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114話目【獣人の里11 魔族襲撃3】

居住区の入口へ走るバトーとマツモト、後ろにメグロ、ニコル、ラッチ、ジェリコの姿がある。


「ゴードン! 下に行くぞ!」

「なに!? さっきの爆発といい何が起きてんだ?」」

「俺達の知らない大型の魔族が現れたんだ、さっきの音はそいつが投げた岩だ!」

「ゴードンさん、急いで止めないとここが崩壊します!」

「岩だ? よく分らねぇが行くしかねぇんだな? 誰か変わってくれ!」

「分かった! 私が変わろう!」


ウルフ族がゴードンの代わりに入口を防衛するために走って来る。


「父さんも下に行くの?」

「行っちゃうのお父さん?」


バトー達と一緒に行動するメグロに声を掛けるマルメロとカテリア。

不安な顔をしている。


「あぁ、ちょっと行ってくる、心配するな2人共、父さんは強いからな!」

「でも…うわ!?」

「大丈夫よ、お父さんは里の中では一番強いの」

「母さん!?」


後ろから母親に抱き込まれ、カテリアとマルメロがメグロの胸に収まった。


「大きくなったな、カテリア、マルメロ」

「カテリアは少し太ったわね、マルメロは相変わらず素直ないい子」

「ちょっとお母さん、私太ってないわよ!」

「本当かな? 夏毛になったら隠せないよカテリア姉ちゃん」

「太ってない! 余計な事言わないのマルメロ!」」

「「「 ははははは! 」」」

「笑わないでよ、ふふふ」


抱き合い笑う3人、カテリアも釣られて笑う。


「頑張ってね父さん」

「お父さん気を付けて」

「信じてるわメグロ」

「あぁ、家族に恰好悪い姿は見せられないからな」


抱き寄せる手を緩め、家族の顔を目に焼き付けるメグロ。


「行ってくる」


顔を上げたメグロは優しい父親ではなく、戦士の顔をしていた。



「いい家族ですね」

「そうだな」

「俺ん家も負けてねぇぞ?」

「もうウィンディはハグしてくれないんじゃないか?」

「年頃ですからね」

「そうか?」


カテリア達に代わり、入口のの防衛をしている松本、バトー、ゴードン。

家族の束の間の団欒を微笑ましく見ていた。



「家族と里を頼むぞニャリモヤ」

「任せるのである」

「待たせて申し訳ない、急ごう」

『 はい~ 』

「ん? なに!? 全員避けろ! 岩が来るぞ!」

『 なにぃ!? 』


カテリアとマルメロを抱えて飛ぶメグロ、各自全力で居住区の方向に飛ぶ。


「ぎゃぁぁ! また俺だけぇぇ!?」


入口の坂に岩が直撃し、逃げ遅れた松本と破片が飛ぶ。


「大丈夫かマツモト~?」

「どうせ大丈夫だろ~マツモト」

「いや、そんな決定事項みたいに…何とか無事ですけど」

「マツモト殿の扱いが雑なのである…」


受け止めてくれたニャリモヤにめり込んだ松本が手を振っている。


「おいおい、今こっちから飛んでこなかったか?」

「私の見間違いかしら?」

「いや…ジェリコ、ニコル、見間違いじゃない、僕も見た…」

「てことはよ…」

「まさか…」

「そのまさかだ、あの先にもう1体いる」

『 えぇ!? 』


メグロが1体目とは異なる方向を指さしている。


「お嬢ー! もう1体現れましたー!」

「こっちもお願いしますお嬢ー!」

「うそでしょー!?」

「本当でーす! 入口が壊れましたー!」

「えぇ!?」


居住区を挟んだ反対方向からプリモハの驚いた声が聞こえる。


「おいおい、真反対じゃねぇか、それに入口が壊れたってことは…」

「バトーさん、もう幹に沢山登って来てますよ」

