表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
265/360

第二百六十五話 戸惑い(二)

 紫野が声をかけようかどうしようか、迷っていると、いきなり疾風が部屋から出てきた。

 二人とも、「あっ」と一瞬足が止まる。

 だが疾風の方が早かった。

「おう、紫野。よく寝たか?」

「う、うん」と答えた後、紫野は思い切って言った。

「疾風、昨夜はすまぬ。俺――どうかしてた」

 すると疾風は、ポンと紫野の肩を叩き、

「気にするな」

 一言そう言った。


 やっとほっとして部屋に入ると、紫野は明るく挨拶する。

 照れながら謝ると、与助と太平も、

「紫野、大丈夫か」

 と声をかけてくれた。


 その時紫野は、むしろ聖羅の表情にはっとしたのである。

 笑顔のない無表情ともいえる顔に、目が冷たく光ったように思え、刹那、紫野の背筋がぞくりとした。

 が次の瞬間、聖羅はぱっと笑い、

「よう」

 と手を挙げたのである。

(見間違い?)

 そしてようやく紫野は人心地つけように思えた。


 ところが、である。


 朝餉を終えて、皆で寺の掃除をしていた時、作造の声が聞こえた。

「やあ、高香さん。お帰りなさい。権三の具合は落ちつきましたかの」

(高香だ。帰ってきた!)

 そう思ったとたん、紫野は急激に高鳴り出した胸を押さえ――そして、異変をじかに感じた。

 掌にぐぐっと盛り上がる肉を捉え、思わず悲鳴が上がる。

「どうしたの、紫野?!」

 雪の声にも構わず、胸を押さえたまま、紫野は再び自分の部屋に向かって駆け出していった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