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6 福岡防衛戦1

お待たせしました!

長い間、本当に申し訳御座いませんでした。

実はまだ書き終わってはいないのですが、これ以上待たせるのはいけないと思い、投稿することにしました。

防衛戦が終わったら、暫く投稿出来ないかもしれないのですが、また暫くお待ちいただければ、幸いです。

7月26日、AM10:30 牧崎飛行機発着場・滑走路

「それでは、遠雷隊。出撃致します」

俺は滑走路の端で、出撃を見送りに来た松本中将率いる上官達に、敬礼をした。上官達は敬礼に応え、後は何も言ってこなかった。そこに、松本中将が前に一歩出る、俺が敬礼すると、隼人と翔太もそれに続いて敬礼をした。

「遠雷隊、必勝と武運を祈る。」

「了解!」

俺は隼人と翔太に指示を出し、機体に向かった。炎天の側には、望月親子が出撃前の最後の調整をしていた。

「出撃する、調整は?」

「たった今、終わりましたよ」

啓太がそう言って、ニッコリと微笑んだ。そして機体から離れていき、安全な距離まで下がった。

俺はそれを見届けると、機体の主翼に飛び乗り、操縦席に滑り込む。そして主翼、尾翼などの動作を確認した。異常が無い事を確認して、目に防護眼鏡を掛け、点火スイッチでエンジンを掛ける。

レシプロエンジン独特の音と共に、ブロペラがゆっくりと回りだした。徐々に周りの音が聞こえなくなっていく、外には松本中将達、望月親子、そして美春の姿が見えた。

しきりに手を振っている、どうやら見送ってくれているらしい。俺は風防を開けて立ち上がり、美春に向かって手を振った。美春は俺が気付いてくれたのを喜んで、より一層手を大きく振ってきた。

俺は思わず笑った、これから戦闘だと言うのに、美春のテンションに巻き込まれている。おかげで緊張が途切れ、落ち着くことが出来た。

「美春に感謝だな」

俺は風防を閉め、操縦桿を握った。何時もと変わらない感覚、馴れた手つきで操縦桿を操作し、機体を前方に動かした。

滑走路をどんどん進んで行き、速度が出てきた所で、操縦桿を手前に強く引いた。フワッという感覚と共に、機体が上昇する。

俺は無線機を作動させ、周波数を合わせた。

「離陸に成功、これより作戦空域まで移動する」

『了解した、貴官の作戦成功を祈る』

俺は操縦桿を手前に引いて、更に上昇をした。その両翼を、隼人の機体と、翔太の機体が編隊を組んでついて来る。後ろを見ると、壱岐島の全体を拝むことが出来た。

更に遠くには、九州が見えた、予想で福岡市を探していた。そして、自分の任務を再度思い返す。

「そうだ、俺は迎撃をするんだ。それ以外の事を考えるな」

俺は手で頬を軽く叩いた、そうして操縦桿を握りなおす。

『こちら遠雷隊2番機。隊長、ぼさっとしてないで、しっかりして下さいよ』

雑音紛れの無線機から、声が聞こえた。2番機とは翔太の事だ。

ちなみに、隼人が3番機で、今回は作戦に不参加の美春は4番機だ。

「悪い、ちょっと考え事をしていた。もう大丈夫だ」

『ぼさっとして、基地じゃなくて、海に着陸するんじゃないか?』

隼人がからかってくる、翔太はきっと爆笑していることだろう。風防越しだが、大体の事は見える。

「よし、高度を上げて、強襲位置に移動するぞ」

俺は操縦桿を手前に引き、機体を上昇させた。高度計の針がどんどんと高高度を指していく。

零戦や戦闘機は、基本高高度での空戦が苦手で弱点とされている。しかし、俺達の目的は「強襲」である。如何に敵の不意を突くかが、戦闘の明暗を分ける、と昔誰かが言っていた。

俺は、隊長になってこれが最初の戦闘だ。だから、隊長と言う自覚が、まだ俺は感じることが出来ていない。

『今日は、良い感じで雲が出てますね』

翔太が呟いた、確かに強襲をする際に、待ち伏せをするには絶好の隠れ場所だ。

『こちら霜雷そうらい強襲隊。遠雷強襲隊ですね、この度は共同作戦で共に戦えるのは、非常に光栄だ。あの名高き遠雷強襲隊と、共に編隊が組めるとは、今日は宜しくお願いいたします』

無線に入ったのは、霜雷強襲隊と言う、同じ強襲部隊の仲間だ。今日の作戦は二部隊で一編隊として戦闘に参加する、だから今回は総勢七機を僚機として、俺が指揮をしなければならない。

