三人でお出かけしてお祭り
「もう! やっぱりデートになってるじゃない!」
怒ったモルティットが腕をつねってきた。
「成り行き上だからさ。ごめん。」
言い訳をして、しょうがないので抱きしめた。
「嫌。許さない。今日の夜は私だから! 覚悟して!」
モルティットが可愛く怒ってる。しょうがないなー。
そのまま手をつないで広場に向かった。苦笑しているマクレイ達は後からついてきた。今回はクルールとレミアも一緒だ。
広場についた俺達は早速ジャイアントスネークを調理する準備を始めた。
ソイル達に大きな鍋や台を作ってもらい、フィアやマクレイ達が下ごしらえする。
準備を待ちながらカレラの元へ行く。
「どうしました?」
椅子を並べていたカレラが俺に気がつき聞いてきた。
「町の外に出た時、見守ってたでしょ? だからお礼に」
少し面を食らったカレラは恥ずかしそうにして、
「フフ。隠密の偵察は得意だったんですけど、さすがですね。ベネットには秘密に…」
そう言うカレラを抱きしめる。黒髪のエルフは顔をうずめてきた。
「ありがとう」
耳元で囁くと軽い吐息が漏れた。な、なんだと!
カレラが顔を上げるのを待って唇を重ねた。お互いが求め合うと、荒い鼻息が後ろから聞こえた。
ハッと思い顔を離し、振り返るとベネットがガン見している…。
「あ! 続けてください! この広場には誰もいませんから!」
すごい無茶を言ってきた。カレラと目を合わせ苦笑すると、彼女は名残惜しそうに俺の手を取ってから手伝いに向かった。
「ほ、ほら! ベネットも手伝いしよう! 俺も行くから!」
そう言って興奮しているベネットの背中を押して手伝いに行った。
やがて町民が徐々に集まって来た。
調理中のジャイアントスネークを見て皆、驚いていた。
ダイロンもやってきて何かの準備を始めている。
広場のステージ上ではいつの間にか大道芸みたいのが始まっていた。前も思ったけど、冒険者より大道芸の人の方が珍しいでしょ? なんで、そこそこいるんだ?
いつのまにかベネットが俺の横に引っ付いていた。俺の視線に気がついたベネットが口を開いた。
「あの、こんなに大勢いると不安なので、ナオヤさんの近くなら影響も出にくいかなと思うですけど…」
「そっちの方ね。別に好きにしていいよ」
そう言うといきなりベネットに押し倒された。
「な!? 何してるんだよ!」
「ほ、本当に好きにしていいんですね?」
凄い興奮してる。ちょっと前に自分から襲わないって言ってたじゃん!
「そういう意味じゃないよ!」
「どうしてですか! 私だってみ…あああ!」
怒りのモルティットに首根っこつかまれたベネットが慌てている。
「もう! ナオは無防備すぎ! あと、ベネットちゃんは節操なさすぎ!」
プリプリ怒りながらベネットを引きはがした。助かった!
なんとか起き上がるとモルティットが抱きついてきた。
「心配で来て良かった」
「ありがとう。助かったよモルティット」
お礼を言うとニコッと微笑んだ。怒ってるわ…。ガッカりしているベネットは残念そうにしていた。
やがて料理もできたようで、いい匂いが辺り一面に立ち込めてきた。あの蛇は美味いのかな?
マクレイ達の元へモルティットとベネットを連れて戻り、配膳やらの手伝いをした。
「よし! 皆の者、食料は行き届いたな? ではいただこう!」
ダイロンの宣言で町民が一斉に食べ始める。出た料理は蛇のスープと蒸し焼き、から揚げ的な物だった。
俺達は家族でテーブル一台を囲んでいる。半信半疑で食べると意外に美味い!
