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エルフの結婚式

前作「異世界で契約の旅してます」の続き。

竜の国へ行き、問題を解決したナオヤ一行は、ビスロットの魔導研究所を訪れる。

 

 錆びついたノッカーを持ち上げ玄関の扉を叩く。

「こんにちは! ナオヤです! いますかーー?」

 大声を出して挨拶すると勢いよく扉が開いた。

「あら! 久しぶりね! ビスロットもいるわよ。さ、中に入って!」

 マチルダが出てきて嬉しそうに案内する。元気に見え変わってなさそうだ。ロックは外で待つようで、玄関の横に立っている。ロックの腕に手を置いてから中に入った。


 居間に案内されると丁度ビスロットがお茶をしているところだった。

「おお! 久しぶりじゃな! 元気そうでなにより! ところでフィアさんはどこかの?」

 俺達を見たビスロットがフィアを探す。マチルダも不思議そうな顔をしていた。

「あノ…。ワタシでス……」

 恥ずかしそうに銀色美少女のフィアが手をおずおず挙げて答えると、ビスロットとマチルダはビックリしている。

「ええ! なんで!? どうしたの?」

 マチルダが声を上げた。ビスロットは驚きすぎて声も出ないようだ。

「驚いたと思いますが、実は……」

 フィアの姿が変わった経緯を説明するとビスロットは目を細めて聞いていた。


「なるほど。そのような事があったのか…。研究には少し残念だが、フィアさんにとって幸せなら良かった」

「ハイ。今は幸せデす」

 ビスロットの言葉にフィアが照れながら答えた。マクレイとモルティットは温かく見守っている。

「本当にビックリしたわ。不思議がいっぱいね。研究対象が増えたわ」

 嬉しそうなマチルダがフィアを見つめている。ロックオンされたっぽい。頑張れフィア!

 それから俺が結婚した事を報告して、竜王の用事を済ませてここに寄ったことやこれまでの旅の顛末を語った後、新たにリンディとカレラを紹介する。二人とも興味深そうに聞いてくれた。

「相変わらず面白いわね。あなた達って」

 マチルダがリンディ達を見た。ニヤリとするリンディ、悪役っぽい。対照的にカレラは照れて無言だ。


 それから、フィアを含め台所で賑やかに夕食の準備を始めた。

 居間には俺とリンディ、カレラがいる。くっつきすぎだぞリンディ。

「もう相談しても無理だから、頑張ってね」

「いや、さすがに、ねぇ」

 ニヤけたマチルダが言ってきて返事をするとリンディが口を挟んできた。

「言ってやってよ、この男にさ。あたしら待ってるからね」

 今度はマチルダを巻き込んでくる。やめて!

「待たなくていいから、国に帰ろうよ? ね?」

「は? 何言ってんの? この間、したよね?」

 すごい怒ってる。しかも勘違いしそうな発言。

「ちょっとリンディ! どういう事!?」

 いきなりカレラが声を出してきた。ビックリしていると二人で言い争いが始まった。ビスロットは目が点になっている。

「二人とも! 止めろって! ビスロットさんに失礼だぞ!」

 大声を出すとピタリと止まり何故か二人に睨まれる。するとマチルダが笑い始めた。

「アハハハハ。全然変わらないわね。ホント、面白い!」

 いや、俺は全然、面白くないってば。すると料理を持ったマクレイがやってきた。

「はいよ、お待たせ。あんたら台所まで聞こえてたよ」

 テーブルに料理の盛った皿を置きつつ俺を睨んできた。えー。

「ふふっ。どこでも一緒ね」

 微笑んだモルティットも皿を置きつつ言ってきた。

「もウ、大人なんですカら」

 フィアがトドメを刺してきた。でも嬉しそうな顔をしている。少し顔が赤くなったリンディとカレラは何事もなかったように振る舞っていた。

 回復したビスロットと苦笑しているマチルダを囲み、皆で楽しく食事をする。

 ビスロットとマチルダは共同で研究を続けているそうだ。しばらく俺達と同行したマチルダの資料が活かされているみたいで、なにか照れてしまう。良い成果が出てくれると嬉しいな。

