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あなたはゲームの世界からきたんですか?

一限目が終わり、休憩時間が始まる。

今さっきまで授業をしていた数学の教師が、教室から立ち去ったのと同時くらいに、心也のいる席の周辺にわらわらと人が集まってきた。

お目当ては、すぐ後ろの席に座る"転校生"であろう。


ただでさえ転校生という特別な存在に加え、外国人ときたもんだ。

それに、彼女はかなり可愛い顔という部類に入るのだろう。

いや、かっこいい部類というべきか?いや、それだと女性には少し失礼にあたるのだろうか。

どっちでもいいや。とりあえず整った顔立ちをしていた。そしてあの透き通るような赤い髪だ。

スタイル含めた佇まいも、高校二年生の心也たちと比べてかなり大人びた印象が見えた。

まるでゲームのキャラクターのようだ。


誰もが興味を引く要素をこれ以上とないほど持っている。

だからこそ、後ろの席にこれだけの人が集まっているのだろう。


「イタリアのどこにいたの?」

「日本語しゃべれるの?」

「その髪の色って地毛なのー?」


背中越しに騒がしくなってくるのを感じる。

まぁどうでもいいや。ゲームのキャラクターのそっくりさんだろうが、俺には関係ない話だ。


益々と騒がしくなる後ろの席には一目もくれず、心也は静かに席を立った。

教室前方にある扉へと歩みを進める。


扉を出るとき、首だけを回し、一層騒がしくなっていた席をちらりと見てみると、

そこには、声をかけてくる生徒に笑顔を振りまき会話を弾ませているキアラの姿があった。


教室を背にしたとき、微かに「マスターってなんなのー?」という声が聞こえた。



***



教室を出た心也は、一直線にトイレへと向かう。

個室へ入り、便器に腰かけた心也は一息ついた。


心也が学校の中で一番落ち着くことができる場所だ。

誰にも介入されず、一人きりでいることの出来る世界。


一息ついた心也はキアラのことを考える。

普段であれば、あれだけ特徴的な転校生であっても興味を持つことはないであろう。

だが、しかし今回は状況がまるっきり違う。

昨夜ゲームのガチャで当てたキャラクターそっくりな人間が現れたのだ。

いや、そっくりなんて安易な言葉で表現して良いのだろうか。名前どころか容姿までゲームの中と一緒となると、もうわけがわからない。


こんな偶然が起きえるのかと考えるが、偶然でない場合は違うパターンが思い浮かぶ。

ゲームにいたキャラがなぜかこっちの世界にきてしまった、と。

ありえない話ではあるが、本当にそうであれば面白い。


まぁもしそうであろうと、なかろうとどうでもいいか。

もし実際にそんな話があれば面白いと思うが、わざわざ「あなたはゲームの世界から来たんですか?」なんて話しかけて確かめようなんて気はさらさらない。

逆異世界転生ファンタジーみたいな展開には興味が沸くが、それはアニメや漫画の世界だけにしてほしい。

極力人とは関わりたくないし、面倒なことになったら嫌だしな。


そこでふと、先ほど起きた光景を思い出す。

なぜか心也の隣で立ち止まり、なぜか心也のことを見下ろしていた転校生。


「「あなたが私のマスターね。よろしくシンヤ」」


意味がわからないな。なにか目つけられてんのかな?

だいたいマスターってなんだよ。

え、ちょっとまって。なんで名前知ってんの?

先ほどはあまりの衝撃的なシーンに呆然とするのに忙しくあまり気には留めなかったが、謎だ。

まぁ何かの間違いだろうと、左腕に着けている腕時計を見る。そろそろ次の授業がはじまる時間だ。


まぁゲームのキャラクターだろうが、マスターだろうが関係ないや。

彼女と話すことは、もうないだろう。


クラスの最底辺に位置する心也とサラブレッド転校生とでは、あまりにはランクが違いすぎる。

彼女がSSランクなら心也はCランクなのだ。


卒業するまでに一言でも会話ができたら奇跡くらいの出来事なのだ。

心也は彼女の足元に消しゴムでも落としてみようかなぁとどうでもいいことを考えながらトイレを後にした。



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