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第百七十四話 竜王のお告げ(二)

「黄金の龍を? 私が?」


 そう言ってから、高香には閃いたことがあった。

 (――自然の気だ。自然の気が集まって、龍の形をかたどったのだ)

 もともと自分が金色の気を出すことは知っていたが、それが人の目にどのように映るかなど考えたこともなかった。

 あの時虎太郎はそれを見、自分を竜王の使いなどと勘違いしたのだ。

 

 高香はつくづくと虎太郎を見た。

 意思の強そうな目をしている。

 自分は竜王の使いなどではないと否定したところで信じる男ではないだろう。

「虎太郎、そなた年はいくつだ」

 すると虎太郎は多少顔をほころばせ、まさにカエルが喉を鳴らすように、

「十六だ」

 と言った。

「そうか、十六……」

 そして自分の言葉を待っている虎太郎に、高香はゆっくりと諭すような口調で話し出した。


「十六ともなれば、立派な大人だ。村に貢献することが、第一の成人男子の役目ではないか? そなたの気持ちは嬉しく受け取っておこう。だが知ってのとおり、私は龍神に守られている。旅はひとりでも大丈夫だ――というより、これが私の役目なのだ。ひとりで旅をすることが」

 虎太郎は、ただぽかんと口を開けている。

「ひとりで――そうなのか?」

 高香は頷いた。

「人にはそれぞれ役目がある。そなたの役目は、龍神村を守り、盛り立てることだ」

「それは……それは、龍神様のお告げか? 龍神様が俺の役目は、そうだと?」

 虎太郎のひしゃげた目が涙に濡れ始めた。その身は感動のあまり、ぶるぶると震え出している。

「そうだ」

 再び力強く頷くと、高香は虎太郎の手を取りしっかりとその目をのぞき込み、語りかけるように言った。

「だからもう、決して人を傷つけてはいけない。人を悲しませてはいけない。村を守り、村人のためになることをするのだ。そして人々を導きなさい――いいね?」


 虎太郎の号泣する声は、まるで狼の遠吠えのように響き、状況がわからない和尚や作造はおろおろと高香の身を案じた。

 だが来た時とはうってかわり、幼子のように泣きじゃくりながら素直に頭を下げて寺を後にした虎太郎の様子に、拍子抜けの感がなくもなかったろう。

 

 その後、虎太郎は何年も龍神村の峠を守り、ついに下克上の侍どもの槍に倒れた。

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