 人数が増えた俺達を温かく迎えてくれたビスロットとマチルダに感謝して、雑談を楽しんだ。


 夜になり二階のベッドで横になる。

「ちょっと四人だと狭くない?」

「んー。私はいいかな。密着できるし」

 モルティットがくっついて言ってきた。クルールは楽しそうに胸の上でゴロゴロしいている。

「ワタシが向こうに行きましょウか?」

 隣のフィアが言ってきた。

「いや、フィアはいてくれ。三人になると理性が保てないから」

「アタシはそんなガツガツしてないよ」

 俺が言うとフィアの隣にいるマクレイが反論して腕をつねってきた。

「違うって、俺の事! 今日は人の家だから!」

 そう言うと皆、納得したのか黙った。なぜだ? そんなにいつもガツガツしてる?

「ふふっ。幸せだね」

 モルティットがギュッとしてきて囁いた。ゾクゾクするからやめてください。

「そうだね。もう寝るよ」

 マクレイがフィアを抱いて寝始めた。よく考えたら俺達って寝つき良すぎる気がしてきた。

 やがて甘い香りにすぐに眠ってしまった。

 翌日、名残を惜しんでビスロットとマチルダと別れた。

 二人とも姿が見えなくなるまで手を振っていた。また会いに行きたいな。


 それから西の森に行きマクレイのおばあ様に報告した。

「あら、そうかい! それはよかったね、マクレイディアそれにモルティットも」

 二人はラフィーノおばあ様に抱きついて感謝している。

「しかし、そうなるとは思ってはいたけどねぇ。しっかりね、“契約者”様」

 ラフィーノおばあ様がウインクしてきた。笑って応える。

 それから談笑して一泊した。途中でデオールとエンウィットも聞きつけやってきた。

 デオールとエメルディの交際は順調らしい。エンウィットはアクアに会いたがったが、拒否され涙を飲んでいた。

 次の日、笑顔で別れ次の目的地へ出発した。


 大森林へ向け移動している。ふと、あることに気がついた。

「そう言えばモルティットのご両親は?」

「あら? 言ってなかった? いないの。昔、事故でね…」

 なんてことだ…。何も言わずモルティットを抱きしめた。すると嬉しそうに耳元に囁いてきた。

「ありがと。お人好しさん」

 マクレイもそっとモルティットに抱きついてきた。なんか逆に俺が癒される。

 しばらくしてから進み始めた。

 やがて大森林に入り妖精王と会った場所の近くへ来ると、

「クルールは挨拶しなくていいの?」

 肩に乗っているクルールに聞く。すると微笑んで首を横に振ってきた。

「ホントに? 友達とかいるんでしょ? 大丈夫?」

 すると涙目でフルフル首を振ってきた。なぜ喋らないんだ…。

「わかったよ。別れるわけじゃないからね? クルールが良ければいいんだ」

 すると頬にチューしてきた。それをモルティットは微笑ましく見ている。

 フィアの件で一言、妖精王にはお礼を言いたがったが探してもいないそうだ。必要なら向こうから現れるとマクレイが教えてくれた。


 やがて東エルフの里に着くと、前回は行かなかった里の中央にマクレイの案内で向かう。

 そこは自然と一体化した家が立ち並び、商店や倉庫など生活感に溢れる場所のようで、おのずとエルフ達が多くいた。

 しかし、すれ違うエルフ達は美男美女しかいない……。ある意味、凄い所だな。

 どうも噂が広まっていたらしく、俺達が中央へ着くと里のエルフが総出で出迎えてくれた。

「これは“契約者”様、よくぞ参られました。此度の“精霊の輝き”、我が目で見られるとは思いませんでした」

 長のマクフェムディクが代表して言ってきた。

「いえ、これは仲間がいればこそです。その、後でご報告がありまして……」

 そう答えると、マクフェムディクは神妙な顔をしてマクレイを見ている。長の横にいる母親はニコニコしていた。その後ろでは妹さんの鋭い視線が突き刺さる。まだ怒ってるよ…。

 一通り挨拶をされ、フィアも含め新しい仲間を紹介し場所を移した。

 案内された所の外見は他の家と似ていたが、中は豪華な作りでとても贅沢な作りをしていた。モルティットが言うには外からの上級客用の施設との事だった。そんな扱いをされると報告しづらくなるなぁ。

