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104話目【獣人の里2 その名はプリモハ】

ニャリシロの白くて長い毛にめり込んだ謎の女性を数人の獣人が引っ張っている。


「いた~い! もう少し優しく~」

「そんなこと言ったって優しく引っ張っても取れないんだもん」

「小さいのになんて力なんだ…」

「そもそもなんで張り付いてるんだ?」

「ぬふふふふ…」

「さて、どすうるべきか…」


ニャリシロに顔を埋め悦に浸る女性。

引っ張っても一向に離れないため対応に困っていた。


「なんか見たことある光景だねカテリア姉ちゃん…」

「そうねマルメロ、最近見た気がするわ…」

「身に覚えがあるのである…」


マルメロ、カテリア、ニャリモヤの3人にはお馴染みの光景だった。


「あの~たぶんですけど、火で炙れば取れますよ」

「マツモト殿の場合は炙れば取れるのである」

「お尻を炙るとポロっと取れるんです」


なんか虫みたいな扱いの松本。


「ふむ、取りあえず何者か分からぬゆえ、用心してからにするか…おーい皆者ー!」

『 はいー 』


長老の呼びかけで獣人達が木材を持ち寄りテキパキと檻を組み立て、

完成した檻に女性の張り付いたニャリシロが入るとカテリアがバトーに声を掛けた。


「では、バトーさんお願いします!」

「え? 俺がやるのか? なんか気が引けるな…」

「まぁいいじゃねぇか、ささっと炙って休もうぜバトー」

「う~ん、しかしなぁ…マツモトならいいんだが、

 成人女性の尻を炙るのは流石に可哀想というか問題があるというか…う~ん…」

「あつ…」


成人女性の尻が丸出しになるのは流石に問題があるということで、

靴を脱がせ、足の裏を少し炙るとポロっと取れた。


「はいはい、ニャリシロさんとバトーさんは外に出てくさださいー」

「「 はいー 」」

「よいしょっと、これで取りあえず大丈夫でしょう」

『 おぉ~ 』


扉を閉め、やり切った顔のカテリアに獣人達が拍手を送っている。


「はぁ~、体が軽くなったわ~ありがとうカテリア、バトーさん」

「あ、いえ、気にしないで下さい。ところでこの人はいったい?」

「この人、最近島の森で見かける人です」

「そうなのカテリア?」

「間違いありません! この人がパン食べるのをずっと見てましたから!

 あの美味しそうなパンは忘れませんよ!」


自信満々に胸を張るのカテリア。


『 う~ん… 』

「カテリア姉ちゃん…」

「カテリア…」

「ちょっと、そんな目で見ないで下さい、いいじゃないですかパン、美味しいんですよ?」

『 パンで判断されても… 』


獣人達が判断に困っている。


「だーっはっは、いつものカテリアちゃんだな!

 まぁ、その姉ちゃんのことは置いといて、取りあえず休ませて貰おうぜバトー」

「そうだな、流石に少し疲れたなゴードン」

「では、また後程。誰か案内して差し上げてー」

「はいー」


長老の呼びかけにより、マルメロが案内してくれることとなった。




「里に滞在してる間はこの建物を自由に使ってください」

「助かるよマルメロ」

「ありがとな」

「そういえば、マツモトさんどこ行ったんでしょうか? 

 広場にいたニャリ族には張り付いていなかったし…」

「まぁ、マツモトなら心配いらないさ」

「そのうち適当に帰って来るだろ」

「はぁ…そうですか」





一方広場では


「あの~オババ様、その張り付いている人間は…」

「マツモトって名前らしいけどねぇ、中々離れなくて、どうしたものかねぇ」

「マツモトって、さっきの人間達の仲間だったか?」

「どうだったかな~? 取りあえず入れとくか」

「そうだな」

「オババ様、ちょっとここに入ってください」

「はいはい」

「あつ…」


足を炙られ松本も檻に収監された。


「んじゃ、移動するか」

「はいよ」


松本と女性が入った里の端に移動させられた。




…いかん、オババ様に夢中になっているうちに檻に入れられてしまった…

出ようにも誰も近くに居ないし…まぁ、身の危険もないし特に問題は無いのだが…

ただ…



「むふふふふ…」


松本が横に緩み切った顔で涎を垂らす女性が転がっている。



…誰だこの人、なんかヤバそうなんだけど…



「むふふ…この感触…ニャリ族最高~」



あ、同族だったわ…



松本と同じく猫狂いの女性は未だに余韻に浸っていた。



確か、獣人の里には人間はいない筈、

服装は冒険者というより探索者っぽいし…

もしかして最近里の周辺に出没するっていう人達か?



「あのーお姉さん、帰って来てくさださーい、お姉さーん涎出てますよー」

「むふふ…っは!?」


正気に戻り辺りを見渡すお姉さん。


「あれ? ニャリ族は? …それに君は?」

「はじめあまして、俺は松本です、お姉さんは?」

「初めましてマツモト君、私はロ…いえ、プリモハよ、ヨロシクね」


涎を拭き取りながら握手を求めるプリモハ。


「よ、よろしくお願いします、プリモハさんはどうしてここにいるんですか?」

「私は白いニャリ族の感触と匂いを、むふふ…」


思い出して顔が緩むプリモハ。


「いえ、森でニャリ族を見かけて追いかけて来たんだけど、

 気が付いたらここにいたの、むふふ…」



嘘だな…絶対張り付いて匂い嗅いでただろ

確実に俺と同じタイプだ



「わざわざ森にニャリ族を探しに来たんですか?」

「いえ、探しているのは光の3勇者様の記録とか遺物よ。

 記録ではこの辺りでネネ様に関する遺物がある筈なんだけど、マツモト君何か知らない?」

「いえ、俺も今日来たばかりなので」



やっぱりネネ様に関する物だったが、

間違いなくマルメロくんが言ってた人間達だな



「マツモト君はなんでここにいるの? ていうかここは何処なの?」



う~ん…説明していいものか、

獣人の里って外界から隠れてるんだっけ? 

