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4話 示談の行方

 おれは昨日から行っている習慣によって、リョウシンと関わらないために、自分で食事を済ます。

昨日の余りが有ったので、それを食した。

置き手紙に一言朝食を済ました旨を書き、テーブルに置く。


毎度面倒なので、これからは早出する事を追記しておいた。これでもう次からは書かない。


 さて、早く学校へ行くのもどうかと思うが、今日はそのまま登校するとしよう。

そのまま登校したところで叔父さんと鉢合わになった。


「おお透早いな」


「叔父さんこそ」


職員室の傍へ一緒に向かい談話室へと行く。

すると意外にも阿多谷がいた。いじめの張本人でこの学校を牛耳ってる奴だ。


「意外だ。素直に従うと思ってなかったよ」


「従う? (やま)しいことなんて何もないからね。透君の勘違いを更正しに来ただけさ」


「俺の名前はトブネズミじゃなかったけ? 毒災者君。いつもみたいにしたらどうさ? 学校を牛耳ってるんだからさ、第三者が一人増えたくらいじゃ怖くはないだろ? 」


一瞬顔を歪ませたが直ぐに戻った。流石に第三者の前では派手なことは出来ないか。


「言っている意味がまるでわからないよ。まぁいいさ。わざわざ立ち話なんかせずに、向こうで座ろうじゃないか」


 談話室へ入り。椅子に座る。

独裁者の阿多谷を従わせた内容証明の内容は以下のものだ。


拝啓 阿多谷金広殿


ご託を並べる積もりはない。

お前がこの手紙を圧力で揉み消そうとしなくてとも、明日学校に来ない時点で裁判を起こす。

いじめの証拠は揃っている。言い逃れは出来ない。

学校へ来る来ないは自由だが、その場合は尻尾を巻いて逃げているとしておこう。

そうなれば、大いに面白い。そんな事をするのは、お前が不利になることはわかるだろう。

だから心優しい俺から示談の提案だ。明日父と共に学校へ来い。


 内容は脅迫紛いのものであったが、当人の日頃の行いを考えればまだ優しい方である。

しかしこうして素直に学校へ来たことは感心だ。ある点を除けば。


「阿多谷。父は来ないのか? 」


「父様を気安く呼ばないで欲しい。父様は来ないよ」


「内容証明の手紙は見せなかったのか? 」


「見せる迄もないよ。だだのデタラメなんだからさ」


きりがない。俺は証拠の一つを見せる。


「これでもその減らず口は治らないのか? 」


「だから言ったじゃないか【デタラメ】だって」


「お前の目は節穴なのか?それとも受け入れられない現実に目を背いているのか? 」


「僕はいたって、正常だよ。君こそ、鈍いね」

「何が言いたい? 」


「僕を誰だと思っているの?学校の支配者だよ。ここでは僕が法で、秩序なんだよ。よくもぬけぬけと来れたものだね。もうここへから出させないよ」


「あっそ」


「何で驚かない。閉じ込められているんだぞ? 」


「それで?お前も律儀にいるのか?このまま」


「ああいるよ」


「お前御曹司だろ?帰らなかったら面倒な事になるだろ。そもそもだ。昨日のお前がご挨拶してくれたときに取られたあのスマホな?触れた後正しい手順で対処しないと、半日後程に下痢引き起こす薬塗ってあるから。缶詰は止めた方がいいぞ。ランチで………ってことになりかねないぞ。」


「は! ? 本当か! ? 」


「嘘」


「……っち。そんなふざけた態度もすぐに出来なくなる。僕がただここに閉じ込めるわけないないだろ?安心しろ。すぐに終わるさ」


そういうとトイレの時の取り巻きの二人がロッカーから現れた。


「それが平然と要られる理由か? 阿多谷」


「そうだよ。世の中金と暴力だよ」


「言っちゃ悪いが、入った時からいるの気付いていたぞ。お前の趣味か何だか知らないが、そいつら鼻息荒くしてたし、どんだけ長くロッカーで待たせてるんだよ。したり顔してるが、間抜けで呆れすぎて、ため息もでない」