 部屋のテーブルでソワソワ待っていると、隣にマクレイが座ってきて手を握ってきた。はー、安心する。

「ナオ、ここはアタシが言うよ」

「えー、だってマクレイって口下手じゃん?」

 そう答えると焦った返事がきた。

「そ、そんな事はないよ! たぶん…」

 少し顔を赤らめ横を向くと、モルティットが言ってきた。

「ふふっ。無理しなくてもいいよ。私もいるしね」

 後ろからマクレイを抱きしめている。仲もいいし、二人で良かった。

 フィアは初めての場所でキョロキョロ観察していて、クルールはフラフラ楽しそうだ。ロックはいつものように外で待っている。


「ねぇ。これが終わったら、あたしの国にも来てよ」

 リンディがとんでもないこと言ってきた。

「えぇ! それって国王に挨拶に行くんだろ? 無理だって!」

「私は独り身なのでいつでも大丈夫ですから!」

 返事をするとカレラが言ってきた。ってもう! さらにリンディが追い打ちをかける。

「覚悟決めてよ! そうじゃないとずっと居候してるよ!」

 えぇー! それって今と一緒じゃん! カレラを見ると賛同してるのか頷いている。

「はぁ。わかった! マクレイとモルティットが許してくれるならいいよ!」

 そう言うと、満面の笑みをしたリンディとカレラがハモって言ってきた。

「「ありがとう!!」」

「ちょっと待て! まだ聞いて無いだろ?」

 そう言って隣のマクレイとモルティットを見ると苦笑している。あれ?

「ふふっ。ナオってさ、ホント時々鈍いよね。二人が嫌ならとっくに追い出してるよ」

 モルティットの言葉にビックリして聞き返す。

「ええ!? そうなの?」

「そうなの」

 マジかよ…。じゃあ、いままでも認めてたってことか……。

 するとリンディが魅惑的な顔で言ってくる。

「ね! じゃあ、この間の続きをしようか?」

「今はやめてください。リンディさん…」

 下を向いて答える。ああ、視線が痛い。この間は誘惑に負けてしまったんだ。悲しい男の性。

 すると怒ったカレラが言ってきた。

「ずるい! 私なんてまだ抱きしめてくれるだけなのに!」

 ああもう、やめて! 世の中、誘惑だらけなんです。マクレイとモルティットの視線が痛い。

「はぁ。アタシらもしっかりしないとね。ねぇ、モルティット?」

「そうね。流石にこれ以上は嫉妬しそうね」

 マクレイとモルティットが確認している。ヤバい、最近は特にモルティットの機嫌がいいから忘れてたけど、怒ると恐ろしい事を思い出した。背筋が寒くなる。

 そんな話し合いをしている内にマクレイのご両親と妹が来た。


 手短に挨拶をして、この旅の事を説明した後に結婚の報告をした。

 もう目からビームが出ているぐらい、妹さんの怒りの視線が俺の胸に穴を開けている。怖えぇええ。

 最初は目を閉じ聞いていたマクフェムディク(お義父さん)だったが、今は目を見開いている。お義母さんはずっとニコニコしていた。

「なるほどな。という事は予言は正しかったという訳か、その点は安心した。だが、もう一つある。マクレイディア、モルティット、本当にいいのだな?」

 ギロリと二人に向かってマクフェムディクは視線を送る。

「ああ、決めたんだよ」

 マクレイが緊張して答え、

「これ以上の者は世の中にいません」

 涼しい顔でモルティットが答える。それを聞いたマクフェムディクは俺に向き直った。

「よかろう。確かにこの世に“契約者”以上の者はおるまい。二人を頼んだぞ、いいな?」

「はい! 任せてください!」

 緊張して声が裏返ってしまった。マクレイとモルティットは微笑んでいる。

 すると怒りのマクレーナがいきなり席を立ち家から出て行ってしまった。

「ち、ちょっと!」

 慌てて追いかける。後ろからマクレイが何か言っているのが聞こえたが今は遅い。


「ま、待ってくれマクレーナ!」

 追いかけて叫ぶと立ち止まり振り返った。

「なぜ来るの! ほっといて!」

 両手を下げて怒鳴って来た。追いつくと静かに聞いた。

「ほっとけないだろ? これでも、さ。家族なんだから」

「私は認めません! なぜ、あなたのような者が…。聞けば正式な“契約者”でもない者なのに!」

 マクレーナがけっこう痛いところをついてきた。だがそういう訳にはいかない!

