表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/360

第二百十一話 まどろみ

 朝目を覚まして紫野は、聖羅が真横で寝ているのに驚いた。

 いつの間に紫野の夜具にもぐり込んで来たのだろう?

 昨夜寝る前に、「二人の真中で寝かせてくれ」と両手を合わすからそうしたのに、それでも怖くなったと見える。

 紫野が聖羅を揺すると、聖羅はぼんやりと目を覚まし、半分寝ぼけ眼で紫野の顔を見上げ、ばつが悪そうに微笑んで見せた。

 (まったくもう。聖羅がこんなに怖がりだとは知らなかった)

 紫野はあきれたが、決して嫌な気がしたわけではない。またごろりと聖羅の横に寝転ぶと、肩に布団を掛けなおしてやった。

 それから昨夜見た夢を思い出し、漠然と考える。

 (変な夢を見ちゃったな。峠であんな怖い思いをしたからだ、きっと)

 浮かんでくるのは稲光のする空を背景に、火を囲む鬼たちの姿。

 だが鬼たちがしゃべっていた内容までは、思い出せなかった。

「おい、聖羅」

 紫野は聖羅を突ついた。

「怖い夢とか、見なかったか?」

 聖羅はもう起きている。紫野はそれに気づいていた。

 聖羅は、ううんと唸り、

「見ない……でもなかなか眠れなかったんだ。目を瞑ると、あれが――」

 そしてついにばっと目を開けた。

「紫野、おまえのせいだ。また思い出しちゃったじゃないか」

 二人がごちゃごちゃとやりとりをしているうち疾風も目を覚まし、「おはよう、紫野、聖羅。よく眠れたか」と声をかけてきた。

「鬼の夢を見た」

 咄嗟に紫野が声を上げる。

「鬼?」

 疾風と聖羅が同時に聞いた。

 が、結局紫野は、自分でそれを打ち切るように首を横に振った。

「何でもない。よく覚えてないし……特に怖い夢じゃなかったんだ」


 それから三人はまた横になると秋の朝をしばしまどろんでいたが、疾風は昨夜、強い花の香りに起こされたことを言わなかった。

 紫野の部屋にはもちろん、庭にも匂うような花などない。

 ふと、(まさか紫野?) そう思った疾風の目の先に、瞳を閉じた花より端正な紫野の横顔が横たわっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