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第二百五十四話 小滝での出来事(二)

 皆が騒いでいる水場から少し離れた小滝の反対側で、高香と紫野は体を洗っていた。

 滝の水は夏でも随分冷たかったが、木の間から射す日差しは強く、濡れた髪などあっという間に乾いてしまう。

 紫野は水にいったん潜ると、立ち上がって頭を振った。

 黒髪が肩にぺったりとへばりつく。

 高香はすでに体を拭いて着物をつけ始めていた。

 その優雅なさまを見ていると、紫野はまた理由(わけ)もなくどきどきするのだった。

「皆のところへ行かないのか? 楽しそうじゃないか」

「いいんだ」

 紫野は水の中を岸へ歩きながら言った。

「俺は高香といたいから」


 水の波紋が紫野の腰の辺りから水面(みなも)を広がり、水の上に浮かんだ葉を揺らしている。

「そうか?」

 高香ははにかんだように笑った。

「えらく正直だな」

 紫野はうきうきと答える。

「いい感情だろ? 俺、ずっと実践しているんだ。だって、高香がいるのは短いしね」

 そうして岸辺近くの岩に登ると高香の方を向いて座り、息を一つ吸い込んで、言った。

「もっと長くいられない?」

 刹那、紫野の髪の先からしずくが落ちる間だけ高香は沈黙し、それから穏やかな笑顔を見せた。

「薬売りだからな。私の薬を待っている人が他の村にもいる。……でも嬉しいよ。ありがとう紫野」


「高香、あの……あのさ。高香は女を抱いたこと、ある?」

 いきなり、もじもじしたかと思うとそんなことを言い、紫野は赤くなった。

 高香は一瞬帯を結ぶ手を止め目を丸くしたが、すぐに、はははと声を立てて笑う。

「なるほど、紫野ももう年頃だからな、確かにそういうことが気になるだろう」

 内心では驚き、どぎまぎせざるを得ない。

「あるの?」

 紫野は興味津々である。

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