「最悪だな…ニャリモヤさん、入口が壊れた影響で、幹から登って来る数が増えたようです、

 一か所に集まった方がいい」

「了解である! 皆中央に集まるのである! 魔族が四方から登って来るのである!」


ニャリモヤが長老とオババ様の元に走って行く。


「皆急いでぇぇ! 私のマナが尽きる前にアレを止めてぇぇ! 早くぅぅぅ!」


プリモハの魂の叫びが聞こえる。


「バトーさん、2手に分かれましょう、俺達3人がこっち側のヤツを止めます!」

「大丈夫か?」

「急がないとお嬢のマナが尽きます!」

「任せる、だが情報が無い相手だ、十分気を付けてくれ」

「「「 了解です! 」」」


背筋を伸ばし気合の入った返事をするジェリコ、ニコル、ラッチ。


「ゴードン、マツモト、メグロさんは俺と一緒に反対側のヤツを抑える、皆死ぬなよ!」

『 はい~ 』




半ば崩壊した坂を下りていく一同。


「行くぞニコル、ラッチ!」

「「 了解! 」」

「「「 お嬢の為にー! 」」」


地面が近付くとジェリコ、ニコル、ラッチが分かれ影の中に飛び込んで行く。


「「「 でりゃぁぁ! 」」」


武器を振るい襲い掛かる影が消し飛ばす3人。

魔族の海に道を作りながら、大型魔族を目指し進んで行く。





一方、バトー達は…


「ふん!」


マツモトが光魔法で魔族を消滅させる。


「マツモトそのまま頑張ってくれ」

「そんじゃ行くか、よいしょっと」

「それでは私が足を」

「継続して光魔法使うと疲れますから、急いでくださいね」

『 はい~、っほっほっほっほ 』


輝く松本を抱え、照明、兼、魔除け代わりにして大型魔族の元に走って行く3人。

微かに照らされた大型魔族は池の岩を引き抜きいていた。


「また岩を投げようとしているぞ!」

「先に行けバトー!」

「了解だ!」


魔族を蹴散らしながら大型魔族の元へ走って行くバトー。


「そりゃ!」


バトーの一閃により大型魔族の右腕と岩が地面に落ちた。


「お見事、はぁぁ!」

「やったぜバトー、どりゃぁぁ!」


続いて駆け寄って来たメグロとゴードンが剣を振るい両足を断った。

右腕と両足を失った大型魔族は地面に崩れ落ちた。


「コイツが岩投げてたのか、確かに見たことねぇな」

「大きい割にあまり強くなかったな」

「ゴードン、マツモトはどうした?」


集まって来る魔族を処理しながらバトーが問いかける。


「ん? あれ? 光ってねぇな…」

「あの辺りに置いて来たのだが…」

「ちょっとぉぉぉ、いきなり置いて行かないで下さいよぉぉ危ねぇぇ!」


魔族の攻撃を避けながら松本が走って来る。


「置いて来たのか…」

「いや、光魔法あるから大丈夫だと思って」

「マツモトー、光魔法使えー!」

「体力使うから長持ちしないって言ったじゃないですかぁぁぁ!

 ぎゃぁぁ危ない!? っておらぁ! いつまでも反撃しないと思ったら大間違いだぞぉぉ!

 相棒6式の威力を思い知れぇぇぇ」


咄嗟に拾ったちょっとイイ感じの棒で魔族に反撃する松本。


「マツモト剣はどうしたー?」

「運ばれてる時に落としたみたいですー! おらぁ死にたいヤツから前に出ろぉ! 

 片っ端から相棒の錆にしてくれるわぁぁ! ヒャッハー!」


囲まれながら人間離れした動きで魔族を蹴散らす松本。

闇の中に怪しく光る目の残像が見える。


「久しぶりに出たな…狂気のマツモト」

「彼は本当に人間なのか? 獣人に近い動きをしているが…」

「ゴードン、メグロさん、目的は達しましたし、マツモトが力尽きる前に急いで戻りましょう」

「了解だ」

「長居は無用だな」


 



