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19 夏休み 4日目~内地の朝~

本当に遅れて申し訳御座いません!

本当は十五~六日頃に投稿しようと思っておりましたが、インフルと言う強敵に屈してしまい、数日寝込んでおりました。

次話は何時になるか分かりませんが、今月中を願望にしていきたいと思います!

7月31日、AM5:00

朝の訪れを告げる鶏の鳴き声が、薄らと明るんでいく空に響き渡る。きっと、近隣の家庭で鶏を飼育しているのだろう。

何はともあれ、俺は軍隊生活の癖もあり、そのままゆっくりと目を覚ました。掛け布団を捲り、上体を起こす。大抵この時間に自然と目が覚め、隊であればそのまま朝の早駆けへと行ったのであろうが、視線を横に移した途端に、直ぐに気が付いた。

俺の隣の布団から、小さな息遣いが聞こえてきた。掛け布団は呼吸の度に小さく上下に動き、そこに人の存在を感じさせる。

それを誰なのかと考える必要は全く無い、昨夜から俺は千恵美と二人だったのだから。

「んん・・・・・・」

俺が布団を捲った所為か、千恵美は少し居心地が悪そうに寝返りを打った。起こさない様そっと布団から脱出をする。捲れ上がった掛け布団は、彼女の肩まで掛かるようにそっと被せた。

それから正座の状態で滑るように位置を替え、千恵美の寝顔を眺めた。幼い頃以来のあどけなく、愛らしい寝顔だ。あの当時よりも大分大人っぽく、そして魅力的な表情は、寝ている時も変わらない。

寝返りを打った際に乱れた前髪を、そっと手で正す。それでも目覚めない為、俺は千恵美の頭を優しくそっと撫でた。千恵美はくすぐったそうに「ん・・・」と吐息を漏らし、再び寝返りを打つ。俺は十分に満喫してから、そっとその手を引いた。

それからゆっくり物音を立てないように立ち上がり、すり足で窓際まで歩いた。

窓は雨戸が閉まっており、陽の光が遮られている。窓を開け、雨戸をゆっくり開いた。

夜半には決して感じる事の出来ない眩しい陽の光が、暗闇に包まれていた部屋の中を一気に明るく照らした。眩しくて俺は思わず目を細めた。

涼しい朝風が頬を撫で、篭っていた部屋の空気が換気されていく。暫く風に当たっていると、ふと朝の早駆けに出たくなった。何時もは航空基地搭乗員宿舎の周辺なのだが、今日は違う。街を走る事が出来る。

そう思うと俺は急にうきうきし出し、早速千恵美を起こさぬ様に準備を始めた。


朝風を全身に受けて、俺は坂を上る。仄かに潮の香りがし、足の運びを快くした。

何処を走ろうとも、目に見えるのは家家家・・・。内地の懐かしい朝を拝むことが出来た。

途中朝の散歩中だった御爺さんに挨拶をし、玄関先に繋がれた犬に挨拶をし。何時もと違い、今朝の早駆けはテンポが良い。疲れを余り感じず、尚且つ足取りがとても軽かった。

『朝の早駆けに出る。直ぐに戻る。しかし朝食は我待たずして食われたし』

千恵美にはそう書置きを置いてあるので、心配を掛ける事は無いし、起きたら気付くであろう。

やがて耳には心地よい波音が聞こえ、海が間近にあると教えてくれる。朝の海を見たいと思い、俺は脚を速めた。

雑木林に囲まれたその中を、風の様に駆け抜ける。ここを抜ければ海が一望できる筈、その証拠に波音が段々と近付いてきた。

「もう一踏ん張りだ・・・・・・」

街中を駆け回った為か、大分汗を掻いていて息も切れ始めていた。やはり平坦な飛行場よりも、起伏のある街の方が走り甲斐がある。

疲れが徐々に態度にも出始めているが、海はもう直ぐそこだ。

雑木林の陰が晴れていき、陽の光が一面を埋め尽くす。潮を香りに波の音。闇が晴れた瞬間、待望の海が一面を埋め尽くした。

「あ・・・・・・・」

海を見た瞬間、俺は言葉が詰まった。朝日の光に反射した波が、昨日見た夕暮れの波とはまた違った景色を創り出している。白い波が朝日によって更に白みを増し、白銀に輝く波が浜へと押し寄せている。

