表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
267/360

第二百六十七話 空木(うつろぎ)(一)

「昨日、高香が泊まることになってさ、おいらのおっ母、がぜん張り切ってやんの。おいら、高香の隣で寝たんだぜ。んでもって、おっ母も高香の隣に寝た」

 与助は得意そうに話し、その様子が可笑しかったので皆笑った。

 疾風、聖羅、紫野、雪、綾ね、与助、太平、いつもの面々だ。


「今日高香が、薬草摘みに連れて行ってくれるって。みんな行くだろう?」

 話題を変えた聖羅に最初に答えたのは、雪だ。

「もちろんよ。あたし、しっかり薬草の知識を教わるように母さんから言われてるの。綾ね、今日は留守番しててくれると、お姉ちゃん助かるな」

「やだ! 疾風兄ちゃんも、紫野兄ちゃんも行くんでしょう? 綾ねも一緒に行きたいもん」

 雪は困った顔をした。

「山道は危ないのよ。お姉ちゃん、薬草取るのにおまえのこと構ってあげられないわ」

「やだ、行く!」


 先ほど与助の話にも一人だけ笑えないでいた紫野は、その時思わず口を挟んでいた。

「いいよ。俺は行かない。綾ねの面倒は俺が見ているよ。綾ね、俺と一緒に遊んでよう」

 すると、綾ねは一転してご機嫌に「うん!」と頷く。

 と、疾風が言った。

「紫野、おまえ最近高香と一緒にいないな。なぜだ? 喧嘩でもしたのか?」

「別に」

 平然とした表情を保ったまま紫野が答える。

 そんな紫野を見て、疾風は複雑を感じざるを得ない。


 あの夜、聖羅から紫野の気持ちを聞いた疾風は、自分なりに大いに反省した。

 何となく紫野が思いつめていた様子だったのは、では俺が原因だったのか。

「確かに俺は、少し紫野に構いすぎていたかも知れぬ」

 疾風はそう言って頭を掻き、聖羅の憮然とした視線をあえて受けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