめる中、
4歳くらいの女の子がトコトコやってきてパンの前で立ち止まる。
「いらっしゃい、何が欲しいのかな?」
「パン…」
「はいはいパンね~どれくらい欲しいかな? 一番小さくてこれくらいだよ」
「これくらい…」
松本が指で大きさを示すと女の子が両手で大きさを示す。
「はいはい~だいたい1/10だから、2ブロンズだね」
「これ…」
松本がパンを千切って差し出すと女の子が握った手を差し出す、
開いた小さな手の中にはドングリが1つ。
「(…う、う~ん…ドングリかぁ…
これう~ん… えぇ? ドングリ…う~ん
ドン…う~~~ん…ドングリかぁ…)」
女の子を見ると不安そうな顔をしている。
「はいどうぞ、ありがとね」
「わ~い、ありがと~」
女の子の手からどんぐりを受け取りパン渡すと両手で抱えて走っていった、
初めてのおつかいである。
「ぼ、坊主、おめぇ…それでいいんか…」
「ま、まぁ…子供達の勉強用ですから…」
その後、看板に
『5歳未満の子供に限りドングリ決済可。2ブロンズ=1ドングリ。』
と追記された。




