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初恋調査


 タツキは眉間に皺を寄せてPCに向ってデータを入力していた。ICBMの着弾半径の計算のためのパラメータを入力しているのだ。


「あ、やり過ぎた……大統領の脳天直撃だな、これじゃ……」


 ICBM脳天に直撃って意味ないだろ? などと言いながらパラメータを減らしたり増やしたり調整をしていく。それが終わると、現在地球に向っている隕石の軌道のシミュレーションを始めた。


「13光年か……ん? 13光年……ちょっと待てよ……」

 

 ぶつぶつ言いながらノートに手で計算をしていく。数字よりアルファベットやギリシア文字の多い計算はカリンが見たら「外国語の勉強ですか?」と言いそうだが、ブツブツ言いながら計算をするタツキは真剣そのものだ。


 そして1時間後、アルファベットやギリシア文字の計算結果は何故か梵字になっていた。それからタツキは計算結果を持って、研究室に籠り何かを作り始めた。


「……できた!」


 果たして何ができたのだろうか?



***


「確かここだったな……」


 タツキは住宅地をキョロキョロしながら歩いていた。注意深く歩いていると、目の前を勢い良く三輪車で横切る子供が目に入った。

それはぱっちりとした目がキラキラとして、小さな鼻がちょこんと付いたふっくらした頬の可愛らしい幼女。今のうちにツバを付けておこうとヘンタイでなくとも思うような愛らしさ。


「あれか……!?」


 タツキはその子に吸い寄せられるようにコソコソと人に見られないように後を付いて行った。

 二人は15分ほど経つと人気のない公園に辿り着いた。


 幼女はニコニコしながら真っ先に砂場に向かい、小さな手で砂を盛り始めた。とても楽しいのだろう、ときどきキャッキャと笑い声が聞こえる。砂を盛ると天辺に拾ってきた木の枝を刺して、少しずつ崩していく。

 しばらくそこで夢中になって遊んでいたかと思うと、次はシーソーに向って行った。一人でどうやって遊ぶのかと思っていると、シーソーの上をゆっくりと歩いている。シーソーの真ん中に来ると上手くバランスを取りながらパタンパタンと交互に上手に倒して遊んでいるのだ。

 それが飽きたのか次に彼女はブランコへ走って行った。

 最初は座ってキーコキーコと漕いでいたのだが、思い立ったように突然立ち上がって膝を屈伸させて漕ぎ始めた。


「ぶっ……!」


 そしてワンピースを着ていた幼女のくまさんパンツが丸見えになりタツキは鼻血を吹いてしまった。今更、女性の下着どころかその中身も見慣れているくせに、幼女のパンツを見て鼻血を吹くショタ。


「何やってるんだ、カリンは……? それにしても来ないのか?」


 鼻血を吹きつつも、危ないじゃないか、とハラハラしながら見守るタツキ。

 カリンの思い出に間違いがなければ、そろそろ初恋のお兄ちゃんとやらがやってくるはずだ。


 そう、タツキが作ったものはタイムマシン。

 作るつもりは全くなかったのだが偶然出来てしまい、カリンの初恋の相手を探るべく13年前にやってきたのだ。だが、それが今日とは限らない。

 そもそも、タイムパラドックスなどの弊害を考えると作っても使って良いモノではないのだが、作ってしまったら使ってみたい。それが、人間の性だ。

 だから人との接触がないように、コソコソしながら後を付けてきたのだ。


 そうこうしているうちにちびカリンはブランコが地面と水平になったときに手を離してジャンプをした。

 が、ジャンプするタイミングを間違えたのだろう、バランスを崩して頭から地面に向って行った。


「危ない!」


 タイムパラドックスどころではない。タツキはダッシュして寸でのところでカリンを受け止めた。少し肘を擦りむいたがカリンが無事なら問題などない。


「……お兄ちゃん誰?」


「ヒヤヒヤした……怪我はない?」


「うん! お兄ちゃんは?」


「僕は大丈夫だよ」


 カリンの太陽のような微笑みにつられてタツキも笑った。


――そういうことか!


 タツキはすぐに全てを理解した。


「お兄ちゃん、鼻血」


「ああ、ちょっとぶつけたかな……大丈夫だよ!」


 それから鼻にティッシュを詰めたタツキはカリンと砂場でお山崩しをして遊んだり、ブランコを漕ぐカリンの背中を押したり、鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり楽しく遊んだ。

 いつの間にか夕方になったのか、暗くなる前にタツキはカリンを家まで送ってあげた。


 そして「またね」と言って現在に戻って来た。




*


「カリンの初恋の相手は僕だったんだな……運命ってヤツか……」


 タイムパラドックスも何も、間違いなくタツキはカリンの過去にいたのだ。全て起こるべくして起こったことなのだ。


 ニヤッと笑いながらタツキはタイムマシンを破壊した。





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