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第三百十九話 幻視(一)

 まだ春は浅かったが、雪の残る中、警固衆は嘉平次の村へ警邏に出かけた。

 嘉平次は変わらずかれらを迎え、その側ではかれの息子、慶次が嬉しそうに飛び跳ねていた。

 藤吉が嘉平次に挨拶をしている間に、疾風が笑顔を見せながら慶次の頭を撫でる。

「おう、慶次。いくつになった」

「八つだよ」


「疾風はほんとに子供好きだな」

 聖羅があきれたように紫野に言う。

「まあ、子供に限らず、誰とでもすぐ仲良くなれるのがあいつの特技だけど」

 紫野は何も言わなかったが、そのとおりだと思った。

 どちらかというと自分から声をかけたりするのが苦手な紫野は、草路村の子供ならいざ知らず、よその村の子供にまで調子よく話しかけることはとてもできない。

 とはいえ、嘉平次の村へはもう何年も、何度も来ているから、二人とも慶次とはもっと親しくなっていていいはずだった。

 それでも慶次は極端に人見知りなのか、疾風にしかなついていない。

 そして明らかなことがある。


 いつからか、慶次は紫野を避けるようになったのだ。 


 じっと紫野を見たかと思うと、恐れるようにどこかへ行ってしまう。

 他の者が気づくほど露骨なものではなかったが、紫野本人はそれを感じていたのである。

(この頃の子供にはよくあることだ)

 紫野はそう思い、きっと疾風もそう言うだろうと確信して、気に留めぬようにした。


 警邏の三日目、休息中に嘉平次が慶次を馬に乗せようとして言った。

「紫野の馬は大人しい。慶次、あれに乗せてもらえ」

 紫野が慶次のぎっと睨みつけるような目を見てぎくりとした時、慶次は怒ったように大声を上げた。

「いやじゃ! あいつはお父の首を刎ねる――いやじゃ!」

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