その金波の直上をカモメが泣き声を響き渡らせながら、悠々と海へ翔けて行く。自然とそのカモメが、出撃をしていく戦闘機の様に見えた。カモメ達は還って来るが、出撃をしていく俺達は時として還れない。彼らよりも速く空を翔け、彼らよりも遠い遠い海へ飛んで行く事が出来る我々搭乗員は、カモメよりも優れた技量を持つ我々搭乗員は、如何して愚かにも死ぬ為に空を往くのだろう。

それは戦争に勝つ為。たとえ隣に居る戦友が死んだとしても、俺達は再び空へと往く。

短くも濃い休暇を終え、俺はまた屠る為、そして屠られる為に戦闘機に乗るのだろう。

それこそが俺の死命を帯びた使命なのだ。


AM7:00

「ただいま」

早駆けから帰り、家の扉を開く。

家中に美味しそうな香りがし、俺の鼻を衝く。千恵美は炊事場に於いての朝食作りを終え、居間で正座をして、俺が昨日買ってあげた本を読んでいた。

扉が開けられた事により、千恵美は俺に気付いた。

「あ、おかえりなさい! 直ぐに朝食にしますので、どうぞ食卓で座って待っていて下さい」

俺は言われるがままに食卓の座布団へと腰を下ろし、炊事場へと目を向けた。千恵美の働く姿をまじまじと目に焼き付ける為だ。もう当分は見れないのだろうから、今の内に脳裏にしっかりと留めて置こう。

「千恵美」

「はい?」

俺が呼び掛けると、手を止めて直ぐにこちらに顔を出した。

「今日の事なんだけど、夕方にはここを発つ」

今日で休日は終わり。千恵美とは次の休暇が来るまで会う事は出来ない。そして、その「次」はもう二度と来ない可能性が在る。今の言葉にはそれらの意味も孕んでいた。

「はい、分かりました。それまでに荷物など、私が纏めておきますね」

お盆を抱えて戻ってきた千恵美は、何時も通りの態度であったが、微かにその表情は寂しさを含んでいた。

「朝ご飯です。冷めない内に、どうぞ召し上がれ」

ちゃぶ台に置かれたお盆の上には、白米、味噌汁、それから千恵美自身が漬けたであろう漬物が添えられていた。

「この漬物は?」

俺はさり気無く訊いた。

「これは、翔さんのお母様から、こちらに出る前に教えてもらったんです。とってもお上手なんですよ」

箸を手に取り、行儀が悪いが先に漬物を掴んで、ヒョイと口の中に放り込んだ。漬物の塩気が、塩分を消費した体に染み渡る。何よりも、味が懐かしかった。

「これだよ、千恵美! 家の味だ!」

我慢の限界に達した俺は、茶碗の飯を掻きこみ、再び漬物を頬張った。その様子に千恵美は大変嬉しかったようで、ニコニコしながら俺の横に座り、ゆっくりと食べ始めた。

「おかわりも沢山あるので、遠慮しないでくださいね」

千恵美が言い終える頃に、俺は空になった茶碗を彼女へと差し出した。クスッと笑い、千恵美は静かに茶碗を受け取り、炊事場へと急行した。

引き続き、ご質問・ご感想等御座いましたら、感想、またはメッセージでもなんでも宜しいので、お気軽にどうぞ。

最後に、この度は遅れてしまいまして、本当に申し訳御座いませんでした!


それでは、また次話で! 暫しお待ちを!


追記:次話投稿は四月十日を予定。

今回は信じて大丈夫です! お楽しみを。

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