…まぁいまさら隠しても無駄だよな



「ここは獣人の里です、俺は里が…」

「うそ!? 獣人の里なの!? どこ? ニャリ族は何処なの?」


檻に張り付き目を凝らすプリモハ、見開いた目が充血している。



う、うわぁ…狂気を感じる…

大丈夫かこの人…



プリモハに引き気味の松本、

自分も周りから同じ扱いを受けていることを彼は知らない。


「あ…あのプリモハさん?」

「あはは、なんでもないの気にしないで、っはぁ!? いま少しだけ尻尾が見えた気が…」


血眼で檻にめり込むプリモハ。


「プ、プリモハさん、気持ちは分かりますが落ち着いて下さい。

 顔が檻にめり込んでますから」

「あはは、ごめんなさい、私ニャリ族が好きで…」

「でしょうね」



顔に檻の跡が…

好きって言うか、俺と同じ猫狂いだな…この世界にもいるんだなぁ



因みにポッポ村の子供達も猫狂い予備軍である。



「ざっくりいうと、俺達は獣人の里を魔族から守るために来たです」

「魔族? マツモト君その話本当?」

「まあ、一応本当です、突拍子もない話ですけど」

「魔族ね…」


考え込むプリモハ。

先程までとは異なり真剣な顔をしている。



あれ? 笑われるかと思ったけど思ってた反応と違うな?



「マツモト君、さっき僕達って言ってたわよね? 仲間の人達は何人いるの?」

「バトーさんとゴードンさんの2人ですね」

「2人だけ!? 本当に魔族が襲って来るとしたらそれじゃ足りないわ。

 いいマツモト君、詳しくは言えないけど、ここ1年の間に襲われて壊滅した村が幾つかあるの。

 犯人は分かっていないけど、私は魔族じゃないかと考えてるわ。

 本当に魔族だとしたら数人じゃ何も出来ない、Sランク冒険者や軍の人とかを沢山

を呼ばないと…」

「その話なら知ってます、襲ったのは魔族で間違いないですよ。

 俺達の村も襲われましたので」

「ちょっと待って、襲われたっていつの話? 貴方達生き残ったの?」

「4~5ヶ月位前ですかね? 全員無事です、レム様が助けてくれましたから」

「レム様!? 光の精霊のレム様? 光魔法が復活したの?」



この人、いろいろ知ってるっぽいな

ネネ様の遺物も何か関係しているってことか



「復活しましたよ、俺も習得しています、ほら」

「うわ、眩しい…」


少しだけ光らせる松本。


「バトーさんが神官クラスなので獣人達に広めて、なんとか里を守る予定です。

 光筋教団と王都にも既に連絡済みです」

「そう、私が知らない間にいろいろ状況が変化したのね…私達も急がないと」

「プリモハさんは何故ネネ様の遺物を探しているんですか?」

「あ~それは獣人の方達を含めて話した方がいいと思う、

 魔族が関係しているなら急がないといけないから」

「お、いたいた、おーいマツモトー」

「マツモトさーん!」


バトーとカテリアが迎えにやって来た。


「いないと思ったら掴まってたのか、いったい何したんだマツモト?」

「いや~オババ様に夢中になってしまって、気が付いたらここに…」

「オババ様に張り付いてたんですか、どおりで広場で見かけないわけですね~」

「マツモト君、その人達がバトーさん?」

「えぇ、こっちがバトーさん、こっちがカテリアさんです」

「マツモト、その人を紹介してくれないか?」

「この人はプリモハさんです、ネネ様に関する記録とか遺物を探しているそうです」

「初めましてプリモハです、お二人共よろしくお願いします」


檻の中で丁寧に頭を下げるプリモハ。


「悪い人ではなさそうですね」

「そうみたいだな」

「大体の経緯はマツモト君から伺いました、

 出来れば私達の目的を獣人族の方達にも聞いて頂きたいのですか…」

「う~ん、どうするかは獣人族のカテリアさんに任せるよ」

「悪い人ではなさそうですし…長老に聞いて貰った方がよさそうですねぇ」

「それじゃ決まりだな」 


松本とプリモハが釈放された。


「っは、シャバの空気はうめぇなぁ」

「シャバって何ですかマツモトさん?」

「あ、すみません、気にしないで下さい。一度言ってみたかっただけなので…」

「それじゃ行きましょうか、プリモハさん」

「よろしくお願いします」


檻を出て長老の元に向かう4人。


「お~い、カテリア姉ちゃん~」

「マツモト殿は見つかったのであるか~?」


広場の方からマルメロとニャリモヤの声が聞こえて来た。


「見つかったわよ~檻の中にいたわ~」

「掴まってたんだ…何したんだろ?」

「マツモト殿であれば何も不思議ではないのである」

「っは!? あれは!? イヤッホーウ!」


手を振るカテリアの横を尋常ではない動きのプリモハが通り抜けた。


「この人さっきの…」

「う~む…マツモト殿と同じタイプの人間である…」

「むふふふふふ…」


ニャリモヤにめり込み顔を埋めるプリモハ。


「その女性はプリモハさんだそうだ」

「ニャリ族が好きらしくて…」

「まぁ悪い人ではなさそうだから、大丈夫よ…」


プリモハはニャリモヤに張り付いたまま長老の元に向かった。


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