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101話目【マッシュバット】

ポッポ村出発し15日後の松本達は変わらず森を歩いていた。

昼を過ぎたころ、明るかった森が暗くなり、気温も下がって来た。


「マズイな、こりゃひと雨きそうだ、バトー今日は早めに切り上げようぜ」


ゴードンに声を掛けられたバトーは、立ち止まり木々の間から空を見上げる。


「…そうだな、皆酷い雨になりそうだ、雨避けの出来そうな場所を探してくれ」

『 はいー 』




マルメロがカテリアとニャリモヤに洞窟を見せている。


「カテリア姉ちゃん、ニャリモヤ、どう思う?」

「屋根もあるし、地面より高くなってるから雨が降っても流れてこなさそうね」

「全員が寝るだけの広さもある、良いと思うのである」

「「「 お~い! 」」」 


獣人達に呼ばれて松本、バトー、ゴードンがやって来た。


「岩の天井もあるし、焚火も出来そうだ、いい場所だな」

「奥は洞窟ですか…」

「ここにしよう、奥の洞窟は俺とゴードンで調査してくる。

 マツモト達は濡れない内に薪を集めておいてくれ」

「「「「 はいー 」」」」


牧を拾いに行く松本と獣人達。


「それじゃ行くかバトー」

「松明あるかゴードン?」

「ねぇ、少しだから火魔法でもいけるだろ」

「そうだな」


剣を持たバトーとゴードンは洞窟へと入って行った。

松本達が洞窟に戻って暫くすると雨が降り出した。

洞窟の入り口には枯れ枝が積まれ、横にキノコも積まれていた。

松本の身を挺した調査により、食べても問題ないキノコである。


「降り出しましたねぇ~」

「そうであるなぁ~」

「酷くなりそうですねぇ~」

「そうであるなぁ~、はうっ、そこそこ、マツモト殿そこであるぅ~」

「ほ~れほれ~」

「あぁ~効くのであるぅ~」


松本に櫛を入れられたニャリモヤがノビノビになっていた。

耳の後ろ、喉、尻尾の付け根に櫛を入れ、ゴリゴリするとニャリモヤが悶える。


「随分気持ちよさそうねニャリモヤ」

「そんなにゴロゴロ言っちゃって、そんなに気持ちいいの?」

「マツモト殿が的確にポイントを付いて来るのである、

 普段は爪で掻いているのだが、この櫛は広範囲で掻くので気持ちいいのであるぅ~」

「ほ~れほ~れ」

「あぁ~効くのであるぅ~」


ゴロゴロ言うニャリモヤ。

使っている櫛は松本の手作である。

15センチ位の木の板に細かい切れ込みを入れ、

怪我をしないように角を落としコーティングした逸品。

いわゆる、猫のノミ取り櫛である。


「ふぅ、一杯取れましたよ」

「マツモト殿、毎日かたじけない」

「いえいえ、趣味でやってますので」


櫛に挟まる大量の毛、目的はノミではなく抜ける夏毛。

冬毛に生え変り、ニャリモヤの夏毛が大量に抜けるので、松本が毎日櫛で処理していた。



「少し早いですが、食事の準備をしましょう。

 俺は焚火を用意しますのでカテリアさんは食材を切ってください。

 野菜とキノコのスープにしまます」

「はーい!」


櫛から外した抜け毛を丸め、組んだ枝の中に置き魔法で火を付ける松本。

ニャリモヤの抜け毛は焚火の着火剤として活用されていた。


松本のナイフで人参とキャベツを切るカテリア、

獣人達がポッポ村で貰った野菜なのだが、持ち帰る前に痛むということで

旅の間の食料になっていた。

一緒に貰ったパンは早々に食べられたが、日持ちする芋は手付かずで持ち帰り種芋にする予定である。



「お、早めの飯か、その方かいいかもな」

「今日の飯はなんだマツモト?」


お湯を沸かしているとゴードンとバトーが戻って来た。


「今日はキノコと野菜のスープです…あのそれはいったい?」

「「 ん? 」」


バトーとゴードンの後ろを指差す松本、獣人達は目を丸くしている。

