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冒険者ギルドと新しい仲間

 

 ある日、暇なギルドの受付をしている時に珍しくモルティットが来た。

「ふふっ。頑張ってるかな?」

「あれ!? 何かあった?」

 驚いて尋ねると、笑顔で、

「お昼を持ってきたの。たまには、ね」

 あーなるほど、ずっとフィアだったもんな。するとベネットが目をキラキラさせてきた。

「わあー。ありがとうございます!」

 すっかり食いしん坊キャラだね。いいのか?

 いつものようにカウンターに広げてみんなで食べる。料理を食べたベネットが感激して聞いてきた。

「美味しい! これはモルティットさんが作ったんですか?」

「半分はね。いつもフィアちゃんが張り切ってるからね」

 へぇ~と関心しながら頬張って食べているベネット。ホント良く食うな。それを見ていたモルティットが微笑みながら聞いてきた。

「ふふっ。聞いていいかな? ベネットってサッキュバスでしょ?」

「ブーーーー!!」

 盛大にベネットが吹いた! ……全部、俺に掛かってるんですけど。もうビチャビチャ。

「ち、ちちち違いますよー。本当に違いますから!」

 慌てて否定しているが、これは本当だな。楽しそうにモルティットが続けた。

「聞いたことあるのよね。欲求を誤魔化すために食欲で満たしている者もいるとか」

「へ、へぇ~。し、知らなかったなぁー。世の中って不思議ですね」

 とか言ってまた食べ始めたベネット。もう、まるわかりじゃん。

「それで、サッキュバスって何?」

 質問したら二人とも固まった。あれ? 常識なの?

「もう、ナオっていつもそう。後で教えるから」

 モルティットが膨れて言ってきた。ははっ、かわいいなぁ。

「ナオヤさんて不思議ですね。私、側にいてもちっともムラムラしませんから」

 ベネットの言葉に記憶が蘇り、そのままを口にした。

「いや、待て。思い出したぞ。あれだ、夢の中でいやらしいことして精液を取るんだろ?」

「全然違います! 快楽を糧としているんです!」

 何故かベネットが怒って言ってきた。モルティットは笑って、

「嘘つけないのね。ふふっ。ま、いいけど」

「はっ! 全然違いますから! 今のは一般論です!」

 慌ててベネットが反論している。もう、遅いって。

「へ~。ようするに、ベネットは見かけによらずスケベなのかー」

「それも違います!!」

「ふふっ。面白いね。ナオってさ」

 ベネットに怒られ、モルティットは笑っていた。

「私の事はほっておいてください! さ、食べましょう!」

 そう宣言してベネットは黙々と美味しそうに食べだした。

 ニヤニヤして見ていたら、食べながら睨まれた。

 食後は何故かモルティットが隣に座っている。なぜって顔で見ると微笑む。

「今日はここにいるの?」

「そうね、それもいいかも。嫌?」

 かわいく言ってきた。嫌な訳ないじゃん!

「じゃあ、仕事を手伝ってくれ」

「はい。何からかな?」

「……」

 ヤバい。何もなかった。ベネットを見ると本を読んでる振りして、めちゃ聞き耳を立てている。何か言って!

「ず、ずっとそばにいて欲しい」

 もう自分で何を言ってるかわからないが、モルティットの青い目を見つめながら言うと

「もちろん!」

 魅力的な笑顔で答える。ああ、抱きしめたい。

「もう、まだ早いよ。続きは後でね」

 モルティットに言われて気がついた、もう抱きしめていた。

 はっと体を離すとベネットがガン見していた…。そして、おずおずと口を開いた。

「…前から思ったんですけど、いつもそうなんですか?」

「“そう”の意味がわからないけど、いつもじゃないぞ」

「そうなんですか?」

「当たり前だろ! 家に帰ってみろ! なかなか二人きりなんてないんだぞ!」

 もうこれ以上ないほど力説した。俺の迫力にベネットは引きつっている。モルティットは苦笑いしていた。

 その日はいつもの様に何事も無く終わり、ベネットを連れて三人で帰り夕食をご馳走した。


 翌日はリンディがお昼を持ってきた。どうも当番制になったようだ。明日はカレラかな。

 ベネットは誰が持って来ても、美味い、美味いとこぼしながら食べていた。いいのかこれで?

 ついでにダイロンの帰り時期を聞くと、あと一か月ちょっとはかかるようだ。どんだけ遠い所にあるのか王都は? 謎だ。

 町の方も順調だ。たまに困った事があれば手伝って解決した。人数が少ないためか、犯罪みたいのは見当たらなかった。

「よく考えたら、ベネットは付き合いだから好きな時に帰っていいよ?」

「あ、気を使わなくて大丈夫ですよ。私が好きでいるだけなんで…」

 少しはにかんでベネットは答えるが、たぶん目的があるよね?

