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115話目【獣人の里12 魔族襲撃4】


「ひやっはぁぁぁ!」


ちょっとイイ感じの木の棒を振り回し魔族をシバき回る上半身裸の松本。

大型魔族を処理したバトー、ゴードン、メグロが迎えに来た。


「ふむ、普通の魔族であれば人間の少年でも対応できるようだな」

「いや…あれは普通の動きじゃねぇかから、あんまり参考にしねぇ方がいいと思うぞ」

「ゴードンの言う通りだ、魔族はいくらでも湧いてくるからな、

 倒すのではなく戦い続けることが大切だ、あの動きじゃ長くは戦えんな」

「いや…そういうことじゃねぇよバトー」

「なるほど、確かにあれだけ動くのであれば光魔法の方が体力の消耗は少なさそうだ」

「いや、俺が言いたいのはそこじゃなくてなメグロさん」

「お~いマツモト、大型魔族は倒したから引き上げるぞ~」

「あ、バトーさん」


バトー達が合流すると松本が正気に戻った。


「え? 引き上げるんですか?」

「あぁ、ここにいても消耗するだけだからな、皆と合流した方がいい」

「え? でもアイツを何とかしないといけないんですよね? 止めなくていいんですか?」

「それならさっき倒したぜ、マツモトが遊んでいるうちにな。

 うぉ眩しっ…バトーやるならやるって言ってくれよ」

「はは、すまんなゴードン、こうでもしないと話なんか出来ないからな」


バトーが力こぶを光らせ安置を作ってくれている。


「まぁ直ぐに終わってしまったから、マツモト君が見ていないのも無理はない」

「いや、え? ん? 取りあえず急いでアイツを止めて下さい、ほら、岩拾おうとしてますよ」

「「「 ん? 」」」


バトー達が振り向くと大型魔族が起き上がり岩に手を伸ばしている。


「何!?」

「どういうことだ?」

「私が行く、はぁぁ!」


メグロが飛び掛かり岩を掴んだ腕を落とした。


「行くぞゴードン」

「おうよ、遅れるなよマツモト」

「分かってますよ、2回も置いて行かれたくないですからね」

「「 でりゃぁぁ! 」」


バトーとゴードンの攻撃で四肢を落とされ、大型魔族が再び地面に崩れた。


「バトー、俺達さっき確かにコイツ倒したよな?」

「その筈なんだが…」

「同じヤツなのか? 3匹目の可能性もあるが…」


地面に転がる大型魔族を見て訝しむ3人。



あの感じだとさっきも倒したんだな

どれどれ? 切られた手脚は消えていくけど、胴体だけしっかり残ってるな…ん?