2人の後ろの洞窟の闇に丸い目が2つ浮いている。


「なんだお前、付いてきたのか」


ゴードンが炎魔法で照らすと黒い体が浮かび上がった。

50センチ程度の体が天井からぶら下がっている。



大きいコウモリだな…

ゴードンの様子を見るに安全な魔物なのだろう



「これは洞窟によく住んでる魔物だ、基本的に襲って来たりはしないから安心してく…れ…」


バトーが説明していると、コウモリが地面に降り2足歩行でカテリアの方に歩いていく。

一同の目がコウモリを追う。

カテリアに目を合わせないように進行方向から顔を逸らせ、及び腰でトコトコ近寄るコウモリ。

コソーっと両手を伸ばし、カテリアの前に転がるキノコに取ろうとするが

見えていないので両手が空を切っている。

カテリアが指でキノコを押すと、コウモリの手が届き、

キノコを両手で抱え、ゴードンの後ろの洞窟に走って戻って行った。。

一部始終を全員に見られていたが、特に気にしないらしく、暗闇の中でキノコを頬張っている。


「…まぁ、こんな感じで特に害のない奴だ。

 マッシュバットって名前のキノコが好きなコウモリだ」

「…もう少し分けてあげます?」

「まぁ…そうだな」


マッシュバットの足元に転がる3個のキノコ。

カテリアによって分け与えられた。



沸騰したお湯にスープの素、人参、キャベツ、キノコを入れば簡単スープの完成。

火の通り難い人参から先に入れることがポイントです。

スープとフランスパンを受け取り早めの夕食を取る一同。


「寒い時に飲むスープってほっとするわぁ~幸せ~」

「3日前も同じこと言ってたよカテリア姉ちゃん」

「その前も言ってたのである」

「美味しいからいいの! そんなこというなら帰ってからスープ分けて上げないわよ!」

「皆のお金で買ったスープの素なのにズルいよ、カテリア姉ちゃん!」

「独り占めは良くなのである」


この旅の間、野菜のスープは結構よく食べているのだが、毎回好評である。


「そういえば、洞窟の直ぐ奥に焚火の跡があった、

 俺達以外にもこの周辺に誰がいるかもしれないな」

「バトーさん、それは多分、僕達の里の近くに来る人間だと思います。

 最近よく現れて困ってるんです、見つからないように隠れないといけないし、

 食べ物とられちゃうので」

「この辺に村なんて無い筈なんだがな、何処からきてるんだ?」


マルメロの言葉で考え込むバトー。


「その人達って何しに来てるんですか?」

「さぁ? よく分かりません、特に魚取りに来てる感じでもないので」

「食べ物がなくなった時に魚とか木の実とか取ってる感じで、乱獲してる訳じゃないんです」

「何か探している感じがするのである、同じ人間達が森の中をうろついて、暫くすると帰って行くのである。

 まだ暫くすると戻って来て同じようにうろついているのである。

 少しずつ里に近寄っているから皆警戒しているのである」



1度帰って、また戻って来るか…なんだろうな? 確か目的が分からない

ニャリモヤの言うとおり何か探しているのだろうか?

獣人の里を探しているとか?



「マツモト殿」


頭を捻る松本にニャリモヤが声を掛けた。

よく見ると全員の視線が松本に集まっている。


「え? どうしたんですか皆さん?」

「いや、どうしたっていうかよ…それなんだが」


ゴードンが松本の横を指さしている、

松本が視線を落とすと及び腰のマッシュバットが目を逸らし、パンの前で両手を動かしていた。



マッシュバット…

お前パン食べたいんか…



松本が指でパンを押す、パンを掴んだマッシュバっトは洞窟に走って行った。

土砂降りの森、洞窟の暗闇の中にパンを頬張る2つの目が浮かんでいた。


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