「どうでスか? ナオヤさン」
フィアが聞いてきた。
「さすがフィアだね。とても美味しいよ!」
「フフ。ありがトう!」
照れなが返事している。手伝っていたマクレイは温かい目で見守っている。
それからは町民参加の出し物を見ながら食事をした。クルールとレミアも美味しそうに目を細めていた。
「ところでさー、ギルドはもう大丈夫なの?」
リンディが聞いてきた。
「たぶんね。明日からどうしようか?」
「フフ。じゃあ、あたしに付き合ってよ」
答えると笑顔で誘ってきた。すかさずカレラが出てきた。
「ダメです。私と出かけるんです」
リンディとカレラが目で戦ってる…。助けを求めてマクレイを見ると微笑んで眺めていた。最近は余裕ですね、美人さんは。
「じ、じゃあ三人で出かけようか?」
「…そう言うのならね」「…はい」
提案すると渋々二人が了解した。一安心だ。モルティットは今だ怒っているのか怖い笑顔だった。
ちょっとした祭りも終わり後片付けをして皆で帰宅した。
皆それぞれ自分の部屋へ行き、疲れて寝ているクルールとレミアをベッドに送って一人、居間でくつろいでいるとコップ片手にマクレイが隣に来た。
「モルティットに聞いたけど大変だったみたいだね」
お茶を傾け聞いてくる。
「大変って言うか、意思の疎通が難しいよ」
「フフ。そうだねぇ。あの子もそんな本気じゃないみたいだし、今の感じでいいと思うよ」
ニヤッとして語った。いや、押し倒されたのに本気じゃないって、ますますわからん。
「でもマクレイだけは落ち着いてくれて良かったよ。他の皆は少し浮いてる感じがするし」
そう言うとマクレイが俺の頭をくしゃくしゃして、
「皆はアタシほどナオと付き合いが長くないのさ。だから少し不安なんだよ。しっかりしなよ旦那様!」
「すると、ますますわからん。もちろん今は皆、好きだけどさ」
俺の答えに満足したのかわからないが微笑んだマクレイが頬に口づけた。
「アタシはナオがいればそれで十分さ」
耳を赤くしながら言ってコップを傾けている。…照れ隠しかな。
するとソイルが現れた。
『こんばんは。二人とも』
「あ、こんばんは」「フフ。こんばんは」
マクレイと二人、挨拶を返す。ソイルは微笑んでいる。
『私も一緒にいいですか?』
「もちろん!」
空いてる椅子を勧めると俺の隣に座った。今、気がついたがロックはさっきから居間にいたよ。ほぼ石像と化してるな。
それからソイルにお茶を出して三人で談笑した。
やがてソイルは戻り、俺達も口づけを交わしてそれぞれの部屋へ入った。
ふー、疲れた。ベッドに座ってから気がついた。
ヤバい! モルティットと約束してた!
慌ててモルティットの部屋へ行き、小さくノックして勝手に中に入ると膨れ面したモルティットがいた。
「ご、ごめん。下で話してたら遅くなった」
「もー。遅い!!」
モルティットが抱きついてきた。抱き返して頭をナデナデする。
「そ、そんな事しても怒ってるから! もう!」
「ハハッ。かわいいなぁ」
そう言ってベッドに押し倒す。
「ふふっ。夜はこれからだね」
魅惑的な表情でモルティットが囁いてくる。これはあれだ、燃えてきた!
それから体を重ね情熱的な長い夜を過ごした。
翌日、朝食後フィアにお弁当を作ってもらい、リンディとカレラを連れて外に出た。
「さ、どこに行く?」
「私はナオヤが行きたいところで大丈夫」
カレラが遠慮して言ってくる。顔は嬉しそうなんだけど。
「リンディは?」
「あたしが決めていいのかい? 実はあるんだ! じゃあ最初はそこに行こうよ!」
嬉しそうにリンディは俺の手を取って歩き出した。空いている手をカレラに差し伸べると笑顔で握ってくる。
三人並んで商店街の方へ向かった。
アルルの町には雑貨屋、服屋、食堂、宿屋が各一軒あり、食品を扱う店が三軒ほど並んでるこじんまりとした商店街がある。たまに祭りの時には屋台が出るが、町民は基本的に自給自足に近い生活を送っている、もちろん医者もいるし、共同浴場もある。
リンディはその内の洋服屋へと向かって行き三人で店内へ入っていった。
「いらしゃい! おや、めずらしいね」
「こんにちは、おばあさん。今日は家族でね」
お店のお婆さんにリンディがにこやかに挨拶した。カレラと俺も挨拶する。
「まあ、皆さんで。あまり良い服はないけど、好きなだけ見てね」
嬉しそうにお婆さんが言ってきた。皆、笑顔で応える。
それから店内の服を見て回り、リンディとカレラは選んだ服を身体に当てたりしている。二人とも楽しそうだ。…こういうのもいいな。ホンワカして見守っていた。
「これなんかどうだい?」
やがてボケーとしていたらリンディが聞いてきた。少し大人っぽいドレス試着していた。何着ても似合ってるな…。
「とっても似合ってるよ」
「フフ。ありがと」
照れながらリンディが試着室に戻ると入れ替わりでカレラが来た。タイトな服のようで体のラインが出ている。魅力的な部分が主張してて、けしからん身体つきが浮かび上がっていた。攻めすぎだろ!