「こちらこそ宜しく。霜雷強襲隊、早々だが遠雷強襲隊と距離を取れ。なるべく雲の上を通りながら、見つからない様に飛ぶんだ。敵機を発見し次第、無線にて合図を送る、そうしたら一気に急降下攻撃を行うんだ」

『了解、霜雷強襲隊、離れます」

そう言うと、近くに見えていた霜雷強襲隊が、ゆっくりと離れていき、約二百メートル程の距離を取って飛行を続けた。霜雷強襲隊の機体は、全てが統一されていて、機体は『F8F ベアキャット』と言うアメリカ空軍のお下がり機体で、性能は俺が乗っている炎天よりも劣っている。

「零戦がおかしいのかな?」

一昔前の帝国海軍は、休息と言うものが無い生活を送っていたと聞く。その為に、実戦経験が非常に豊富で、生き残った者達は次々と腕を上げて行き、猛者ばかりが居た、らしい。

パイロットの腕もそうだが、帝国海軍の最大の強みは、やはり高性能の戦闘機だろう。格闘戦になれば、米英空軍はたちまち撃墜されたと言う。

「何はともあれ、今俺はその元最強の戦闘機に乗っているのだがな……」

米空軍は、昭和十八年の終わりに、零戦に対抗できる戦闘機を開発した。『グラマンF6F』と言う大馬力に、重武装と厚い防弾装備の戦闘機である。確か零戦の二倍だかの馬力だったような……。

『こちら海上索敵班、敵機の反応を察知しました。そちらには、約四分後に通過すると思われます。戦闘準備を』

「こちら遠雷強襲隊隊長、武井翔中尉だ。索敵班、協力を感謝する」

『いえ、滅相も無いです。それよりも、本当に在ったんですね、帝国海軍強襲部隊』

どうやら、この相手は強襲部隊の存在を確かめたかったんだろう。

『知ってますか?強襲隊の存在を知ったらしい人は、戦場で何でかどんどん死んでいるって言う噂』

その噂は、大分前に知っていた。一時期かなり広まった噂だ、強襲隊の存在を知っている人は、軍隊の中には、結構居ると思うのだが。

「だからって、そっちは簡単には死なないだろ?」

俺は冗談のつもりで、そう言った。しかし、返答が無い。

「どうした?応答しろ。おい、応答しろ!」

『こちら海上索敵班、敵機が来襲してきました!全速力で離脱します!』

「敵の状況を!」

『敵機は少なくとも七、いやもっと居ます!すいません、正確には数えられません』

俺は機体を加速させ、雲の中へと勢い良く飛び込む。雲が機体を包み込み、風防の外は何も見えなくなった。雲の中の飛行は、自分の位置が分からなくなるから、あまりするな、と言われていたのだが、強襲部隊に配属になってからは、雲の中の飛行訓練が義務付けられていた。

きっと強襲の際に、必ず使うことに成るだろうからである。

俺は機体を反転させ、逆さまの状態で雲の下からギリギリ風防がはみ出る位のところで、水平飛行に入る。空中には今のところ何も確認できない、しかし少し遠くの海上では、確認することが出来るものあった。

炎で燃え盛る偵察艇だ。

恐らく、先程まで会話をしていた索敵班の船だろう。何はともあれ助かる見込みは限りなく無い。

先程まで話をしていた人間が、今は死んでいる。これは戦場に立ってからは、相当数を見てきた。

そうだ、これが俺が今居る、戦場だ。

「くそっ!」

俺は機体を再び反転させ、機体を水平に戻し、上昇をした。程なくして雲の中から脱出する、隼人と翔太の機体がその両横に再びついた。

『隊長?何が在ったんですか?』

「索敵班がやられた!全機、戦闘態勢に入れ!」

俺は腕時計を見た、敵が到着するまであと二分……。

『こちら霜雷隊、戦闘準備完了、何時でもどうぞ』

『2番機、完了』

『3番機も同じく』

俺は首から掛けてある、千恵美から貰った御守りを、右手で強く握った。腕時計は敵が到着する時刻を、ゆっくりとした動きで指した。

何故かは分からないが、俺はその時、言いようの無い不安に煽られた。しかし、ここで怖気づく訳にもいかないので、自分を心の中で勇気付け、俺は決心を決めた。

「全機、行くぞ!攻撃開始!」

そう叫んで、俺は機体を急降下させ、雲の中に突入した。

次回「福岡防衛戦2」です。

次は直ぐにお出ししますので、それまでお待ち下さい。

失踪は決して致しませんので、ご安心下さい。

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