「よっぽどトイレの続きがしたいんだね? 」


「ああ帰らせてくれるんだな」


「勝手な解釈するな! 」


ふざけた対応に阿多谷は苛立ちを見せる。


「その減らず口もすぐに出来なくなる」


そういうと取り巻きの二人がこちらへ近づいていく。

大人顔負けの巨漢であるため、伯父は頼れない。と言うか、結構ヤバい顔してる。

ああ本当はもっと弄んで見たかったが、仕方ない。


「阿多谷よ。今迄の事を無かった事には出来ないぞ」


「えっ?父さんなぜ? 」


既に複数ある端末の1つに阿多谷の父につないでいた。


「事情は透君に聞いている」


「そんな嘘だ」


「現実だ。現に今電話越しではあるが、喋っているだろう」


「父様僕は何も悪いことなんてやってませんよ。ただわかってもらおうとしただけで」


「今迄の事は勿論の事、証拠のものを幾つか透君に見せてもらったよ」


「そんなことできるはずがありません」


「悪魔で信じないか金元。ここでの行いで釈明の余地が無いことがわかった。往生際が悪いぞ」


「……はい」


「透君本当に申し訳ないことをした」


「誠意は金額で示してください」


「そのつもりだよ」


「では、今日中に5000万円支給してください」


 伯父はばつの悪い表情をしていた。純粋に裁判をすれば4000万の予定だったからだろう。

相手が断り次の裁判で額を下げたら、舐められるのは容易に想像できる。

しかし相手が譲歩すると言うのだ出来るだけぶん取るに越したことはない。


伯父だって金が増えて困ることはないだろう。

その為の手数料であーだこーだ言われては話が進まない。

悪いが賭けに付き合ってもらう。


「わかった。5000万円支払おう」


「口約束では納得いきません。せめて小切手等は貰わないと」


「勿論誤魔化すつもりはない。丁度もう君の口座に入れてある」


まさかと思いながらも、端末の口座情報を確認する。

「! ? 」本当に金持ちというのはすごいな。


「確認しました。それでは、今後このようなことがないように、阿多谷の奴にはしっかりと教育してください。そして送信した契約書のデータを印刷し、サインと実印で押印し、父の事務所へお送り下さい。期限は明後日迄とします。尚、期限が守られなかった場合、裁判は通常通りに行います」


「すぐに手続きを行う」


「待って下さい父様。もう示談は終わっています。こんな奴の言うことなんて聞く必要はありません」


「阿多谷、少し黙っていてくれ」


「え」


「正直に言おう。まさかお前がこんなことをしていたとは今でも信じられない。上に立つ者として、お金の扱いを熟知しておいたほうが良いということで、ある程度放任にさせてきたが、この件で、考え直さなくてはならなくなった。そしてお前は透君を可笑しいことをしていると言うが、何も間違えていないぞ。お前がまたいじめを行わないとも限らない。わかったな? 」


「……はい」


阿多谷の親の対応が予想以上に大人で困惑している。

大富豪の社長なのだからだろうか? てっきり甘やかされて育っているかと思っていた。

いずれにしろ、阿多谷が叱られている姿を見てて、不快にはならない。

当然の報いなのだ。何をされても可笑しくないことをしたのだから。

 貰うものは貰ったので、事務的に話を終わらす。


「では、話し合いはここで終了します」


待合室を出る途端に意気揚々とした伯父が話しかける。


「なぁ、今日は寿司食おうぜ寿司。回らない奴な。口座に早く行こうぜ」


時間は昼頃本来なら給食を食べる所だ。


「金が手に入って早々節操がないな」


「いいだろ。たんまり貰えたんだし。あっ夕飯も良いとこにしよう」


「百歩譲って、昼食ならまだしも、夕飯も食べに言ったらアイツらと面倒な事になる。一人で行けばいいだろ」


「そうつれねぇこと言うなよ」


「あいつらにどう言えって言うんだ」


「もしもし透のお母さん。俺だけど、今日は透に飯食わせるから夕飯無しでよろしく。うん。それじゃあまた」


 この男、ハハと仲が良いことをいいことに、外堀を埋めてきた。仲が良いのはチチの愚痴仲間という具合だ。


「これでよしだ」


「何がだ。俺は許可していないぞ」


「まぁまぁ家で食べるのと外食するのどっちがいいか明白だろ? 」


「はぁ、わかったよ」


 まぁ息抜きも必要か。そう自分を納得させると、伯父の車に乗る。

しかし、5000万か。慰謝料の一割報酬として払うにしても、4500万。

厳密には今日の食事代で多少ずれるだろう。


だとしても、当分不自由なく暮らせる額。

オヤ元を離れるには充分な額だ。だが、こんなものバレれば、とても面倒な事になる。

この大金は何としても自分だけの物にしないといけない。


 とにかく次は、オヤ元を離れるストーリーをしっかりと組み立てておかないといけない。

それにも、伯父に協力してもらう事になっている。

オヤという足枷から離れるには、新たな寄生先(保護者)を作らなければいけない。


この国の煩わしい所だ。そして新たな保護者は伯父が一番都合がいい。

放任主義な所がやりやすい。まぁそもそも他にあてがあまりない。

貴重な隠れ蓑だ。成人になるまでは世話になってもらう。


 車を運転して、お金をおろしてから、伯父の言っていた寿司屋に到着した。

中学生に高い店の馴染みなど無いため初めて行く場所だ。

中学生が高いお店を知る由もない。


 店に入ると、テレビでしか見たことのない寿司屋の室内だった。伯父め、相当ぼったくるな。


「大将マグロと後新鮮なのお任せでくれ」


「はいよ」


如何にも常連客の口振りで、注文した。


「伯父ここには良く来るの」


「ああ仕事を終えたらな」


「じゃあ、あまり来てないな」


「人を働いていないと決めつけるのは止しなさい」


「はは、冗談だよ」


 下らないやりとりの後、注文されたものを食べる。

あっこれ旨いな。中学生で食べるものでは、無いので、少し衝撃だった。

俺の顔を見て、何も言わずに、「そうだろそうだろ」と訴えてきた。

少しイラッとした。出された寿司を全て食べた後お茶で箸休めした。


「美味しいかった」


「なっ。たまにはこういうのもいいだろ? 」


「……ああたまにはね。毎日来たら破産する」


「そりゃあな」


「……叔父さんが…………こんな店知ってる……………なんて………………思っ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」


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