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灯らない想い   作者: ころころのこころ
8/16

8.私、苦手なこともあるので

 町に入り、詰所の前に着くと扉が開かれた。

 先に降りた護衛のメイファに手を取られ、馬車を降りる。

 続いて、奥様が降りて来られる。


 ここからは陸上移動になる。

 飛行馬車を町中で降ろすには危ないので、一旦、町の入り口にある詰所に設けられた空き地に降ろされる。


 詰所から勤務中の班の隊長と数人の隊員が出てくるのが見えた。


「ようこそおいでくださいました。ペイリッシュ伯夫人。あちらに馬車の支度が整っております。」


 屋敷からの連絡を受け、馬車の手配を終えた隊長は満面の笑みを浮かべていた。


「ありがとう。マイヤー隊長、急で悪いのだけど、馬車をもう一台、用意できるかしら?」


「構いませんが、少々お時間を頂きます。よろしいですか?」

「ええ、構わないわ」

「畏まりました。では、整うまで詰所の客室にて、お待ち頂けますか?」


「そうね、行く先が違うから、私は先に出たいわ。後の馬車には、侍女と護衛の二人が乗るから、客室にはこの二人を連れて行って」


「畏まりました。では、ペイリッシュ伯夫人はこちらへ。そちらのお二人は後ほど、ご案内致します」


 マイヤー隊長は右手で行き先を指し示し、歩き始めた。

 空き地を渡り、詰所の建物へと入ると、通路から天井まで彩られた中廊下が真っ直ぐに伸びている。

 浮遊の館の方々を招く為の廊下はいつも綺麗に整っている。初めて見たときはその綺麗さに圧倒され、足が動かなかった。慣れとは、凄いもので、今ではいつまでも劣化しない彩りに感心しながら、平然と歩いている。

 中廊下に描かれているのは、浮遊の館の物語。

 領内の民には馴染みのある語り唄とほぼ同じ内容の絵物語が空き地側から始まり、詰所へ向けて続いていく。


 中廊下を歩く時、真ん中を歩いてはいけない。

 初めて旦那様に同行した時、強く教えられたのが、町へ入る際に通る中廊下での歩く位置だった。

 浮遊の館の主人一家以外、歩いてはいけない。

 理由は教えられていないし、聞く必要のないもの。昔から続く慣習に否を告げることはおいそれと出来ることではない。マイヤー隊長も護衛の二人もその他の詰所の隊員も、勿論、私も、廊下の端側を歩いている。

唯一人、奥様だけが廊下の中央を歩かれている。


 石畳の廊下を音も立てずに歩く奥様に対し、軽装備の擦れる音を立てて歩くマイヤー隊長は、ひたすら前を見て、奥様と変わらない速さで歩いている。

 前を歩きながら、後方の方の歩調に合わせるなんて、不思議でしかない。

 リアンさんも、そういうことに長けている。


 今度、コツを聞いてみようかしら。

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