「それってお昼目当て?」

「ま、まさかー。ハハハー!」

 めちゃ愛想笑いしてる。図星だったのね。

「ナオヤ。あたしも何かするかい?」

 昼食後、残っていたリンディが言ってきた。

「え? うーん、何もないよ…」

「そう、暇そうだもんね。フフ。じゃあ、ほら!」

 そう言うと膝の上に座ってきた。重いって。

「な、なんで向かい合わせで座るんだ?」

「フフ。嬉しいでしょ?」

 抱きついてきた。やわらかい胸が顔に当たってくる。はぁー気持ちいいなぁー。じゃなくて!

「だ、ダメだって! 人が来るかもしれないだろ!」

「いいじゃん。他に誰もいないんだから」

 めちゃガン見しているベネットがおずおずと、

「一応、私がいますけど…」

「ほ、ほら! いるじゃん!」

「んー、別にぃ。ま、慣れよね」

 そう言うと今度は俺の顔を持って唇を重ねてきた。

「あーもう! リンディ!」

 顔を離して椅子から床に押し倒すと淡い薄緑の瞳が誘ってくる。もういいわ! 世の中どうでもいい!

 リンディに襲いかかろうとすると後ろから荒い鼻息が聞こえる…。

 振り返ると両手を頬に当てガン見しているベネットがいた。ハッ! 冷静になれ、俺。

 慌ててリンディを椅子に座らせ取り繕う。

「さ、仕事、仕事」

「フフ。もう終わりなのかい?」

 残念そうにリンディが聞いてきた。

「ダメだって。俺が誘惑に弱いの知ってるだろ?」

「もちろん!」

 いい笑顔で答える。するとベネットが鼻息荒く言ってきた。

「わ、私の事は気にせずチャチャと続きをしてください。ええ、置物と思ってくれればいいですから」

「待て! 何言ってるの?」

 とんでもないこと言い始めた。リンディは苦笑いしている。

 それから何の火をつけたかわからないがベネットが興奮しているのでリンディと二人でなだめて静まってもらった。

 夕食はベネットを招待して皆で楽しく過ごした。


 ある日、フィアが草花のサンプルを取りたいと言ってきたのでギルドはベネットに任せ付き合う事にした。

 クルールも一緒に来るみたいで俺の頭の上に座っている。

 二人で手をつないで草原を歩く。は~、のどかでいいねぇ。クルールのハミングが風に乗って辺りに流れている。

 目的の場所は少し離れた森の中だった。この場所は初めてだなぁ。

 空に広がる葉の隙間から太陽の光が降り注ぐ。なんとも過ごしやすいな。魔物も付近にはいなさそうだ。

「ナオヤさン。見てくだサい。これは珍しいでスよ!」

 フィアは明るいピンク色の花を見つけて観察している。…どう違うのかわからん。みな同じ花に見える。

「へぇ~。違いがわかるフィアって凄いね」

「もウ、ナオヤさンは飽きっぽいのがダメでス!」

 なぜか怒られた。とりあえず俺は目についた薬草を採取している。後で売って小銭を稼ごう。

「フィア。余り離れないようにね」

「ハイ。大丈夫でス」

 フィアはにっこりしながら珍しい花を探してるようだ。

 それからフィアが花や草を調べているのを見守っていると、クルールがいなくなってるのに気がついた。

 少し歩いて頭を巡らし周囲を見てみるがいないようだ。

 なんか焦ってくる。迷子になってるとか?

 と、フィアが泣きながら飛んできた。何故かスカートが無い、パンツ一丁だ。新しい遊び?

「ど、どうしたクルール? スカートは?」

 クルールは俺の胸に飛び込んで向こう側を指さした。

 見るとそこには黒い肌の妖精がクルールのスカートを手に持って振り回している。取られたって事?

 クルールが俺の肩に移って地団駄踏んでいる。くやしいのね。ってか、なぜ喋らないの?

 しょうがないので黒妖精に近づく。俺の肩にクルールが乗っているせいか分からないが警戒していない。

「ねえ、その服はクルールのだから返してもらえないかな?」

 声をかけると、頭を横にブンブン振って拒否してきた。

「君は一人なの?」

 今度は頷く。

「えーと、それじゃあ友達にならないか?」

 すると少し嬉しそうで黒妖精がモジモジしはじめた。肩のクルールは頬を膨らませている。

「ほら、クルールも新しい友達ができるし、服はまたフィアに作ってもらおうよ? ね?」

 クルールに言うと涙目でフルフル見てくる。ああ、かわいいけど…。

 黒妖精は興味を示したのか近づいてきた。

「じゃあ、その服は返してもらって、新しい服を一揃い作ってもらうのはどうかな?」

 今度は黒妖精に言ってみる。ちょっと考えてるようで人差し指を顎に当ててる。

 なんか返してもらえそうな雰囲気になってる。ここで追い打ちをかける!

