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五十三 ユリアの力です

 提督との契約を終えると、武器屋の親父さんと別れて、俺とマヤはユリアと合流する為にギルドへと向かう。

ギルドの前には人だかりが出来ていて、男どもの群れの頭の隙間から覗くとユリアがナンパされているようだった。


「何してる? ユリア、早く行くぞ」


 野太い男どもの声に紛れながらも、俺の声が届いたのかユリアはすぐに俺に気付き男どもを掻き分けて俺の側へとやってくる。

俺を睨み付けるヤツはいるが、特に自ら絡んでくることはなくて、俺達はすんなりとギルドへと入っていき、目的であったユリアの登録を済ませると、少し依頼を張り付けている掲示板を覗きに行く。

今現在、お金に困ってはいないが目的は別にあった。


 それは魔法を使えるようになれば、腕試しが必要になる。だからといって人に向けるのは気が引けるため、魔物類の討伐にはどのようなモノがあるのか知っておく必要があった。


「そう言えば、ユリアはさ、強いの?」

「もちろん。だって一応神様ですから」


 一応強いではなくて、一応神様……なんだな。ユリアの肢体をマジマジと眺めると、恥ずかしそうにクネクネと体を揺らし出す。

マヤみたいに、引き締まった体をしている訳ではなく、かといって運動が得意、という雰囲気はない。

神様だから、それでも強いのか? と、疑問に思いながらも、これ以上マヤを置いて二人でコソコソと話す訳にもいかずに、掲示板の方に目を移す。


 討伐関係の依頼は結構あるが、どれもこれも複数のグループでの募集ばかり。

単独で討伐出来るってことは、かなり力の弱い魔物なのだろう。

一通り見終わると、ふと一つの依頼に目が入る。

それは、ファインツ提督が個人で出した依頼。


──ファザーランドのファルコ・ルーデンスの情報求む──


 日付を見ると俺が初めて提督と出会った日の三日前になっていた。


 先ほどユリアに集まっていた男どもは、ギルドから出てきた俺達を待ち構えていたようで、ユリアに飲みに行かないかと複数の男が声をかけてきた。

チラチラと金と銀のオッドアイで、俺の方を見てくるユリア。

少し自慢気にドヤ顔なのが気にくわないのか、マヤが俺の腕を引っ張り帰宅しようとしていた。


 俺もここで声をかけたら、何かに負けた気がして、マヤと共に帰ることに。


「ちょっと、待ってよーー」


 ユリアはそう叫び、急ぎ後から追いかけてきたのだった。



◇◇◇



 帰宅すると、マヤに鉱石を採りに向かう事を伝え、俺はユリアと二人で話すべく俺の研究室へと向かう。


「ユリアは、魔法が使えるのか?」


 特に鍛えていそうに見えないユリアが、自分で強いと言ったのだ。

それならば、魔法を使えるのではと俺は考えた。


 ところが、ユリア曰く魔法は使えないと言い放った。

なんでも魔法自体が、神様が人間には過ぎた力だと考えているらしい。

たまに他の世界では人類が全滅するような事態になれば、魔法を与える神様もいるという。


「じゃあ、強いってのは……一体?」

「えっ? あぁ、そのままよ。そのまま。私、力強いのよ」


 そう言うと俺に近づき、ニッコリ微笑むと俺の顎に人差し指を当てる。

俺は奇妙な浮遊感を覚えてゾッとした。

指一本で、俺の体を浮かすのだから……。


「はは……す、凄いのは分かったから降ろしてくれない?」

「さっきは、置いていこうとしたよねぇ。あと、口説かれていたのに嫉妬一つないしさぁ」


 更に高く俺を持ち上げるユリアは、不満そうに口を尖らしながらチラチラと俺の返事を待つ。


「あー、置いていこうとしたのは悪かった」

「それだけぇー?」


 まだまだ不満のようで、却って俺の体が少し持ち上がる。


「アト嫉妬モシタシタ、シマシタ」

「嘘っぽいなぁー?」


 まだ不満げな顔をしているがユリアは、優しく俺を降ろすと「今度は態度で示してね」と体を刷り寄せてきた。


 まだ、心臓の鼓動が速い。俺なんかが絶対にかなう相手ではない。

下手をしたら、殺されるのも容易なのかもしれないと、改めてユリアが神様だということを思い知らされた。


 ユリアはそんな俺の心中を見抜いてか「殺生は出来ないから安心して」とニッコリ微笑んできた。


 しかし、ユリアが話をしてくれた魔法に関しては興味深く、俺に新たな疑問が生まれ出す。

少なくとも、神様ってのが魔法を快く思っていないというならば、俺達が普段使う生活魔法は何なのだろうか。


 そして、その生活魔法を神から与えられた物だと教えを説く聖マーチンス教。

だとすれば、その聖マーチンス教の言う神とは一体何なのだ?

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