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未来と過去とあたしと

作者: 結崎ミリ

 あたしはもう大学生だ。

 去年まで高校生で、ちょっと前まで中学生で、少し前まで小学生で、それなりに前まで幼稚園だったあたしが、今は大学生という枠組みの仲間入りを果たしている。

 大学生と言えば近所のちょっとしたお姉さんのような印象がずっとあったけど、実際なってみると対したことない。幼稚園だったあたしと何ら変わりないじゃないか。

 身体ばっかり大きくなって、化粧をして、ちょっと流行りの服を着て、学校帰りに友達とクレープなんか食べたりするくらいで、何の変化もない。

 

 あたしは思うんだ。人ってのは時間が経てば経つほど過去に捉われていくんじゃないかと。過去の楽しかった時代を思い出して「あぁあの時はもっとああしていればもっと楽しかったのにな」って。

 高校だったら彼氏に優しくしていればとか、中学生だったら熱心に勉強していればとか、小学校だったらバスケ部でもっと気合い入れて練習していればとか、幼稚園だったら男の先生に甘えていればとかそんな感じ。

 過去は自分を育てるし、自分を作るのは過去でしか有り得ないし、過去を見ない人は何の成長もしないと、あたしはそう思うね。あくまで自論だから間違ってると言われたらそれまでなんだけど。

 なら二年後、五年後、はたまた十年後のあたしは今のあたしを見てどう思うだろう。

 もっと友達と遊んでいればとか、もっとファッションに気合い入れたり合コンしたりって青春を謳歌してたらと思うんだろうか。

 

 学校の先生や両親は「幸恵は将来どうするんだ? もう大学生なのだから自分が就く仕事をある程度絞るべきだぞ」と口をすっぱくして言うけれど、そんなのわかるわけないじゃん。

 どんな仕事に就きたいかって言われると、好きなことを取り入れるのがいいのかな。それとも無難に就職できそうな事務職辺りを目指すのがいいのかな。


 あぁぁぁっわかんない!!


 わかんないって気持ちが溢れてきたとき、ふと思った。


 幼稚園から高校生まで、あたしは何になりたかったんだっけ?


 ベッドでゴロゴロはや二時間。


「あ、そうだ。幼稚園の先生になりたかったんだ」

 小学校から高校までは、口うるさくてねちねちタイプの先生が見事に続いてたから好きではなかったけど、幼稚園の鈴原先生は大好きだった。優しいお姉さんとお母さんを合わせたような人で、包容力の塊みたいな人。ほんとに素敵な先生で、あたしの憧れの人だったなぁ。あたしもあんな人になって、優しい先生になってみたいなって高校一年生くらいまでずっと思ってたんだっけ。


「今から先生目指してみるのってありなのかな」


 大学を卒業すると教員免許が取れるとは聞くので、今から勉強すればなんとかなるかもしれない。幼稚園の先生だからピアノの練習とか専門的なこともしないといけないだろうけど……。

 でも、あたしは何故だかとてもやる気に満ち溢れていた。それは自分でもとってもびっくりするくらい!


「よぉぉし! いっちょがんばってみますか!」


 あたしは未来ではなく、過去を見つめることで、自分が求めていた未来を気づくことができたのだと、五年後くらいにそう実感するんだよ、きっとね!


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