「それに美味しいご飯もあるよ。ね、クルール?」

 クルールに振るとコクコク頷いている。

 黒妖精はもう目の前だ。

 そっと手を出すと上に乗って来た。なんか出会った頃のクルールを思い出すな。

「それじゃあ、服をクルールに返してくれないかな。そうしたら君の服を作ってもらって、ご飯を食べよう?」

 囁いて言うと少しぎこちないが頷いてスカートをクルールに差し出した。

 クルールは嬉しそうに受け取ってパンツ一丁からスカートをはいて普通になった。

「ありがとう。俺はナオヤっていうんだ。彼女はクルール。君は?」

 囁いて聞くとまた顎に指を当てて首を横に倒した。…かわいい。あれだ、妖精が二人になったらダブルでかわいいな、これ。

「えーと、勝手に決めていいかな?」

 そう囁くとニッコリして頷いた。

「“レミア”はどうかな?」

 すると嬉しそうに笑顔になった。かわいいね。

『ありがと! あたし嬉しい!』

 頭の中に語りかけてくる。クルールと同じだね。

「ほらクルールと握手しよう。それで仲良しだ」

 そう囁いて肩のクルールに手を持っていく、クルールが手を差し出すとぎこちなくレミアが握った。

 お互いニッコリし合う。ホッ、良かった。

 それから二人を頭に乗せフィアの元まで移動した。


「ナオヤさン。どこに行っていたんで、ス、か?」

 フィアが俺の頭の上を見て固まった。

「あ、彼女はレミア。少し先で出会ったんだ。申し訳ないけど彼女にも服を作ってもらっていいかな?」

 すると凄い勢いでフィアが頷いた。

「もちろんデす! あア、かわイい!!」

 目がキラキラしてるぞフィア。そんなに妖精が好きなのか…。

 それからフィアがレミアに自己紹介して家へ戻った。

 早速部屋へ直行しフィアは服を縫い始めた。花の採集よりもテンション高いぞ。

 レミアは初めてなので居間に連れて行く。上手い具合いに全員揃っていたので家族に紹介した。

 クルールは先輩風を吹かしているらしくあちこち説明しているようだ。レミアはどれも興味深そうに観察している。

「しかし珍しいね。大森林以外に妖精がいるなんてさ」

 マクレイがレミアを見ながら言ってきた。目尻が下がってるぞ。

「ま、俺もわからんけどね」

 愛想笑いして答える。

「ふふっ。ホント面白い。家族が増えたね」

 モルティットが微笑んできた。

「あたしはいいけどねぇ…」

 とリンディはカレラを見る。

「ち、ちょっと! 妖精に嫉妬なんかしませんから!」

 顔を赤くしてカレラは抗議している。ははっ、かわいいな。

 クルールはお気に入りのお菓子をレミアに渡し、二人仲良く食べている。特にレミアは初めての味で夢中になっているようだ。


「お待たせしまシた!」

 フィアが来た。手には妖精用の服を何着か持っているようだ。って、作るの早くないですか? フィアさん。

 早速レミアの前に並べて選んでもらう。レミアは嬉しそうに手に取って体にあてがい決めているようだ。

 クルールも何かアドバイスしているようで、選ぶのを手伝っている。

 結局、レミアはジャージのような服を選んだようだ。さっそく着替えてご満悦な表情でフラフラ飛んでいる。

「はぁ~。かわイい…」

 フィアが満面の笑みで妖精を眺めている。黒い妖精をずっと目で追っていた。

 やがて疲れたのかレミアは俺の頭の上に降りると寝てしまったようだ。

 クルールはそれを温かく見守っていて、お姉さんみたいな感じになっている。

 まあ、クルールに友達が出来て良かった。

 しばらくして夕食になり、起きてきたレミアは美味しい食事に目を細めて堪能していた。

 やがて寝ることになって、それぞれの部屋へ散って行った。

 今日は疲れたなー。とか思ってベッドに横になるとクルールとレミアが手をつないでやってきて、何故か俺の胸の所にいそいそと横になって寝始めた。

 いや、専用のベッドあるじゃん。妖精さん。しょうがないのでそのままにした。


「ナオ。起きているかい?」

 マクレイが部屋に来た。頭だけ動かして見ると俺の姿を見たマクレイが苦笑していた。

「起きてるよ。そこに立ってないでこっちに来たら?」

 そう誘うと、マクレイもいそいそと俺のベッドに入って来た。

 二人の妖精の姿に微笑んでから、口づけを交わした。

「ま、明日話すよ。今日はこのままでいいよ……」

 少し頬を赤くしてマクレイは妖精の邪魔にならないよう俺を抱いて寝始めた。何故こういう時は動けないんだ。俺は悲しい…。



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