生徒会長と月子さんって
7日目
カオルは月子さんが、何か変だと感づいていた。そう、彼女は普通の人間じゃないような気がするのだ。
生徒会長は、そろそろそんなカオルに気づいても良さそうなものだった。
生徒会長がカオルに、気づいたかどうか尋ねたなら、すぐにでもこの変な自由研究というか実験と言うか、ゲームは終わっただろう。
しかし、生徒会長はその自由研究の“終わり”の部分がどんなものか想像ができていなかったらしい。
カオルが明確に「月子さんはロボットでしょう」と言った時に終わると思っていたため、彼女の心の中でロボット判定していても気づかなかったのだ。
少なくとも、すでにカオルは、月子さんが普通の人間ではない、と気づいているというのに。
カオルは、表面上は月子さんへの興味を示さなかった。
友人の誰に話しても取り合ってもらえない。クラス中でグルになって、カオルを騙しているとまでは思わなかったものの、何か理由があるのだろう、と思ったのだ。
しかし気になることがある。
「生徒会長と月子さんって、付き合ってるのかしら」
こればっかりは、モヤモヤしていた。
「生徒会長には彼女がいたと思うけど?」
お弁当を食べている時、カオルが小さく呟いた言葉を聞いていて、ユッコが答えた。
「あ、そうそう、3年生に彼女がいたねえ」
ヨウ子も頷いている。
「じゃあ、なんで生徒会長はよく月子さんを呼びに来るの?帰りも一緒に帰っているでしょう?」
カオルが言うと、お弁当仲間たちは下を向いて一心不乱に食べ始めた。
モグモグ・・・
モグモグ・・・
「あ、妹!」
ヨウ子が言った。
「生徒会長の名前は?」すぐにカオルが聞いた。
「えっと、高橋・・・」
すでに苗字が違うことに全員が気づいた。妹案は消えた。
そこでユッコがニッコリと微笑んでカオルに教えた。
「妹じゃないけど、親戚って言ってたような気がするよ?」
「あ~あ~あ~あ~」
お弁当仲間がみんなで首を縦に振った。
「親戚なの」
カオルが納得したのをみて、みんなはホッとして、お弁当を食べ続けた。
「ねえねえ、カオルちゃんって、生徒会長のことが好きなの?」
お弁当をいち早く食べ終わったヨウ子が面白そうに聞いてきた。
「は?」
カオルはキョトンとした顔をした。
すると、他の仲間たちがキャーキャーと騒ぎ出した。
「え~、やっぱり~?」
「そうだよね~、生徒会長、超さわ男だもんね~」
「足長いし?カッコいいし?」
「きゃー」
みんな生徒会長のファンらしい、ということがカオルにも分かった。
「うん、超さわダンだよね。でも、なんか・・・ちょっとオタクっぽくない?」
「「「えー!?」」」
カオルの意見には、全員ブーイングだった。
「ご、ごめんなさい。なんとなく、そんな雰囲気があるかなって思っただけで」
「良いの良いの。生徒会長、時々すっごく真面目な顔するから、そういうときちょっとオタク入るよね。何かに対して一生懸命なんだと思うよ?突き詰める性格?そういうのとオタクってちょっとカブるもんね」
ヨウ子が笑いながら言うと、みんなも賛成しているようだった。
「そうそう、そこがカッコいいよね!」
「頭も良いし!」
「なんでも作れちゃうし!」
あ、という顔をして、全員が固まったが、カオルは気にしなかった。
カオルの中で月子さんの認識が変わっていても、周囲にいる人たちは変わらず月子さんのことをひた隠しにしているのだった。
さわダン→爽やか男子