「あらぁぁ! サイドポーズ!」

「「「 うぉ、眩し… 」」」

「いきなりどうしたマツモト?」

「やる時は言ってくれよ…目がチカチカするぜ…」

「正面から見てしまった…」


ゴードンとメグロが目頭を押さえている。


「コイツ、胴体から再生してます! しかも直接光魔法当ててるのになかなか消えないんですけど!」

「「「 何!? 」」」


光が当たる箇所から徐々に消えていく魔族の胴体


「マツモト、そのままいけそうか?」

「無理です、コイツが消えるより先に俺の体力が尽きます」

「次は俺が変わろう、マツモトは休んでくれ」

「お願いします」


松本がバトーと交代する為に光魔法を止めた瞬間、転がる胴体が膨れ上がった。


「げふぅぅぅ!?」

「ゴードン! メグロさん! マツモトを援護してくれ!」

「どこだ?」

「あれだ、飛んでる」


バトーが咄嗟に後方に飛び、剣と盾を構える。

新たに生えた手に薙ぎ払われ、宙を舞う松本をゴードンとメグロが追いかけている。


「生きてるかマツモト君!」

「すぐ行くから待ってろマツモトー!」

「た、助けてくださーい! ひやぁぁ!? いでで…」


右腕を支えた松本が必死に逃げて来た。


「今回はしっかり怪我したみたいだな」

「そうみたいです、いでで…腕が折れたかな…ちょっと回復します…」

「ほう、マツモト君は回復魔法が使えるんだな、周りは気にせず治すのだ」

「助かります」


ゴードンとメグロに守って貰いながら回復する松本


「マツモト何があったんだ?」

「光魔法を止めたら急に腕が生えまして、とっさに右腕で庇った結果がこの有様です」

「そんな一瞬で腕が生えたのか?」

「腕どころか全身再生したみたいですよ、飛んでる時にバトーさんが戦ってるのが見えましたから。

 よし、あとは移動しながら回復します、バトーさんと合流しましょう」


松本達が合流するとバトーが大型魔族と戦っていた。



「どうですかバトーさん?」

「最初より強くなってるな、切っても直ぐに再生する、ぞ!」


バトーが足を切ると大型魔族がバランスを崩し倒れる。

切り離された足は消滅し、直ぐに次の足が生えて立ち上がった。


「再生が早ぇな」

「切るたびに早くなっているみたいだ」

「さてどうするか…」




一方その頃、居住区では…


広場の中央で長老が指揮を取っていた。


「強敵ではないが油断するな! 負傷した者は内側に入るのだ!」

『 はい~ 』

「どんどん数が増えてる、カテリア、マルメロ、気を付けるのよ!」

「大丈夫よお母さん、これくらい平気平気…ひやぁ!?」


母親にアピールするカテリアの耳を魔族の剣が掠め、先端の毛が切れた。


「せい! ふぅ…油断すると危ないよカテリア姉ちゃん」

「あ、ありがとマルメロ、耳が切れたかと思った…」

「はははは、カテリアは耳を畳んでおいた方がいいのである」

「そうする、でりゃぁぁ!」


両耳を畳み魔族を蹴散らすカテリア。


「光魔法も尽きて、いよいよ正念場だねぇ長老」

「そうだな、だが普通の魔族であれば我らの敵ではない、ここは朝まで耐えられるだろう」

「問題は岩ですね、この乱戦の中に投げ込まれると避けられないでしょう」

「そうだねぇ」

「長老ー駄目だー!また復活した!」

「こっちも復活した! なんかどんどん強くなってるみたいだ!」


左右の大型魔族を監視している獣人達から報告が届く。


「よくないねぇ、長老、誰か手伝いを送るかねぇ?」

「うむ…」


オババ様の問い考え込む長老、少し間を置き口を開いた。


「…あの者達は信頼に足る人間だ、増援は送らぬ。

 それに、ここが落ちてはメグロに申し訳が立たない、彼らを信じて我らはここを死守する!」

「長老…いや、アンプロ、少し変わったかねぇ、っほっほっほ」


少し嬉しそうなオババ様。


「はは、オババ様の言う通り、少し変わったかもしれぬな。

 さて、私も先陣に加わるとしよう、オババ様とプリモハ殿はここにいて下さい」

「わかりました、長老様、お気をつけて」

「長老、あまり無理をすると古傷に触るよ、長老も年寄りなんだからねぇ」

「っはっはっは! オババ様に比べればまだまだ若造よ!」

「(皆、頑張って…ジェリコ、ニコル、ラッチ、私信じてるわ)」




一方その頃、ジェリコ達は…


「「 でりゃぁぁ! 」」


ラッチとニコルが両腕を切り落とす。


「ラッチ、ニコルもう再生し始めてるぞ!」

「なんかどんどん早くなってない?」

「再生するたびに強くなってる気もするわね」

「岩さえ投げさせなければいいんだ、両腕に攻撃を集中しろ! でりゃぁぁ! ぐわぁ!?」


切り掛かったジェリコが再生した腕に跳ね飛ばされた。


「ジェリコ!?」

「私が行く! ラッチはアイツを!」

「了解!」

「大丈夫ジェリコ?」

「すまねぇ、ちょっと回復させてくれ」


鼻血を拭きながら回復するジェリコ。


「気を付けろラッチ! さっきより動きが早いぞー!」

