表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
262/360

第二百六十二話 嗚咽(三)

 ――あれは夢じゃなかった。

 だとしたら、一体自分は何なのだ。

 人間じゃない、怪物か妖怪なのだろうか?


(いや、病気だ。俺は病気にかかってしまったんだ)


 部屋の向こうから、今度は綾ねの声が聞こえ、それに答える聖羅と雪の声もした。

 紫野の部屋の前で、わざと紫野に聞こえるように言ったのか。


「紫野兄ちゃん、どうしちゃったのかな? ねぇお姉ちゃん、残念だね」

「ああ。紫野は頭が痛いんだって。部屋に入らないで静かにしといてやろうな」

「そうなんだって。綾ね、いい子にしていてよ」

「うん。わかったもん」

「俺たちはさっきの部屋で寝る。綾ねたちはこっちだ、高香の部屋のとなり……」


 遠ざかる気配を感じつつ、紫野は震えていた。

 病気であれ何であれ、とんでもない事態に陥ってしまったのは間違いない。

 紫野は心の中で、ぶつぶつとひとりごとを繰り返した。


(これからは皆の前で裸を晒すことは絶対にやめよう。こんな体を見られたら、みんなに嫌われる。疾風だって、聖羅だって――もしかしたらミョウジすら俺を嫌いになるかも知れない。そして高香も……)


 紫野ははっと、布団から顔を出した。


(高香なら、もしかしたら、治してくれるかも知れない。いい薬草を知っているかも知れない!)


 治らないと困るのだ。

 このままでは大人になって、女も抱けないだろう。

 ――もし「あの」最中に体が女になってしまったら?


(雪も抱くことはできない……それだけは、困る)


 可愛い雪の笑顔を思い出し、紫野がそう思った時であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