「ど、どうですか? 冒険してみました」
頬を赤くしながら聞いてきた。冒険しすぎだ。
「ダメだ! イヤラシすぎる! 俺以外が見るかもしれないからダメ!」
「イヤラシ……。プッ、ナオヤ以外には見せませんよ!」
噴出しながら顔を赤くしてそう言うとカレラは逃げるように試着室へ戻った。やっぱり恥ずかしいんじゃないか…。
そんな事をしばらく繰り返すと買う服を決めたようだ。
結局リンディはカジュアルっぽい服をカレラはネグリジェっぽい部屋着に決めたようだ。
購入して店から出たところで食堂へ休憩しに向かった。
まだ昼前なので店内にはあまり人がいなかった。席につき飲み物を注文した。
品物を持ってきた店のおばさんがコップを置きながら聞いてきた。
「あら、今日は三人なの?」
「ハハ。デートなんだ」
少し照れて答えると、店のおばさんがお盆を口に当てて、
「いいわねぇ、幸せで。フフ」
そう言って戻っていった。
買った服の事など三人で雑談して楽しく休憩した。
店を出ると少し町から離れ、草原へ向かった。
三人で楽しく話しをしながら移動する。
町を望む見晴らしの良い場所を見つけ布を敷いて準備し、お弁当を広げて皆で座る。リンディとカレラは俺を挟んで引っ付いている。なぜそこまで密着する必要があるのか? 襲っちゃいそうだ。
それでもお昼は楽しく、美味しく過ごせた。食後は川の字になって寝転ぶ。青空にわたがしのような雲がフワフワ浮かんでいる。天気がいいから気持ちがいいなぁ。カレラは腕に抱きつき、リンディは腕枕で密着してる…。もう川の字じゃないな。
段々と眠くなってきた。と、ソイルが警告してくる。
「向こうの方で何かあるみたいだ。リンディ、カレラ、わかる?」
起き上がって警告の方向を見ながら二人に聞く。
「あっちの方かい? まだわかんないね」
「いえ、私には全然です。流石ですね!」
リンディ、カレラそれぞれ言ってくるがまだわからないようだ。
やがて遠くの木々の間から人影が出てきた。物凄い勢いで走っているのが見えた。あれ? 知ってるぞ!
「ベネットーーー!!」
叫んで走り始める。なんかヤバそうだ。
「はぁ。人のデート、邪魔しちゃってさ」
すぐに追いついたリンディが呟いて俺を追い抜いていった。は、速いよ!
「しょうがないですね」
同じく俺を追い抜いてカレラが駆けて行った。あれ? 俺って足が遅い?
先を見ると、こちらに気がついて向かってきている。そのベネットの後ろから天敵のビッグボアが出てきた! ああ、そりゃ怖いわ。
ソイルを使おうと思ったが、リンディがベネットの元をすぎてビッグボアに向かって行く。両手にはすでに短剣が握られていた。え? どこに持ってたの?
遅れてカレラがベネットと合流し立ち止まった。精霊の流れを感じる。と、こちらに向かってくるビッグボアの体が、カマイタチによって切り裂かれ走る勢いが止まる。と、リンディが頭に短剣を突き立てていた。強えぇ! 瞬殺ってやつだ!
やっとたどり着くと、カレラに抱きついてベネットが泣いていた。介抱するカレラは優し気な顔でカレラの頭を撫でている。
短刀の血を拭って鞘に納めながらリンディが戻って来た。
「あたし一人でも大丈夫なのに。カレラもお節介だねぇ」
ニヤリと笑う。それを見たカレラは微笑んで応えていた。そして見てただけの俺……。
ベネットが落ち着いたところで話しを聞いた。
どうやら俺達、家族が有名だという事を知ったらしく、自分も肩を並べるように鍛えるため森に入りビッグラビットを探していたが偶然ビッグボアが出てきたとの事だった。
「ベネット、気持ちはわかるけど一人で行動するのは無茶だよ」
「ごめんなさい…」
カレラに抱きついて泣いているベネットは俺の言葉に謝った。するとリンディが腰に手を当てて口を開いた。
「ベネットはそんなにナオヤの事、好きじゃないだろ? あの場所が好きでずっといたいから、ナオヤと結婚すればいいと思ってるかも知れないけどさ。そんな事しなくても、いればいいじゃないか。誰も追い出しゃしないさ」
そう言ってベネットの頭を撫でる。ベネットはますます泣いている。カレラと目が合うと微笑まれた。
やがて泣き止んだベネットを連れ、皆で町へ戻り帰宅した。マクレイとモルティットは外出しているようだ。クルールとレミアはロックの頭の上でくつろいでいた。




