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120キロ女子異世界奮闘記  作者: 丸腰ペンギン
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突然

細川ミナト緑や山が多く、空気の綺麗な田舎に住んでいた。

家の近くには森があり、空手道場を開いている父親、病弱な母親、生意気な弟、マタギの祖父の5人で暮らしていた。森はミナトの遊び場で、17歳になった今でもほぼ毎日森に入っては自然と戯れていた。


ミナトは赤ん坊の頃からとても太っていて、男の子からいつもからかわれていた。食べる量もどちらかといえば少食な上に、毎日父親の厳しい稽古をこなしても何故か痩せることはなく、120キロになってしまったのだ。他の運動もしてみようと、高校に入って剣道部に入部したが結果は同じだった。



事が起こった当日。

いつもの空手の朝練が終わって、ジャージのまま森に入ったミナトは川の近くで休んでいた。

川に手を入れ、冷たい水に癒されながら、水に映る自分を見ていた。

黒髪で少し長めのショートヘアに焦げ茶色の目。風船の様に丸い輪郭……


う……下を向いてると尚更顔の肉がやばい……

川に映る顔がやばい。何で痩せないのかなぁ?もう一生このままの体型で暮らして行くしかないのか……。オシャレとかしてみたかったなぁ。


ふぅ、とため息をついた後、顔を洗おうと水面に顔を近づけた。


『見つけた』


突然水面が揺らぎ、腕を引っ張られる。バシャッと大きな音を立ててそのまま川に落ちてしまった。

慌てて這い上がろうとしたが、何故か浮上できない。しかも水の中にいるはずなのに、衣服がまとわりつく感じもなく、呼吸も苦しくない。


『驚かせてすみません』


鈴のような声が聞こえて、目の前に白い布をまとった青い目の美女が現れた。緩やかなウェーブを描いた艶やかな水色の髪の毛は足元まで伸びている。綺麗な人、と言うのは分かるけれども、発光していてあまり表情は見えなかった。


『貴方と話がしたかったので、引き摺り込んでしまいました』

「………」

『ここは水の中ではありません。私の作り出した異空間なのです。声も出せますので安心してください』

「……どなたですか?」

『魂を管理する神、サフィアです』

「神、様?」


神様?ほんとに?めっちゃ綺麗な人…あ、夢かな?水の中で呼吸もしてるし。朝練の後寝ちゃったんだろうな。このまま寝続けたら遅刻しちゃうかもしれない。


『……どこから話せば良いものか……』

「夢の中の神様。そろそろ学校へ行く時間なので、出来れば手短にお願いします」

『貴方はもう学校へは行かなくて良いのです』

「え?」

『というより、貴方の居場所はここではないのです。本来は異世界の人間なので』

「あ、そういう夢の設定?」

『予期せぬ出来事があって、貴方の魂はこちらの世界に流されてしまったのです』


いくら自分の夢とはいえ、どんだけ現実逃避したかったんだろう……このまま目が醒める気配もないし、話に乗ってみようかな。


「もしかして異世界に連れ戻しに来たんですか?」

『はい。貴方がこちらに産まれてしまった事で、あちらの世界に捻れが生じて災害が増えています。このままではこちらの世界にも影響を及ぼすかと』

「…私が異世界の人間だとしても、今更そんなとこに連れて行かれたら、こちらの家族は捜索やら警察やら大騒動になってしまいますよ」

『もちろん混乱を防ぐために家族、関わりのあった者、全てに記憶の改ざんをさせてもらいます。歪みを戻す為に』


洗脳するのか……随分物騒な夢だなぁ。


サフィアが上を見上げたので、ミナトもつられて見上げる。すると水面から強い光が降りて来ていた。


『時間が無いのです。私もこちらに留まっている時間が限られています』

「そろそろ起きる時間って事ですか?」

『これは夢ではありません』

「え?」

『貴方には本当に申し訳ないと思っています。ですが、貴方がこちらにいることでどちらの世界にも災害が降り注いでしまうのです』

「夢ですよね?夢なら覚めて……!」

『幸運を祈っています』

「ちょっと待ってくだ……!!」


言い終わらないうちに目の前が白い膜で覆われた。

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