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新しい明日へ続く町

 

 夕刻になりギルドを閉め屋敷に帰る。何故かアビアも一緒だ。

 玄関にはメイドがズラリと並んでお出迎え?

 すると一人が出てきた。水の精霊のメイドが両手を腰に当て怒っている。

「アビア! 抜け駆けは許せません!」

「ち、違います。ご主人様に言われたので……」

 慌てて言い訳するアビアの両腕を持ちメイド達はどこかへ連れていってしまった……。

 カレラとベネットと俺の三人は茫然とその様子を眺めているだけだった。

 居間に行くと家族全員とタツミとユキエがいたので改めてカレラとベネットを含め紹介する。

 俺が四人と結婚していたことに驚いたようだが、メイド達やエキル達が妖精だということにも驚いていた。

 ダイロンには既に会って移住の許可を得たようだ。ただし条件があって冒険者として登録して欲しいと言われタツミ達は快諾したとのこと。この町に冒険者が増えて俺も嬉しい。

 それから夕食になり、賑やかに料理を満喫した。その頃にはメイド達も通常の仕事に戻っていた。

 食後はタツミ達に町の現状をダイロンと共に話し理解してもらい、メイドに部屋へ案内してもらう。


「ナオヤさん! 話しがあります」

 居間で家族とまったりしているとハドーが勢いやって来た。

「な、何?」

「この町に商館を建てたいのでご助力できますか?」

 何故かハドーが上目遣いで両手を合わせ頼んできた。いや、男だからかわいくないぞ。

「いいけど、何かするの?」

「ありがとうございます!! もちろん商いです! これまで町や周辺を調べてイケると踏みました!」

 嬉しそうに俺の手を両手で握る。あれ? ハドーは俺を監視するために派遣されたんじゃないの?

「ダイロンは許可済み? 王都には帰らなくていいの?」

「許可は得ています。王様へは手紙を出しておりますので心配は無用です。幸い独り身なので心残りもありません!」

 めちゃいい笑顔で語るハドー。何か心情の変化があったのかは謎だ。

 一連のやり取りを見ていたモルティットが首を傾げる。

「ふーん。いい所に目を付けたけど、騎士達はこのまま?」

「これは奥様、お褒めいただきありがとうございます。部隊はこの町が気に入ったようで、残りたいと申しておりました。それに決死隊で全員単身者だけなのでお気を使わず」

 ハドーはモルティットに頭を下げ説明する。しかしモルティットの顔は晴れないようだ。当然、俺は置いてけぼり。

「本格的に移住なのね。税務官が来たらどうするの?」

「ハハ。心配ありがとうございます。それは考えておりますのでご心配にはおよびません」

「それなら大丈夫でしょうね」

 ニコリとモルティットが微笑む。なんか俺よりモルティットの方が主人っぽい。

「また詳しくは後日。それでは皆様失礼します」

 ペコリとお辞儀をして背を向けるとハドーは鼻歌交じりに軽い足取りで居間を後にして自室へ行った。

 しかし、すっかり情勢が変わってきている感じがする。


「こりゃ、いよいよ本腰だねぇ」

 リンディが楽しそうにカップを手に取った。

「本腰って?」

 聞くとモルティットが俺の腕を抱いてくる。

「もちろん、“国”ってこと」

「は!?」

 家族を見ると皆、頷いている。マジか……。

「あの時、ナオが口にしてから周りの人達が動き始めたの」

 モルティットがイイ笑顔でウインクする。マクレイとカレラを見ると苦笑いしていた。

「私の知る限り“契約者”が国を興すのは初めて。様々な欲望や野望を見てきましたが、あなたが一番大それた事を始めましたね。どのようになるのか私も興味が尽きません」

 ソイルが静かに指摘してきた。

 “契約者”として悪く利用されないためにはどこかに隠れ住むか敵対者を撃退し続けるしかないと思っていたが、先日のハドーとの会話の中で国をつくればいいかもと閃いた。個人で国々を相手取るより国として構えた方が確かに楽だ。

