紹介
そして今に至る。
ミナトは話しかけてくる人物に失礼がないよう、慌てて立ち上がった。
「私はこの国の国王オリバー・ヴァーラントだ」
「……細川ミナト……です」
「ホソカワ?変わった名前だな」
「あっミナトが名前になります」
ミナトは煌びやかな格好をしている人物をチラリと見る。
そして相手の綺麗な格好と自分の現状を比べて恥ずかしく思った。
国王様⁈
なんで国の一番偉い人が?
それより私ジャージで、汗臭くて、髪もボサボサな姿だし……
羞恥心に苦しんでる中、他の影が何人かこちらに近づいて来たので、光に照らされたその姿を見ることが出来た。
その人物達の美貌に息を飲む。
「ミナトさん、私は女王のシャルル・ヴァーラントです」
シャルル・ヴァーラントと名乗り出た女王様は、空の様な水色の大きな眼に、銀色のまつ毛が縁取っている。鼻もスッと高く、品のある口は薔薇色をしていた。艶やかな銀色の髪を綺麗に編んで左肩に流している。いくつなのか分からないが、若く品のある美人だった。
「初めまして。僕は第一王子ウィル・ヴァーラントと申します」
第一王子と名乗ったウィル・ヴァーラントは、女王と同じ艶やかな銀色の髪に、紫色のの眼をしていた。まつ毛の長いハッキリした二重はやや下がり気味で、男性なのに色気がある。甘いマスクに穏やかそうな笑みを浮かべている。
声も爽やかで、物語に出て来る王子様みたいだ。二十歳超えてるっぽい?私より少し年上に見える。
「第二王子、ジャック・ヴァーラント」
第二王子は国王と同じ金色の髪に、少し吊り上がった水色の眼をしている。鼻も高く、第一王子とは違った魅力のある男性だった。何か不服なのか、形の良い口をへの字に曲げている。
なんか物凄く不貞腐れてるけど……同い年くらいかな?年上から好かれそうな感じ……。
「私は第一王女のシエル・ヴァーラント……です」
第一王女の金髪と水色の眼は、国王と第二王子と同じ色をしていた。ふわふわした金髪の髪をハーフアップにして額を出している。顔立ちが母親に良く似ているが、幼く、身長もミナトのお臍位だった。
命が宿ったビスクドールみたい。こんな綺麗な可愛い子、初めて見た。
……ていうか、みんな美男美女過ぎて……。異世界の人間ってみんな美形なの?そもそも突然ここに呼び出されて、こんなボサボサな格好のまま、高貴な方々に囲まれて……。
居た堪れない!
「異世界のやつはみんなデブなのか?それともあんたが規格外なのか?」
第二王子のジャックが、ぶっきらぼうに聞いてきた。遠慮なくズケズケと言うタイプらしい。
言い方にムカついたが、状況がまだ分からない為、ミナトは大人しく答えた。
「あ、いえ、私は太っていますが、他の方は普通体型の方が多いです。」
「ふぅん」
「ジャック、失礼だろう」
「気になったんだよ、別にいいだろ」
第一王子のウィルは、ジャックの肩を掴んで諌めていた。ジャックはもう興味がないのか、腕を組んでそっぽ向いている。
ウィル様は優しい人っぽい……。
というか、さっきモンスターって言ったの絶対第二王子だな……。様付けなんか絶対してやるもんか。心の中ではジャックって呼び捨てだ!
「国王様、ミナト様は転移して疲れていると思われます。諸々の事は明日にしてはいかがでしょう?」
少し離れた場所にいるローブをまとった人物が国王に声をかける。
「そうだな。もう夜も更けているしそうしよう。ミナト、部屋を用意してあるから、とりあえずはそこで休んでおくれ。場所はメイドに聞くと良い。この部屋を出た所で待機させている」
「あ、ありがとうこざいます……」
「色々聞きたいこともあると思うが、とりあえずは明日以降にな」
「はい」
助け船を出してくれた人、ありがとうございます。本当に立っているのがやっとだったんです!
ミナトは声をかけてくれた人に向かってお辞儀をした。ローブを着た人は3人いたが、ローブを深く被っていたせいで、どんな人物か良く見えなかった。
国王が出口に向かって歩き出したので、皆それに習って歩き出す。
王女のシエルが顔だけ振り返って、こちらを見て歩いていた。
しかし、ミナトは右隣から猛烈な視線を感じていたので、チラリと横目で確認した。
そこにはこちらをガン見している背の高い男がいた。
緑の眼で射殺さんばかりにこちらを見ている。右目に古い傷跡があり、焦茶色の髪を後ろに撫でつけ、少し崩れたオールバックのような髪型をしていた。
鋭い眼光の眼は切長で、スッと通った鼻筋、引き締まった口元、シャープな顎から首へのラインが雄々しい。彼も整った顔立ちをしている美青年だった。
何?めっちゃ圧かけてきて怖いんですけど……!この人だけ剣持ってるし!異世界の人間だから怪しまれてるの⁈
若干ミナトは青ざめたが、その光景を見ていたウィルが話しかけてきた。
「彼はこの国で一番の強さを誇る、王国騎士団の団長だよ。とても頼りになる」
「エドガー・クロフォードと申します。。何かあれば言ってください」
「は、はい。ありがとうこざいます」
そう言いながらもまだ睨んでくるのは何故なんでしょうか?何か言ったら斬り殺さるんでしょうか……⁈
でも、もうすぐ部屋で休めるみたいだし、見ないふり、見ないふり……