第二百八十二話 山賊討伐(八)
四人は腰に山賊の首をぶら下げている。
日影村の村人たちに証拠として差し出すためだ。
藤吉、疾風、紫野はそれぞれ首を二つずつ、聖羅だけは自分が討ち取った三人の首を下げていた。
意気揚々としている聖羅と違い、紫野は人の荷物を持たされているようで情けない気持ちを隠せない。
しかしそうとは気づかぬ疾風が、心配して声をかけてきた。
「大丈夫か、紫野。無理するな」
「無理なんかしてない。放っといてくれ」
またやってしまった、と疾風は思い、紫野も思う。
だが今回は藤吉も紫野を心配した。
「顔色が悪いぞ。風邪でもひいたか」
たしかに昨夜、雨に濡れたままあの奇妙な部屋で寝てしまったのだ。
多少、熱っぽいかも知れなかった。
「大丈夫だ」
それでも紫野は同じことを繰り返し、淡々と山道を下る。
疾風は藤吉と顔を見合わせ、肩をすぼめた。
こうして下山した四人は、麓で翔太たち三人と無事合流し村へ帰着した。
村人も女たちも大喜びで、九つの山賊の首を竹に刺して思う存分卑しめたあと、草路村の七人に向かい、
「何とお礼を申してよいか……」
と、一斉に頭を下げる。
藤吉は村人に、「また山賊が巣食うといけないから、あの寺は早々に燃やした方がいいだろう」と進言したことであった。
帰り道で翔太が、
「俺たちは出る幕なかったな」
と笑うと、
「だがこの連携策こそ、草路村警固衆の強みだ」
と数馬が紫野の後ろから言う。
満足気に頷き合い、行きとは違ってゆっくりと馬の背に揺られながら帰途につく七人である。
皆様、あけましておめでとうございます。
どうぞ本年もよろしくお願いします。
皆様にとりまして、よいお年となりますように。
三人からも心を込めて。