 それに寂しがり屋な俺は隠れ住むなんてできない。家族は一緒にいてくれるだろうけど……。

 西の国の国王には悪いけど、少しずつ進めていこう。ダイロンも乗り気だし。

「でも、ソイル達は不干渉じゃなかったの?」

「基本的にはそうです。ナオヤ自身に危機が及ばない限りは」

 でも、とソイルが続ける。

「営む者のお役に立てることなら少しはいいでしょう。愛する人のために」

 少し頬を染めて見つめられるとその瞳に吸い込まれそうになる。

「ま、出来ることからやらないとね。ギルドマスター」

 立ち上がったマクレイが俺の頭をポンポンして居間を出て行く。一気に現実になったな。明日はがんばろ。

 つられて皆も立ち上がりこの場は解散となった。


 ある日、朝食後にハドーとフィア、ロック、タツミとユキエ、部隊の一部を伴って町の空き地へ行く。

 ちなみにギルドはベネットとアビアにお留守番を頼んでいて、他の嫁さん達は授業の日なので屋敷にいる。

「この辺でいいかな?」

「はい。立地的にも将来町が大きくなった時を考えるといいですね」

 ハドーが喜んで賛成してくれたのでソイル達にお願いして商館を造る。

 土が盛り上がり木がうねって形を作っていき、しばらくすると二階建ての立派な商館が出来上がった。

「これは初めて見ましたが凄い!」

「ハハ。倉庫とかは自分で手配してね」

 感激したハドーが握手してくる。タツミ達も感心しているようだ。部隊員たちは驚いている。

「ええ、もちろん! ありがとうございます!」

 建物の中に入るとハドーがチェックし始める。

「で、俺達と部隊のやつらは何で呼ばれたんだ?」

 タツミが受付のイスに腰掛け聞いてくる。ユキエもその隣に座った。

「ああ、それはこの後、川に行くんだ。その時に力を借りたくて」

「なるほど、結構な人手が必要なんだな?」

「ハハ。さすが“嘆きの祭り”団リーダー。鋭い!」

 褒めるとタツミはニヤリとする。フィアは俺の手を握って建物の内部構造を観察していた。

 しばらくしてハドーが戻って来たので川に移動する。

 その間、ハドーは「雇う人数は……」とか「馬車と船が……」とか遠くを見ながらブツブツ言っていた。やる気満々だね。

 

 川岸に着くとフィアが以前に調べた拡張可能な良い場所に移動して、ここでもソイル達にお願いして岸に基礎を造る。

「それじゃ、ここからはフィアの設計図通りにいこう」

「でハ、これを見て下サい」

 俺の合図でフィアが図面を広げ皆で輪になって眺める。

「まズは木材の伐採と川底の工事でスね。本日は材料の採取と川のう回路を作るところまでしましょウ」

 フィアが説明すると部隊の一人が手を上げる。

「あの~精霊主様にしてもらったら早いんじゃないですか?」

「ハハハ。それじゃあ意味ないだろ。ナオヤは俺達が覚えるようにしているのさ」

 タツミが隊員の方へ向くと笑って教える。フォローありがとう。

「あーなるほど!」

 納得したようだ。それから素材の採取とう回路の班を分け作業を始める。

 タツミと部隊の半分は木の伐採にロックとユキエ、残りの隊員で土を掘り進む事になった。

「よし、召喚して早く終わらせよう」

「頑張ってね!」

 タツミが宣言するとユキエが励ましている。そしてスケルトン達を召喚するとタツミ達は森の奥へ消えていった。いつ見ても凄いな。しかも前よりも増えた気がする。

 残りの者達でフィアの指示の元、作業を始める。作業道具は事前に置いておいたので各自スコップなどを手に取り進めている。

 俺も混ざって土堀をしているが、段々辛くなってきた。ちらりとロックを見れば凄い勢いで掘り進んでいる。ユキエも苦も無く掘り進んで隊員から羨望の眼差しを向けられている。……やる気がなくなってきた。スコップを地面に刺し休憩する。ふー、大変だ。

 視線を感じ首を巡らすとムスッとしたフィアが俺をガン見している。こ、怖い…。が、がんばろう。

 やがて昼になると木の幹を抱えたスケルトン達を引き連れてタツミが戻って来た。

 ちょうどマクレイとメイド達がお弁当を運んでくれている時だったのでタイミングが良かった。

「木材はこのぐらいでいいか?」

「ハイ。しばらくは大丈夫デす。これかラは加工に入るノでまた班分けをしましょウ」

 タツミの問いにフィアが答えて俺達を見渡す。なるほど、飽きないようにかな?

「大分はかどっているみたいだねぇ」

 お弁当を渡しながらマクレイがニッコリしてくる。他のメイド達もそれぞれ弁当を渡している。

「まあね。フィアと皆のおかけだよ」

 フィアを見るとこちらもニコリと微笑んだ。

 お昼の後はマクレイ達も手伝って作業を進める。というか、俺の思った以上に作業スピードが早く、初日にう回路が完成して川の本流をせき止めるところまでいってしまった。恐るべし重機ロック。

 こうして川の船着き場と設備、町までの道路の舗装など一週間ぐらいで終わってしまった。

 ハドーは感激して今は船を造っているところだ。これもフィアが設計している。

 町の者でも興味ある人達がやってきては木材の加工など手伝ってくれるようになった。その内、職人が生まれるかもしれない。


 辺境の町、アルルでは農作物と牧畜、森での薬草や木材などの資源が取れる。

 魔物も時々出現するが町の周りに巡らされた壁より中へは侵入してこないようだ。ま、その前に撃退しているのだけど。

 タツミとユキエは冒険者として魔物退治や森の調査などをこなしてくれている。

 今まではたまに訪れる行商人と細々と取引していたが、ハドー率いる「スピリッツ商会」が発足し、中型船で下流にある港町と取引を始めた。また、陸路でも荷馬車を使って積極的に展開しているようだ。

