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113話目【獣人の里10 魔族襲撃2】

魔族の襲撃に耐える獣人の里


襲撃開始から6時間が経った頃、居住区の入り口では未だ防衛が行われており、

居住区の一角では焼き魚の香ばしい香りが漂っていた。


「そろそろ焼けましたかね?」

「もう少しじゃねぇか?」

「いい匂いだなぁ~、楽しみだ」


入口で魔族を退けるラッチ、ジェリコを尻目に網で干物を焼く松本、ゴードン、バトー。

広場の中央では数人の獣人達が固まって寝ている。

思いのほか順調に防衛出来ている為、交代で仮眠と食事を取っていた。


「焼けたな、マツモト葉っぱ取ってくれ」

「はいゴードンさん、いや~お腹すきましたねぇ」

「昼から食べて無かったからな、流石に俺も腹が減ったよ」

「俺もだ、ほらよ、熱いから気を付けろよ」

「ありがとう御座います」


大きな葉っぱに乗った魚を受け取る松本。

見慣れない魚の干物だが脂が滴り美味しそうである。


「「「 いただきまーす 」」」

「干物は初めて食べたけど旨ぇな、味が濃縮されてる」

「ポッポ村じゃ魚食べないからな、脂がのってて旨いな」

「大きいから食べ応えありますねぇ、ヒレも旨い」

「「 ヒレ食うのか… 」」


バリバリとヒレを食べる松本。


「マツモトさん、よかったらこれどうぞ」


横で魚を焼いているカテリアから緑の柑橘類を受け取る。


「カテリアさん、これは?」

「森で取れる木の実です、絞って掛けるとサッパリして美味しいですよ。

 手がベタベタになりますけど」

「ありがとう御座います、試してみます」


木の実を絞り干物に掛ける松本、柑橘類の爽やかな香りが心地よい。



うん旨い! サッパリして旨い!

