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お見舞いへ行こう――その後


残金9020円。

夏休みのお小遣いはハイリスクハイリターン。


青い顔でガタガタ震えながら電車に乗っている少女を同じ車両の乗客たちがチラチラと見ている。


「電車のクーラー利きすぎだよな、可愛そうに」


「暑いし夏バテしっちゃったんだろうな……あの子」


彼女は得だ。



*


「おや、カリン殿?」


「……お侍さん!」


「奇遇でござるな、どちらへ行くのでござるか?」


「家に帰るんです。今お使いが終わって……お侍さんは?」


「拙者は『激辛ラーメン道場』へ行くのでござる」


(はぁ。やっぱり侍だ! 夏休みにも関らず道場行くんだ。しかも、このクソ暑い中『激辛ラーメン道場』だなんて……スゴイよ侍! あたしも修行したいなぁ……っつか、あんな目に遭ったんだし、ラーメンくらい食べて帰っても良いッスよね?)


「あの……あたしも、行っていいかなぁ?」


「ム……拙者修行中の身故、女人と同伴だなど言語道断。申し訳ござらぬが……」


「ダメ……?」


「オッッッケェーー!!」


サムズアップする侍。

カリンは未だに侍の名前を知らない。



***


「ふぅむ……それにしても、ハフハフ、激辛フカヒレ味噌ラーメン……辛過ぎてフカヒレ台無しですなぁ」


「カリン殿は修行が足らぬぞ? この辛さの中にフカヒレの味、食感を見出す事こそ活路を見出す侍の道であると心得ろ」


(さすが、侍! 否、師匠! もう弟子になる!)

「申し訳ありませんでした! 師匠!! 修行し直します! オヤジこれと同じラーメンもう一杯!」


「うむ。拙者も……あ、オレやっぱ替え玉で良いッス」




残金7820円。

最初の一杯は師匠が奢ってくれた。



*


「ううううぅぅー」


口も舌も痛くなりながら、家に帰ったカリンは冷凍庫を漁り始めた。


「アイスない? お母さん」


「夕飯前に食べないのよ」


「さっきラーメン食べたから夕食いらない」


「まったく……アイスなら冷凍庫に入ってるわよ? ちゃんと探しなさい」


「あったー!」


白くまバーを手に部屋へ戻ってクーラーのスイッチをONするカリン。


(歩き回って汗かいちゃったし、とりあえずTシャツ脱いどこっと。アイス食べたらシャワー浴びよ)

「……っつか、自分の部屋だしパン一でよくね?」


名前:カリン

種族:人間

装備:パンツのみ


――ポチッ


クーラー全開、22℃。


「クーラーの真下で食べるアイスは格別ですなぁ……ふぅ……余は満足じゃ」


(なんだか……食べ過ぎて眠くなって来ちゃったぁ)


眠くなって…………


眠くな…………


眠く…………



…………



ぐー……


ぐー……




***



「カリン? 水原さんがお見舞いに来て下さったわよ?」


「ゴホッ!? (マジで!?)」


喉が痛くて声を出せないカリンは咳しか出せない。


「やあ、カリン。酷そうだね、可愛そうに」


「ゲホン、ゲホホン! (先生! そんな心配してくれて!)}


「はい。お見舞い」


タツキのお見舞いはお花とフルーツ盛り合わせ。


「熱が大分あるみたいだねぇ」


(先生の手、ひんやりして気持ち良い。たまぁに、こうやって優しいんだよね……)


――カシャッ!


「ゲホッ!?」


「ヨシ、見事に『夏風邪をひくバカ』の写メ入手」


「ゲホゲホッ! ゴホッゴホッ! (こんのガキーー!!)」


「ま、早く治してね。お大事にぃ」



残金7820円。

お小遣いは減っていないが、夏休み残り3週間。



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