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第二百二十二話 思春期(二)

 一度、疾風が「女の話」をしてくれたことがある。

 その時紫野は(信じられない)と思ったが、頬を紅潮させた聖羅は、瞳をいきいきさせて聞き入っていた。

 疾風も聖羅をつついては笑い、紫野だけがひとり、しかめ面をしていた。

 自分にそんなことができるとは思わない。したいとも、思わない。

 女の体がそんな風になっていて、男とそんなことをするなんて――知らなくてもいいことだ。

「疾風は本当にそんなことをしたのか?」

 つい声にとげが出てしまったのは、まずかった。

 疾風は悪びれもなくうなずくと、

「ああ。子供のおまえには、ちょっと早かったな」

 片目を瞑り、紫野が一番迷惑だと思っている『子供扱い』をしてきた。

 紫野が静かに憤慨し、それきり口を閉ざすと、あとは聖羅の独壇場になった。

 ようやくおとずれた声変わりのために時々声をひっくり返しながらしゃべり続け、あきれながらも紫野は、こんな楽しそうな聖羅は久しぶりだと漠然と思った。


 とはいえ不思議なもので、疾風からそういうことを吹きこまれた紫野は、それ以来雪に――正確に言えば、雪の体に――注意を引かれるようになっていったのである。

 そんなことはしたくない、と思っていた自分は揺らぎ、(もし雪とだったら……?) と考えるようになったのには、紫野自身顔を赤く染めたことだった。

 自分とは一つ違いの、雪。

 いつも明るく笑っていて、賢い上に面倒見がいい。

 小柄で痩せていて、きっと胸もぜんぜん膨らんではいないはずだ。

 それでも雪の小さな体を強く抱き締めてみたい、そしてあのぽつんと赤い唇に、自分の唇を重ねたら……

 紫野の心はかき乱された。

 いや、心ばかりではない。

 体も何やら自分の体ではないような、以前から紫野を襲っているあの不安定な感じがますます強くなったようだった。

 それは夜、眠りとうつつの狭間に雪が現れ、紫野にまとわりついたり怒ったりするせいかも知れなかった。

 畢竟(ひっきょう)紫野は、実際の雪の前では、無理に無関心を装おわざるを得なくなっていたのである。


 葛藤は、春、高香がやって来るまで続いた。

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