凛として咲く転校生
「シャルロット・キアラです。よろしく」
それは始業のチャイムのすぐ後、担任から転校生がいることを告げられたすぐ後の出来事であった。
転校生という言葉にクラス全体が大きく盛り上がった直後に、それは前方のドアから現れた。
赤く長い髪を靡かせ、鋭く吊り上がった目。そして、髪には猫のヘアピンをつける彼女は、教壇の前で立ち止まり、
透き通ったような声で自己紹介をした。
「は?」
うおーだのかわいーだの大きな歓声が上がる中で心也は教壇の前で背筋を伸ばして立っている、その彼女を呆然と眺めることしかできなかった。
その姿は間違いなく、昨夜「ホワイトプロジェクト」のガチャで当てた『シャルロット・キアラ』そのままだったのだ。
呆然とする中、辛うじて聞こえた担任の話によると、キアラはイタリア人であり、両親の都合により急遽日本にきたとのことであった。
いや、あなたゲームの中のキャラクターさんですよね?
次第に湧き上がっていた歓声も止み、キアラが教団の前から、こちらへ向けてゆっくり歩みを進めた。
席はなぜか空いていた俺の後ろの席らしい。
指定された席へと向かうため、どんどんキアラが近づいてくるため、思わず視線を逸らす。
すると違和感。ちらりと再びキアラのほうに顔を向けるとその違和感の正体に気づく。
なぜかキアラは俺の席のすぐ横で止まり、俺のことを睨んでいたのだ。
「は?」
情けないほどのかすれ声が漏れる。
凛々しく吊り上がった目で見下ろしてくるキアラを、見上げる形となる。
周囲もその違和感に気づいてしまったのか、だんだんざわつき始める。
その途端、キアラの口が開いた、
「あなたが私のマスターね。よろしくシンヤ」
そういうとキアラはスタスタと俺の後ろの席へと着いた。
心也はさきほどまでキアラの顔があった空間を見上げたまま、動くことができなかった。
そして、五秒ほど固まっていたあと、精一杯振り絞って声を出した。
「は?」