第二十二話 照柿(一)
そんな訳で、その日から三日間、三人は思い掛けず寺で一緒に過ごす時間を与えられた。
初めは大いに戸惑っていた聖羅も、紫野と手鞠を取り合ううち声を上げるようになり、すぐに床に引っ繰り返って笑うようになった。
「やれ、この寺も騒がしくなったものじゃのう」
と皮肉を言う作造も、どこか浮き浮きとしている。
「お勤めの気が散ります」
恵心ひとりが膨れ面をして和尚に詰め寄り、だが和尚も、「まあまあ」と言ってそれをやんわり無視すると、目を細めて三人を見た。
「子供の笑い声はよいものじゃて」
二日目、三人は寺の庭で遊んでいた。
「違う。こうするんだ」
聖羅が小石を指で挟んで見せる。それから器用に手首をひねってぴゅっと投げた。石は目の前に立てた小枝に命中し、疾風と紫野は「ほおぉ」と声を上げ聖羅を見た。
「よし、俺もやるぞ」
年上の沽券に懸けて負けられない。
疾風は聖羅に見せられたとおりに小石を指に挟むと、片目を瞑り枝に狙いを定めて上から勢いよく投げた。が、石は少し左にそれ、疾風は「ちぇ」と口を尖らせた。
「しのもやる」
だが紫野が小石を指に挟もうとすると、石はポロリと落ちた。何度やっても聖羅と同じように石を持つことができない紫野のために、聖羅は「じゃ握るんだ」と言い、小枝をもう一本もっと近くに立てた。
「紫野はここからやれよ。まずは順々だ」
紫野は頷き、じっと小枝を見定めたかと思うと、真上に飛び上がりつつ投げた。それが疾風の頭をずっと超えるぐらい高く飛んだので、疾風は驚いてしまった。
「やったぞ!」
聖羅の目は石と小枝しか捉えていなかったのか、紫野の跳躍には気付かず、倒れた小枝へ駆け寄ると興奮したように紫野を振り返った。
「すごいぞ、一発で当てた。すごい!」
紫野も上機嫌である。
「もう一回、やる」
疾風はじっと紫野を見ていたが、今度は紫野は飛び上がらなかった。残念ながら、石もそれた。
「あーあ」
疾風もちょっと肩透かしをくらった気分だ。
『なんだ。さっきのはまぐれか』
しかし疾風は、二人と剣の稽古をするのが楽しみになった。