「マクレーナは何が気に入らないんだ? いつまでも独り占めしたいの?」

「なっ!? そんなことはありません! お姉様のことは私が一番、知っています!」

 青い目を見ると少し混乱しているようだ。自分の事に自信が無いのか?

「確かに一番知っているかもしれないけど、もう少し自分に素直になったら?」

「私はいつも自分に素直です! あなたに何がわかるのですか!?」

 マクレーナがすごい剣幕で言ってきた。図星っぽい。双子って他の人もこうなのか?

「本当は寂しいんだろ? だったら素直にマクレイに甘えればいいじゃないか。何を意地張ってるんだ?」

 するとマクレーナの顔が赤くなって言葉に詰まったようだ。硬く握った手がプルプル震えている。

 と、俺の肩を誰かが掴んでくる。振り返るとマクレイがいた。

「マクレーナ…。アタシはナオの側にいるから、いつでも来ていいんだよ?」

「お姉様……」

 マクレイが言うとマクレーナは気がついて固まった。そして続けた。

「アタシはさ、マクレーナの気持ちに気がつかなかったよ。ゴメンね」

「そ、そんな事はありません。いつも私の為にしてもらっています」

 マクレイが言いながらマクレーナに近づく。

「本当はアタシが巫女の役目だったのに無理に変わってもらって。その負い目もあってマクレーナには出来る限りの事はしてきたけど、逆にそれがいけなかったみたいだね」

「違います! 私が変わってくれとお願いしたんです! お姉様は……」

 そう言うとマクレイに抱きついて泣き始めた。マクレイは優しくマクレーナの背中をさすっている。

 その光景を見ているとモルティットが来ていた。俺の隣で微笑んでいる。

「いつでも来なよ、アタシも皆も歓迎するよ。たまには二人で過ごしてもいいし、ね」

 マクレーナにマクレイが囁くと、やがて泣き止み体を離した。

 涙を拭ってマクレーナは俺に向き直った。

「お姉様の事は私が一番良く知っています。ですが、あなたと一緒になってから変わりました。以前なら口にしなかったり、優しさを表に出していませんでした。……ありがとう、ナオヤさん」

 素直にお礼を言われた。なんか照れるな。しかし、一番ダメージ受けているのはマクレイだな、顔真っ赤だ。

 モルティットが微笑んでマクレーナを抱きしめて体を離した。胸元にいるクルールはニコニコしている。

 それから三人連れだって戻るとマクレイのご両親は既に帰宅していた。

 部屋に戻るとマクレイは妹と一緒に今日は過ごすようだ、双子だから並んでいると不思議な感じになる。

 夜はモルティットとフィア、クルールと一緒に眠った。


 翌日は歓迎会が行われ、その中で結婚式を執り行った。

 美しく着飾ったマクレイとモルティット、カレラを見て息を飲んだ。初めて見るマクレイの煌びやかな姿に感動して涙が出てきた。

 モルティットもカレラもいままでと雰囲気が違い、とても気高く気品に満ち溢れていた。いいのか俺で?

 泣きながら式を挙げると周りは笑って盛り上げ祝福してくれた。何故か肩にいるクルールも泣いている。嬉し泣きかな?

「ふふっ。そんなに喜ぶなら、このまま過ごそうかな?」

「アタシは嫌だよ。動きにくい」

「私はナオヤが望むなら……」

 モルティット、マクレイ、カレラ、三者三様の感想を貰ったが、あまりにも美しすぎて言葉が出なかった。

「皆さン、とってもお綺麗で素敵でス! とっても感動しまシた!」

 フィアが嬉しそうに参加している。リンディは悔しそうな眼差しを向けていた。後で魔人の国に行くから。

 クルールはちゃっかりマクレイの肩に移って嬉しそうだ。ロックもエルフ達の輪の外から温かく見守っていた。

 マクレイの両親と妹にも祝福してもらえた。皆、ありがとう。

 その後はパーティーになり、賑やかにそして楽しく過ごした。

 次の日は魔人の国へ行くため別れを告げ、エルフの里の人達に見送られ出発した。



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