「ねぇジェリコ、朝まで耐えられるかしら?」

「泣き言言っても仕方ねぇ、一緒に頑張ろうぜ、信頼してるからよ」

「そうね、お嬢も頑張ってるものね」

「おうよ、よし、いける! ラッチ今行くぞー!」


1人で奮闘するラッチの元に合流するジェリコとニコル。

2人が大型魔族の腕を落とし、もう1人が周りの魔族を排除する。

担当は決まっておらず、状況に合わせて臨機応変に対応している。

お互いを信頼し、サポートし合う3人一組の戦い方、高い信頼と実力が垣間見える。




そして、30分後の松本達…


「フロントポーズ!」


松本が光ると大型魔族の動きが少し鈍くなる


「うぉぉぉ!」


メグロが腕を切り離す。

切り離された腕が光に当たると直ぐに消えるが、胴体に繋がっている部分は消えず、松本達を攻撃してくる。


「でりゃぁぁ!」


ゴードンが首を切りはなすと光に当たって消えた。


「っはぁ…っはぁ…っはぁ…」

「マツモト少し休め、俺の近くなら安全だ、ゴードン! メグロさん! 暫く2人で頼む!」 

「了解だ!」

「問題ない!」

「っはぁ…っはぁ…助かります…バトーさん、さっきの見ました?」

「あぁ、マツモトの予想通り、胴体だな」

「みたいですね、影は?」

「当たりだな、光魔法は効果が無い訳じゃない、確実にアイツを消滅させている。

 ただ、消滅する傍から胴体が再生させてるな、切り離した部分が直ぐに消滅するのはそのせいだ」

「光魔法を当てても普通に殴って来ますからね、再生速度が尋常じゃないですよ」

「光魔法が当たってる間は、アイツの影に沸く魔族を吸収して再生してるみたいだ。

 2人で囲めば影から切り離せる、その間に胴体を攻撃するしかないな」

「片方は俺がやります、俺じゃ攻撃できませんから」

「…そうか、頼むぞマツモト!」

「行きましょう!」


松本を見てニッコリ笑うバトー、松本も笑い返して立ち上がる。


「ゴードン! メグロさん! 俺とマツモトで両側から光魔法を当てる! 

 アイツの影が消えている間に胴体を攻撃してくれ!」

「「 了解! 」」


大型魔族の正面にバトー、背面に松本が立ち光を放つ。

バトーの光が強く、疲弊した松本側に影が出来た。


「マツモト側に影が出来てるぞ! バトー弱めろ!」

「駄目です! 弱めないで! それじゃコイツは抑えられない!」

「いけるのかマツモト君!」

「ちょっと待って下さい!」


松本側の光が消える。


「おらぁぁ! フルパワー!」


再び松本が強く光り、影が消えた。


「影が消えたぞ!」

「今だ2人とも! 急いでくれ!」


バトーの合図で走り出した2人。


「俺が先に行く! メグロさんは胴体を頼む!」


ゴードンが迫る両腕を落とし、メグロが胴体を狙う。

両腕を失った大型魔族が頭を吸収し、左手を再生させメグロを薙ぎ払おうとする。


「なにぃ!?」

「メグロさん!」


体を捻りギリギリ躱すメグロ、手を離れた剣が宙を舞う。


「でりゃぁぁ!」

「ぬぅぅぅおりゃぁぁ!」


ゴードンが左手を落とし、メグロが両手の爪で胴体を両断した。


「っはぁ…っはぁ…」


松本の光は消えたが、バトーの光に照らされ胴体が消滅した。



「ふぅ、やったなメグロさん」

「助かりましたゴードンさん、しかし、これは…」

「これが原因が?」


胴体が消滅した跡に残った物を見て訝しむメグロとゴードン


「た、助けてくださーい! 俺ちょっと疲れて…」

「ふん!」

「ぎゃぁぁ目がぁぁ!」


ゴードンとメグロの元に逃げて来た松本、

反対側から駆け寄って来たバトーの光を直視し、目を抑えて転げ回っている。


「ははは、大丈夫かマツモト」

「た、助かりましたバトーさん、でも目がぁ…」

「守ってやるから安心しろ!」

「お、お願いします…」


目を抑えて全裸でうずくまる松本。


「…マツモト君、何故全裸なのだ?」

「服はどうしたマツモト」

「さっき脱ぎました、光魔法は肌面積が多い程、強く光るんです」

「なるほどな、さっき光が強くなったのはそれか」


納得するバトー。


「光魔法ってそういうモノなのか?」

「そうだとしても全裸で光魔法を使うヤツなんてマツモト位だろ…」


ゴードンは失念していた、光の精霊レムが全裸であることを…



「ゴードン、これが胴体に入っていたのか?」

「ひぇっ…人の骨ですかこれ? 上半身しかないですけど…」

「多分な、よく分からねぇけど」

「この首飾り…それにこの傷…どこかで見たことあるような…」


地面に横たわる人骨を見て考え込むメグロ、

右肩から肋骨にかけて傷が入っており、首には古びた首飾りが掛かっている。


「取りあえず、これの事は後で考えようぜバトー」

「そうだな、ジェリコさん達も苦戦してる…」

『 !? 』


強化魔法が砕ける音とと岩が地面に落ちる音が響いた。



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