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第二十四話 円嶽寺の怪僧(一)

 円嶽寺(えんがくじ)の朝は早い。


 午前四時になると、けたたましい鈴の音が僧堂を駆け巡り、円嶽寺で修行する十二名の僧侶たちが一斉に起床するのである。

 それから皆で(うやうや)しくこの寺の頂点である智立(ちりゅう)法師を迎え、朝のお勤めに入るのが常であった。


 円嶽寺は、寺山の下には日影村、崖の向こうには笹無村と隣接していたが、どの村にも属さない人里離れた険しい山の中にあり、僧堂の一面は切り立った崖を見下ろしていた。


 その崖下には堂々と流れる清滝もあり、自然と一体になって修行を積む僧侶たちにとっては、まさに格好の場所になっていた。



 僧丞蝉は、八歳のときにこの寺へ入門し、兄弟子たちとともにずっと厳しい修行を続けている。

 彼は元々体が大きく丈夫だったから、他の僧たちよりも厳しい荒行によく耐えた。


 目も(くら)むような崖の中腹にある岩棚の上で、風雨に晒されながら幾日も座禅を組んだり、真冬の寒い日でさえ清滝の轟々(ごうごう)と落ちる水に身を打たせることを意にも介さない。

 一日中奥深い山に分け入っては危険極まりない岩山を登り、近寄ってくる獣たちとわざと対峙しては、彼らを圧倒する気の力を磨いていた。

 負けじと丞蝉の真似をして、命を落としかけた僧侶もいたほどである。

 僧侶たちの間では、丞蝉は空恐ろしいと同時に羨望(せんぼう)すべき存在であった。


 実際、円嶽寺にいる十二人の修行僧の中で、智立法師が特に目をかけているのが、天礼(てんらい)、丞蝉、高香(こうか)の三人であった。

 三人とも持っている雰囲気こそまるで違うが、それぞれが非凡なる才覚を持ち、智立同様、強い気をまとう能力を身に着けていたのだ。


 中でも丞蝉の得も言われぬ覇気は、他の二人を完全に凌駕(りょうが)している……。

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