カボスみたいな感じだな

醤油が合いそうだけど流石に無いか



「バトーさんとゴードンさんもどうですか? サッパリして美味しいですよ。

 手がベタベタになりますけど」

「貰おうかな」

「ついでに絞ってくれよマツモト」

「はい~」

「「 おぉ~、サッパリ! 」」


柑橘類を気に入ったバトーとゴードン。

絞り職人松本は、水魔法で手を洗った。


「気に入って貰えてよかったですよ、実はそれ私が作った干物なんです」

「我も作ったのである」

「違いますよ、殆ど僕と父さんが作りました」


隣で決め顔のカテリアとニャリモヤをマルメロが訂正している。



「それにしても、なんか拍子抜けですね」

「ポッポ村の時とは違って、今回は光魔法があるからなぁ、入口が1つってのも守りやすいしな」

「それに殆どの人達が戦えるのも大きい。

 ポッポ村は魔法が使える代わりに戦える者が限られていたが、

 獣人の人達は殆ど魔法が使えない代わりに身体能力が高く子供でもそれなりに戦える」

「ここには俺より弱い人が殆どいないですからね」

「種族の差ってやつかね」

「だな、このまま順調にいけば負傷者はマツモトだけで済むな」

「それはそれでちょっと複雑ですけど…」

「「「 ははははは 」」」


寝ている人に配慮して少し控えめに笑う3人。


「俺思ったんだけどよ。入口しか登って来ないなら坂を壊したらいいんじゃねぇか?」

「俺もそう思います」

「いや、やめた方がいいな、もし誰かが落ちたら登って来れなくなる。

 それに坂があるから優先的に入口に向かってきているだけで、幹を登れない訳ではなさそうだ。

 坂を壊すと幹を登られて居住区で囲まれることになるかもしれない」

「確かにな、たまに登って来てるヤツがいるみてぇだし」

「なるほど、余計なことはやらない方が良さそうですね」 


干物を食べ終えた3人は少しだけ寝た。



魔族の襲撃開始から約9時間後

入口の防衛はいたって順調である。


「よっし、次の入口役は俺だな、行って来るわ」

「ゴードンさん気を付けて下さい」

「油断するなよ、マツモト、俺達も外周の手伝いに行こう」

「了解です」


入口の防衛をしていた人達とマルメロ、ニャリモヤ、ニャリシロ、ゴードンが入れ替わる。

バトーとマツモトは外周を見張っているメグロと合流した。

魔族の殆どは入口から登って来るのだが、時間が経つにつれ巨木の幹をよじ登って来る魔族が増え始めたのだ。


「メグロさん、どうですか?」

「数は増えているが今のところ問題はなさそうだ、登って来る速度が遅いので数人で対処できる」

「しかし増えましたねぇ、結構いますよ」


松本が幹を見ると黒い影が張り付いている。

入口側の幹は防衛時の光魔法で掻き消えるため大丈夫なのだが、

光が届かない場所には、かなりの数が登って来ていた。

数人のウルフ族が外周を監視しており、居住区に近づいて来たら光魔法で対処している。


「当たった! 今当たったよ!」

「すごーい!」

「次は僕の番」


たまに子供達が石を落として排除しているらしい。


「ここもそろそろだな、ふん!」


メグロの体が光り、幹の真ん中位までの影が掻き消えた。


「床に光が遮られてるな」

「隙間から漏れた光で、対処で来てるみたいなので問題なさそうですね」

「ん? あれは…いったい…」


メグロが遠くの闇に眼を細めている。


「っは!? 危ない皆離れろ!!」

「マツモト!」

「え!? うわぁぁ!?」


メグロとバトーが飛び退いた瞬間、先ほどまで立っていた床が弾け飛んだ。

破片と共に逃げ遅れた松本が宙に舞う。


「な、なんだぁぁ!? ぐえっ…」

「大丈夫かマツモト!」

「何とか無事です~…」

「メグロ! 何があった? 皆無事か?」 

「松明の火が燃え移ってるからねぇ、広がる前に急いで消火しておくれ」


長老とオババ様が走って来た。


「ウォータ!」


オババ様の後ろから水球が飛び、燃え移った火が消えた。


「お嬢、危ないから下がって!」

「何が起きたが分からないんですから…」

「消火なら私達がやりますよ」

「あなた達は入口の防衛で疲れてるでしょ、これくらい私がやるわよ」

「ですがね、お嬢…」

「ジェリコ、理解しているのでしょう?

 今のが異常事態なら貴方達はもっと過酷な状況に対処して貰わないといけない。

 これは私がやる必要があるのです。 …その時は頼んだわよ」

「「「 了解です! 」」」


プリモハと調査隊も合流すると、メグロが闇を指さした。


「長老、オババ様、アレです」

「あれまぁ、随分と大きいねぇ」

「なんだアレは? 他とは明らかに異なるな」


人間達が目を凝らすが暗くて誰も確認できない、

一方、獣人達は見えているらしく広場が騒めいている。


「すみません、何が見えるんですか?」

「一際大きい魔族が現れた、他の魔族の5倍ほどの大きさだ」

「さっきのはその魔族の攻撃だったんですか?」

「そうだ、先ほどの爆発はアレが投げた岩だ」

『 岩!? 』

「あれがそうだ」


崩れた床の下を指さすメグロ、大きな岩が落ちている。


「えぇ…あれ投げて来たのか…バトーさん」

「あぁ、かなりマズイな、続けて投げられると崩壊するぞ」

「バトー殿、アレは以前も?」

「いえ、ポッポ村の時にはいませんでしたね」

「となると、対処方は分からぬか…」


長老とメグロが思慮を巡らせている。



まだ見えないってことは遠いな…

光魔法が届かないなら一方的に攻撃されるな

岩は止めようがないし、これは…



「マズイ、皆離れろ! 次を投げて来るぞ!」

「いやぁぁぁ! どどどどうすればばばば…」

「落ち着けマツモト、取りあえず離れるぞ!」

「待って下さいバトーさん、何処に飛んで来るかもわからない、今は動かないで!」

「次を投げたぞ! 離れろ皆!」

「頑張って避けるしかないねぇ」

「待って、動かないで!」

「皆、お嬢を信じて!」

「「「 お嬢~! お願いします! 」」」

「任せなさい! 刮目せよ、これが隊長の力よぉぉぉ! ストレングス!」


居住区の前に透明な障壁が展開され、飛んできた岩がぶつかる。

2枚の障壁が割れたが3枚目で止まり地面に落ちた。


『 おぉ~ 』


プリモハに拍手する一同。


「「「 お嬢! お嬢! お嬢! 」」」

「おーっほっほっほ! これが隊長パワー! 私だって戦闘意外なら役に立つのよ~!」

「お嬢カッコイイ~」

「流石お嬢、頼りになます~」

「俺達にできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれる!」

「お~っほっほっほ!」


プリモハ調査隊からのお嬢コールで鼻高々のプリモハ。


「ん? 次が飛んできたぞ!」

「えぇ!? ストレングス!」


障壁に阻まれ地面に岩が落ちた。


「ちょっと…流石に連続はキツイんですけど…」

「「「 お嬢頑張って! 」」」

「プリモハ殿、次が来ました!」

「ストレーングス!」

「「「 お嬢~! 」」」


3個目の岩が弾かれ地面に落ちた。



「先程から殆ど近付いて来ていないようだ、このままでは…」


目を凝らすメグロが頭を抱えている。


「時間がない、こちらから打って出るしかないな」

「やっぱりぃ…仕方ないですね」

「しかし、あそこに行くには魔族の中を進んで行くことに…」


バトーの言葉に賛同しきれないメグロ


「それでもやるしかないでしょう、行くかマツモト?」

「行くしかないでしょう、光魔法が使える人じゃないと無理そうですから」

「ゴードンも連れて行った方がいいな」

「では私も一緒に」

「頼んだぞメグロ、すまぬな」

「いえ、長老、オババ様、家族のことを宜しく頼みます」

「任された」

「頑張ってねメグロ」


長老とオババ様に一礼し、剣を持つメグロ。


「ジェリコ、ニコル、ラッチ、貴方達も…酷い頼み事をしてゴメンなさいね」

「なぁに楽勝ですよ!」

「いつも通り、私達の事も信じてくださいよ! 私達はお嬢を信じたじゃないですか!」

「お嬢もちゃんとここ守ってくださいよ~」

「そうね、信じて待ってるから、ここは任せて!」

「「「 行ってきます! 」」」


夜明けまでは後2時間程、

一同は魔族討伐の準備を始めた。



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