 部隊の隊員はそれぞれ自分の道を見つけ、ある者は守り人に、または商会の護衛などに就いた。

 さらに、いつの間にかロマンスが芽生えたようで一組のカップルが挙式を挙げた。もちろん町全体で盛り上げ幸せな二人を祝福した。

 やがて一年と過ぎ、町は次第に活気が満ちてくる。

 俺は冒険者ギルドマスターとして働きながら、何故かダイロンの補佐をしている。

 マクレイは新入り冒険者の指導と学校の掛け持ちをし、モルティットはこれまた何故か事務方を始め町の財務や政を仕切るようになってきた。ダイロンは不思議と黙認している。

 リンディにはギルドの副マスターとして魔物の討伐などしてもらって、カレラは学校で子供たちを教えている。

 フィアはその知識を生かし町の学者兼識者として日々研究やレポートをまとめている。

 ベネットはギルドの受付をしている。俺が近くにいるときはサッキュバス効果が薄くなるらしく、男どもに襲われる心配は無いみたいだ。

 クルールとレミアは俺の周りでフラフラしている。最近はギルド内でよく遊んでいる。二人とも楽しそうだ。

 エキア、ナイール、ユウナの三人はやっと自立したみたいでいろいろ町の手伝いをしている。でもたまに俺に甘えてくる。

 精霊のメイド達は屋敷や町の事をいつも手伝ってくれて感謝している。でも、たまにアビアとかに襲われそうになる。違う意味で怖い。

 ソイルはマイペースに日々を送っている。新しい発見をしたりして町での生活を楽しんでいるようだ。たまに他の精霊主も現れてあちこちを見て回っている。人々も慣れたようで特に気にしていないようだ。表面上は。

 おっと、最後にロックはギルド前にいる。どうも俺がいないのに屋敷の門番をしていたことに気がついたようで、俺の行く先へついてくるようになった。たまに住民から頼まれて力仕事などをしている。ちなみにモーピアは屋敷の庭でいつものんびりしている。


「結構発展してきたけどまだまだね」

 モルティットが財務表を見ながら呟く。

「今はくつろいでるから明日、悩めば?」

「もう! ずるい!」

 そう言いながらくっついてきた。せっかく居間で家族団らんしてるから難しい話しは明日にして欲しい。

「フフ。まあ、なんだかんだで忙しいねぇ」

 メイドからお茶を受け取ったマクレイが微笑む。その頭の上にクルールとレミアが乗っているせいでなんとく面白い。

「あたしは楽しいけどね。やっぱり体を動かしてる方が性に合うね」

「リンディは少しやりすぎね」

 笑うリンディにカレラが突っ込みを入れる。

「でも私はとても楽しいわ。一つの町が大きくなるところを見るのは」

「はぁー。私が父といたころの倍は大きくなってますよ!」

 ソイルはニコニコとエキルを抱いて座っていて、これまたナイールと一緒に座ってお菓子を手にベネットがため息をつく。

「そろソろ、町の拡張を考えた方がいいかも知れまセん」

 カップを両手に持って首を傾げるフィア。

 そこに、とてとてとユウナが遅れて居間に入ってくると俺の腹にダイブしてきた。

「ふぐぅ!」変な声が出てユウナを受け止める。って痛い!


「ナオと出会ってからまったく退屈しないねぇ。一時は心配したけどさ」

 微笑みながらマクレイが視線を向ける。赤紫色の瞳が愛おしい。

 ひっついているモルティットはクスクス笑ってマクレイを指さす。

「ねえ聞いて。この人、ナオが寿命ですぐ死んじゃうからって、ずっと気にもんでいたんだよ」

「なっ!? モルティット!! 言わないって…」

 驚いたマクレイが真っ赤になって顔を背ける。耳がピクピクしてるぞ。

 しかしわかったぞ。だから旅している時はあんなに返事を拒んでいたのか……。

「アハハ! ロマンチストだよねぇ。マクレイディアはさ」

 リンディが笑っている。ますます赤くなるマクレイ。

「でも気持ちはわかるわ。大切な人がいなくなったら辛いし、悲しいもの」

 優しくカレラがマクレイの肩に手を置く。

「プッ。ここにもいたよ、ロマンチストが……」

 吹き出したリンディをカレラが睨む。やめて! 俺の嫁さんのケンカは半端ないから!

「私からすれば人の生はほんの瞬きの間。それはエルフや魔人も一緒。でもその一瞬はとても濃くて熱い。今こうしてあなたたちと暮らせる時はかけがえのないものです」

 皆を見渡し微笑むソイル。

「ソイル……」

「フフ。つまり今が楽しいのです」

 にこやかにしているソイルを見てると視界がぼやけてきた。だめだ泣いたら! 耐えろ、俺!

「ホントによく泣きますよね?」

 面白そうにベネットが口をもぐもぐさせている。

「フフ。そレがナオヤさンでス」

 ニコニコしているフィアはとても感情豊かだ。


 嬉しそうなユウナを抱いて立ち上がり叫ぶ。

「あーもう! みんな大好きだーーー!」

 皆、笑って俺を見つめた。



 END


お読みいただきありがとうございました。


これで、この物語は終わりになります。

お付き合いありがとうございました。

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