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120キロ女子異世界奮闘記  作者: 丸腰ペンギン
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遭遇2 ジャック視点

第二王子のジャックは朝から不機嫌だった。


理由は明白。昨日の召喚された人間にがっかりしてたからだ。皆が各々の部屋に戻った時に、兄を捕まえて愚痴を言いだした。


「あの召喚されてきたやつ、すげー太ってたな。あれって男?女?」

「口を慎まないか、ジャック。」


口の悪い弟に、ウィルはため息をついた。


「だって俺はどんな奴が来るかと思ってワクワクしてたんだよ!屈強な男とか、絶世の美女とか!あとは全身金色とか!それなのに期待外れだぜ」

「勝手に期待して、勝手にがっかりしたのはお前だろ」

「兄貴だって少しは期待しただろ。『精霊に祝福されし者』が別世界から来るって言われたら。特別感半端ないだろ?」

「……とにかくもう遅いから。早くジャックも寝る様に」


そのまま強制的に会話をシャットダウンされてしまったので、ジャックの気持ちはそのまま燻ってしまい、あまり寝付けずに朝を迎えたのだった。


確かに勝手に期待した俺が悪いのは認めるけど、あんなに太ってるのはおかしいだろうが!今まで食っちゃ寝食っちゃ寝してグータラ生きてたんだろう。

兄貴だって絶対絶対期待してたはずだ。


ムカムカした勢いで、いつもより早く騎士団のランニングコースにやって来てしまった。

花園の扉に手をかけて開くと、目の前を人影が横切った。


あれ?もう誰か走ってんのか?


ジャックは走り去った人物に目を向ける。後ろ姿だが、見覚えのある体型に気づいた。

一晩中自分をイラつかせていた人物、細川ミナトだ。


なんだアイツ……ダイエットでもしてんのかよ。……抜かしてやる!


ハッと鼻で笑ってジャックはミナトを追いかけた。

ようやく姿を捉えたと思ったら、ミナトが走るたびに肉が揺れてジャックの神経を逆撫でする。


こいつホントデブだな……!膝壊れんじゃねぇの?


忌々しそうに揺れる肉を見ながら、その後ろを黙ってついて行く。


目の前を走られるのもウザいし、軽々と抜かしてやるぜ!


ジャックは走る速度を上げる。

しかし、しばらくして違和感を感じた。

距離が縮まらないのだ。


……アイツ……どうなってんだ⁈早いっ……

くっ!


ジャックはもっとスピードを上げてミナトを抜こうとしたが、ミナトもラストスパートなのか、凄い勢いで加速する。

本気で走っているのに抜かせない。むしろジャックとミナトの距離がどんどん広がっている。


なん……なんだ……⁈

あのペースで走りつづけるつもりかよ!


とうとうミナトの背中も小さくなり、追いつけないと悟ったジャックは、立ち止まってしまった。


「……はぁっ、はぁっ……変なデブだな」


ポツリと呟いた声は爽やかな朝の空気に溶け込んでいった。

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