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14話目【ウィンディ姉さん】

村の端でパンツ姿で立つバトーとゴードン、そして腰布の松本。


「フロントポーズ」

「サイドポーズ」

「バックポーズ」


村の復旧作業の合間にポージングの練習中である。


「少しだけ上手くなった気がするが…どうかな?」

「バックポーズが難しいんでよなぁ、つい反りすぎちまう」

「でもかなり慣れてきましたよね~」


3人が光の精霊レムより光魔法を習ってから数日が経ち、

数人の村人達が一緒に練習するようになっていた、中には女性の姿もある。


「なぁゴードン、ちょっと本気で光らせてみてくれよ」


一緒にポージングの練習をしている村人が声を掛けた。


「んじゃちょっと練習の成果を試してみるか、ウィンディ掛け声を頼む」

「はーい」


『ウィンディ』はゴードンの娘、年齢は20歳、容姿端麗。

子供の面倒見がよく、明るい性格で村人から評判も上々、

数名から求婚されこともあるのだが何故か未だに未婚である。


「みんな準備して~、見る人は目に気を付けてね~」

「俺も一緒に練習の成果を見せるぜ」

「あんた光らないでしょ」

「いいんだよ別に、筋肉には自信があるからな~」

「俺も俺も」

「それじゃ私も~」


松本達の横に数人の村人が並び一緒にパンツ姿になる、

女性陣は下着じゃなくてスポーツパンツとスポーツブラみたいな感じ。


「はい皆~フロントポーズ!」


ピカー!

バトーの光が一番強く、次にゴードン、松本の光は直視できる程度、他の村人は光らない。


『 おぉ~ 』


見物している村人達が光を手で遮りながら歓声を上げる、

ウィンディもバトー達の光を遮りながら松本をガン見している、何故か鼻息が荒い。


「はぁ…はぁ…どうだった?」

「俺は駄目だ…やっぱり光らねぇ」

「バトーとゴードンは結構眩しかったわ、坊やは光ってたけど2人に比べるとちょっとね」

「まだ俺の光じゃ魔族には効きそうにないですねぇ」

「マツモトももう少し筋肉付けないとな」

「おう、せめてこれ位必要だぜ」

「ちょと、その状態で迫って来ないでくださいよ!」

『 だはははは! 』


バトーとゴードンが胸筋を交互にピクつかせて圧を掛けている。


「光ったのは3人だけか、やっぱりレム様に教えて頂かないと駄目みたいだな」

「まぁ、ポージングを練習しておけば習得も早ぇだろ」

「そうね、今度レム様に教えを乞いに行きましょう」

「おっし、そろそろ作業に戻ろうや」

『 はい~ 』


村人達は服を着て解散、松本は相変わらず腰布のままである。


「しかし坊主よぉ、そろそろ服どうにかした方がいいんじゃねぇか?」

「どうにかしようにも持ってませんからねぇ」

「まぁ村が焼けちまって皆余裕がねぇからなぁ、俺も2枚しかねぇから分けてやれねぇんだ」

「気持ちだけでありがたいですよ、ゴードンさんが全裸だったら大問題ですけど、

 俺は大丈夫ですからね、まだかわいいウィンナーなんで」

「そうよ父さん! 今は非常時なんだからマツモト君のウィンナーがはみ出てたって誰も気にしないわ! 

 お願いだから余計な事言わないで!」

「「 … 」」


食い気味に割り込んで来たウィンディ、松本とゴードンの間に妙な空気が流れる。


「…そうそう、非常時ですから、幸い腰布だけでも凍えたりはしないんで」

「そうはいってもよ、他の子供は皆服着てるんだぜ? 坊主だけが…」

「いいじゃない! 1人くらい腰布の少年がいても! 