その頃、居住区では…


「ふん!」


居住区の広場でウルフ族が光り、集まって来ていた魔族が消滅した。

少しだけ離れた位置で長老、オババ様、プリモハが話をしている。


「長老、光で一掃出来るけど、またすぐ登って来るねぇ」

「登って来る数が増えたのもあるが、中央で光魔法を使うと光が幹に届かないのだ」

「長老様、それでは外側で守った方良いのでは?」

「いや、分散する方が危険です、頻度は増えるが今のままの方が良いと思います」

「長老ー、オババ様ー、メグロ達が1匹倒したみたいだー」


長老達の元にニャリ族が走って来くる。


「ふん!」

「おわ!? 長老?」


ニャリ族の背後に杖を付き立てる長老、後ろに近づいていた魔族が消滅した。


「危ないぞ、まだ終わっていないのだ、油断するでない」

「き、気を付けます」

「メグロ達は無事かねぇ?」

「無事ですよオババ様、なんか子供が凄い動きしてますけど」

「ふむ、これで片方は岩が飛んで来ずに済むな」

「よかった、私のマナも余り残っていませんので、もう片方はどうでしょうか?」

「あ、もう片方は別なヤツが見てますので…うお、眩しい」


広場の中央でウルフ族が光を発し魔族を消滅させた。


「気を付けろー! 岩が飛んで来るぞー!」

『 何!? 』

「ストレーングス!」


障壁に当たり岩が落ちる。


「プリモハ殿、助かりました」

「ありがとうねぇ」

「いえいえ、ですが次でマナが尽きそうです、私のマナが切れたら全力で逃げるようにお願いします。

 もし大怪我をしたら私以外に回復魔法が使える人がいませんので」

「了解です、皆聞こえたな、岩を防げるのは次で最後だ、全力で逃げるように」

『 はい~ 』

「(急いでジェリコ、ラッチ、ニコル)」





一方、ジェリコ達は…


「くそっ! 岩を投げさせちまった!」

「ラッチ、居住区は?」

「無事だよ、お嬢が防いでくれたみたい」

「ん…いたぞ! ニコル、ラッチ、先に行け!」

「「 了解! 」」


大型魔族に向かって走るニコルとラッチ。


「「 でりゃぁぁ! 」」


飛び掛かり両腕を落とした。


「よっしゃぁぁ! どりゃぁ!」


ジェリコが右足を飛ばすと大型魔族が倒れた。


「思ったより呆気なかったわね」

「取りあえず休憩しよう、最初に僕が光魔法を使うよ」

「頼むわラッチ、1個岩投げさせちまったな…お嬢すまん」

「仕方ないわ、取りあえず間に合ったから良しとしましょう」

「よいしょっと、光魔法~」

「「 眩しっ… 」」


ラッチが光魔法を使い周りの魔族を消滅させ、闇の中に即席の安置が出来た。


「これ結構疲れるから断続的に使った方がいいね」

「使用中は動けなくなるし、魔族以外の戦闘じゃ使えそうにないな」

「この程度の敵なら普通に戦った方楽だしね、問題は数だけど」

「アイツ消えないね、光魔法で完全に消滅させた方がいいかな?」


ラッチが地面に倒れた大型魔族を指さす。

切り離した手足は消滅しているが、胴体と左脚が残っている。


「手脚は消えてるな」

「光が当たってるのに胴体が残ってるわね」

「ジェリコ、そろそろ交代してくれない?」

「おうよ、ありがとうなラッチ、ど~れ俺の光魔法で消滅させてやるか~」


胴体に近寄り光魔法を使うジェリコ、胴体が光の当たる表面から徐々に消えていく。


「なかなか消えないね」

「光りが弱いんじゃない? ジェリコ服脱いだら?」

「そうか? ちょっと脱ぐから周り見ててくれ」

「「 はい~ 」」


光魔法を止めシャツを抜こうとするジェリコ


「え!? コイツまさか!?」

「ジェリコ気を付けて! うわ!?」

「おいおいどうした? なっ!?」


シャツを脱いだジェリコの前に大型魔族が腕を振り下ろした。

咄嗟に避けたジェリコに周りの魔族が襲い掛かる。


「危ない!」

「ジェリコ立って!」


ニコルが魔族を薙ぎ払い、ジェリコが剣を持って立ち上がった。


「おいおい…どういうことだ? なんでこいつが立ってやがる?

 ニコル、俺が目を離した一瞬でなにが起こった?」

「アンタが光魔法をやめた瞬間、手足が生えて来たのよ!」

「何!?」

「恐らく周りの魔族を吸収したんだ、アイツに集まって行くのを見た」

「マジかよ…てことは、コイツは無限に再生するってことか?」

「そういうことになるんじゃない?」

「魔族は際限なく沸くからね」


襲って来る魔族を処理しながら巨大魔族を見る3人。


「ラッチ、夜明けまであとどれくらいだ?」

「多分1、2時間位じゃないかな?」

「ニコル、お嬢のマナは?」

「もたないわね、強化魔法が使えるのは後1、2回が限界の筈よ」

「やるしかねぇな…コイツはそこまで強くはい、お嬢の為にこの場で夜明けまで抑えるぞ!」

「「 了解! 」」



夜明けまで約1時間半、最後の持久戦が始まった。





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