表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

参話、物語は進む

「痛ててて、俺は……確か………」

直は頭をボリボリと掻きながら、気絶する前の記憶を整理していた。

そして、ブリキに殺されそうになっていたことを思い出して、慌てて周囲を確認するが、人がおらず、正面に使い魔であるコンがヤレヤレという表情で出迎える。しかし、体には傷が何ヵ所もあり、綺麗な白色の毛はやや汚れている。

何が起こったのか察した直は「ありがとう」と、深く礼をする。

すると、コンは何事も無かったのかのようにヤレヤレと手を振る。

しかし、その顔は喜びに溢れており、フワリと直の元へ行く。

「心配させやがって。分かっているな、」

直はハハハと軽く笑う。

「分かってるよ。いつものコロッケ二つでしょ」

すると、人差し指を横に動かし、

「違う。今日はプレミアムコロッケ三つだ」

すると、直は笑いだし、「いいぜ」と言って荒れ果てた公園を出る。

時刻は既に六時半を超えて、暗くなり出している。

コンは「直、早くしないと閉まるから早く。早く。」と急かす。

そうして、彼の長い始まりを告げる一日は終わる。



「これで良かったのかい、」

東洋人で三十後半ぐらいの男はサンチョに問いかける。

時刻は七時半になろうとしている頃合いで、サンチョと男はサラリーマン達が今日の仕事の鬱憤を晴らすかのように、飲み、騒いでいる駅近くの古く、味わいのある居酒屋の隅で飲んでいた。

「ええ、ありがとうございました。猫さんのお陰で助かりました。」

サンチョは穏やかな笑みを浮かべると、手元の日本酒を飲む。

そもそも、猫は獣人だが、戦いの時のまま生活している訳ではない。むしろ、それは大半と言えるだろう。

戦う時のみ筋肉が増大し、毛が生えて、それぞれの獣の姿に変わる。

また、狼男も獣人と言われており、月を見れば狼に獣になるように、獣人にもそれぞれそうなるファクターが存在する。また、時間が設定されているため、時間が経てば直ぐに戻る。

「ああ、それに関しては別に構わないさ、何せ、吾輩も少しは警戒していたからな」

「やはりですか……」

「ああ、今回の一件で分かったと思うが、奴等は合理的に動こうとしている。だから樺八坂直をこのままにせず、直ぐにまた、殺しに行くだろう」

二人の顔は暗い。そして、更に猫は悪い知らせを持ってくる。

猫は懐から赤い封筒を取り出して差し出す。

これを見たサンチョは顔をひきつらせ、焦りの色を感じさせる。

「まさか……これはつまり、つまり………」

言葉を詰まらせるサンチョを見て猫は

「まさにサンチョが考えている通りの内容だ。つまり、この件には関わるな。と、上はそう言っている。いや、赤派がこうなるように仕向けている」

猫の声が僅かに震えている。

「確かに、私が6で猫さんが8、それはあまりにも命令を無視するのに実力も地位も足りないですが、黒派が全員で反論すればなんとかなるんじゃ……」

目を動かして、焦りを隠せていないサンチョに猫は静かに首を横に振る。

「いや、それは無理な話だよ。黒の王から直々に今は関わるなというお達し付きだ」

「んじゃあ、どうすれば……」

すると、猫は優しく微笑み、サンチョの肩を叩く。

「安心しろ、お前は観察だけしておいてくれとのことだ。」

すると、サンチョの目は喜びに満ちていた。

「ありがとうございます‼それじゃあ、早速明日から観察の任に着くので、お金はこちらに」

そう言ってサンチョは一万円を置いて急いで出ていった。

「やれやれ、忙しい奴だ」

喜びのあまり急いで出ていったサンチョに苦笑いをしながら目を細め、前の方の席にいるフードを被った少女を見つめる。

「そろそろ出て来てもいいですよ、アリス嬢」

そう言うと、アリスは不機嫌そうな顔で猫を睨む。

「よく分かった。と言いたいところだけど、私が認識阻害をしているとき、サンチョは動揺していて、貴方は落ち着いていた。まぁ、当然と言われれば当然ね」

彼女なりの誉めの言葉を「ありがとうございます」と慎ましく受けとる。

「どうせ、貴方のことだから私の言うことなんて大まかな予想はついてるんでしょ」

すると、小さく頷く。

「えぇ、まぁ。これが届いたということは」

と言って懐から黒の封筒を取り出す。

すると、アリスはニヤリと笑う。

「分かっているじゃない」

「恐縮です」

と、堅苦しく猫が答える。

そして、アリスが続けて喋り出す。

「ええ、貴方が貰ったのは赤の封筒。つまり、赤派からの指令。そして、黒の封筒は黒派閥からの指令」

そして、猫が続けて喋り出す。

「そして、他派に向けて指令を出すときのみ、その指令を出す派の代表者、つまり王の許可が必要になる。だからこそ、私たち黒派は赤派に隠れて樺八坂直を観察、守護することができる。という訳ですかな」

「その通りよ、それと、私と貴方は樺八坂直を殺そうとする輩の撃破が指令よ。そして、一つしか数字が変わらないのだから、私のことはアリスと呼んで。いい!これは上官命令よ」

と、アリスは見上げるように、言う。

猫は、「了解しました、アリス」

と、命令を実行し、それに満足したのか、アリスは「追って連絡するは」と言って出ていった。


アリスが帰ってから数分後、猫は日本酒の入った杯を物思いにふけりながら傾ける。


私の組織、『カード』は少数精鋭の世界最悪、最狂の秘密結社と言われて世界で危惧されている。

それぞれ1から13まで数字を振り分ける。

数字は序列を表しており、数字が大きくなっていくほど地位が高くなっていき、最大はジョーカーと呼ばれ、最強の権力、統帥権を持つ。そして、その次に王と呼ばれる13の数字を持つものが二人君臨する。

そして、それに続くように12、11と続く。また、赤派か黒派かは、ブリキのように急進的な考えを持つものが赤派。

対して、黒派は私やアリス、サンチョのように保守的な考えを持つものが黒派となる。

私は大人だがまだ構わないが、アリス嬢やサンチョは未来ある若者だ。それがこんなどろどろの派閥争いに巻き込まれている。

精神を疲弊させているだけだ。この戦いを終わらせなければ、ならないな。その為には、世界を滅ぼしうることも可能な『世界』をどうにかしなければな。と、一人思い、飲み終えた日本酒をもう一度注ぐのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