 ど田舎の村なんだし、非常時なんだし! 何も問題ないわ!」

「「 … 」」


再び食い気味に割り込んで来るウィンディ、松本とゴードンの間に妙な空気が流れる。


「父さん、お願いだから私のウィンナーを奪わないでちょうだい」

「「 … 」」


ゴードンの肩を掴み真剣な顔で語り掛けるウィンディ、指が食い込んでいる。


「(これはもしかして…いや間違いない…

  たまに人から見られているような、というか熱い視線を感じていたが…

  よそ者でこの格好だからかと思っていたけど…この人…)」


松本のレーダーに感。


「…い、いやウィンディ、いつまでも裸じゃ坊主がかわいそうだろ?」

「それとこれとは話が別よ! こんなチャンス滅多にないのよ! お願いだから邪魔しないで!」

「(…完全にそうだなこれ)」


そう、ウィンディ姉さんはウィンナー姉さんだったのだ。

襲撃された翌日に松本から声を掛けられて以来、

ウィンナー姉さんは隙あらばウィンナー姉さんしていたのである。




「お~い、買出しにいった馬車が戻ってきたぞ~!」


戻って来た待望の馬車を囲む村人達。


「どうだった? 食料は買えたか?」

「あぁ、できる限り買い込んできた、肉は余り買えなかったがしばらくは大丈夫だろう」

「助かったわ~、これで子供達に食べさせてあげられる!」

「肉は狩りを再開すればそのうち手に入るさ!」

「そうだな、柵の修復は終わったからそろそろ狩りも再開するか?」

「いや、村の修復が先だ、やっぱり家が無いとよ~」

「私もそろそろ屋根の下で寝たいわ」

「とりあえず荷物を手分けして運んでくれ、ポニ爺を早いとこ休ませてやらねぇと」

『 はい~ 』


馬車の荷台には米、小麦粉、野菜、芋の他に塩などの調味料が積まれている、

芋と野菜と小麦は村でもそれなりに育てているのだが、

収穫時期だった作物は襲撃の際に焼けてしまっていた、

芋も結構駄目になっていたのだが土を掘り返すと

幸運にも焼き芋になっていた物が見つかり皆で少しずつ分けて食べた、

あと生き残っていた家畜(なんかキウイっぽい鳥)から卵が収穫できた。


「(どれどれ…)」


松本も馬車の荷運びを手伝に来て購入品リストを確認中。


「(こ、これは…読めない、全く読めないぃぃ!)」


皆が手分けして荷運びしている中、1人だけ異世界の厳しさを突きつけられている。


「(普通に話ができるから油断していたが…文字はそうかぁ…)

 あの~これなんて書いてあるんですかね?」

「ん? 小麦よ、坊や読めないの?」

「いやぁ~読めないですねぇ…どこかで学べたりしますか?」

「あらそれなら子供達と一緒に勉強したら? 今はあの小屋で教えているはずよ」

「ありがとうございます~」


女性が指さした広場の横にある小屋を覗くと、

5歳から10歳くらいの子供が集まっており、

ウィンディが文字の書き読み方を教えている最中だった。


「あ、全裸マンだ」

「ほんとだ全裸マンだ~」

「今日も全裸マンしてる~」

「(いや全裸マンって…まぁ間違いではないけど、しかしウィンディ姉さんかぁ…)」


子供達がキャッキャと騒ぎ出すと異変に気付いたウィンディが外に出てきた。


「あらマツモト君、どうしたの?」

「あの~実は文字が読めなくてですね、出来れば一緒に教えて貰いたいんですけど」

「そうなの? いいわよ、お姉さんが教えてあげるぅ!」

「よろしくお願いします~」


快諾したウィンディの計らいで松本は一番前の中央の席に座らされた。


「あら落としちゃったわ~拾わないと」


ポトっと落としたチョークを屈んで拾うウィンディ。


「さぁ皆、これはなんて書いてあるでしょう?」

『 にく~ 』

「ん~正解!」

「さて次は…あら、また落としちゃったわ~いけないいけない」


再度屈むウィンディ、拾う際に目が血走っている、

かれこれチョークを拾うのは5度目、僅か10分程度の時間で5度目である。


「(ムフフフフ…至福!至福よ!

 このウィンナーチャンス、逃してなるものですか!

 目に焼き付けるのよウィンディ、このウィンナーをぉぉ!)」

「(凄いなこの人…)」


そう、ウィンディ姉さんは肉欲系ウィンナー姉さんなのだ。


「ありがとウィンディ、そろそろ交代するわ」

「あ、大丈夫ですよレベッカ姉さん、今いいところなんで私がやります!」

「なんか妙に元気ね、あらこの子? 確かパンの、ってウィンディあんた…まさか!?」

「べ、別に何んでもないですよ? マツモト君が文字を教わりたいっていうから」

「あんたねぇ…ちょっとマツモト君いいかしら?」


女性に手招きされ外に出る松本。


「マツモト君は文字読めないの?」

「恥ずかしながら読めませんし書けません」

「そう、ところで、なんでいつもその恰好なのかしら?」

「いや~服持っていないもので、やっぱりダメですかね?」

「う~ん…私は全然いいんだけどウィンディの馬鹿が…

 あ、いや…ほら? 他の子の事もあるし? できれば服を着てきて欲しいのだけど…」

「そうですよねぇ、服を手に入れてからまた来ます~」

「ごめんね、その時はちゃんと教えてあげるから、 

 あとマツモト君、詳しくは説明できないんだけどね、

 ウィンディにはくれぐれも気を付けるのよ…」

「わ、わかりました…(今後のために服を手に入れねば…)」


異世界に来て松本は初めて服の必要性を実感した。


「また来ます~」

「またね~全裸マン」

「パンありがと~全裸マン」

「うぅ…またね~マツモト君…グェッグェッ…」

「(この馬鹿は本当に…)」


手を振り小屋を立ち去る松本をウィンナー姉さんは涙を流して見送った。

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