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第三百十三話 侵入者(二)

 背中に剣を背負っているとはいえ、目の前の華奢な子供の言うことなど、あっさり信じるわけにはいかなかった。

(さっきのは、まぐれだ)

 そう決め付けたかれらは、今度こそ刀を抜いてかかっていった。


 紫野は、飛びかかってきた男の前から一瞬の跳躍で後ろへ身をかわしながら、空中で背中の剣を抜き、地表に降り立つと同時に横へ飛んで、一人を斬った。

 そのまま上から剣を振り下ろすと、もう一人の額がさっくり斬れて、あっという間に男二人が血まみれで地面に転がる。

 それを見た三人目の男は、引きつるようにして後退ると身を翻して逃げ出した。


「逃がすか!」


 だがその瞬間、どこからか飛んできた一本の矢が見事男の首に突き刺さり、男はどおっと倒れると、なだらかな斜面を転がっていった。


「紫野、大丈夫か」


 左前方から疾風の声がし、駆けてくるのが目に入る。

 弓を持った聖羅も、雪も一緒だった。


(またしても……)


 十分に集中していた心地好い緊張の糸が無残にも断ち切られた不快感に、紫野は眉をしかめ、剣を収めながら不機嫌に言った。

「俺はひとりで大丈夫だ。三人ぐらいわけない……」


 と、その時、額を斬られながらもまだ息のあった男が、紫野目がけて剣を振りかざしてきたではないか。


 驚いた紫野がよけようとした瞬間、疾風の剣が唸りを上げて男の背中を叩き斬った。

 骨の折れる大きな音がし、ぐわっと叫んで倒れた男は今度こそ動かなくなった。


「相変わらずの馬鹿力だな、疾風」

 あきれたのか、感心したのかわからないような口調で聖羅が言う。

「おまえがやった鬼を思い出したぜ。――野蛮だなぁ」

 何が可笑しいのか、くっくっと笑っている。

「鬼で結構。どうせ俺は、おまえと違って野蛮だよ」


 疾風にはわからない。

 『野蛮』という言葉に、聖羅は痺れているのだ。

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