出会い③
現時刻1時半過ぎ。
リンダは薫の携帯を拾った時計の前に立っていた。
私は空を見ながらぶつかった子の事を考えていた。
本当に好きになってるのかな?本当に一目惚れしてるのかな……?どうなんだろう……?結局は分からない。…………また出会えば分かるよね。きっと…。そんなことを考えてたら声をかけられた。でも目的の人では無かった。
「君一人?だったら俺らと遊ばね?」
面倒なのに捕まっちゃったな…。
「…私、人を待ってるんです」
「いいじゃんかよ~、そんなやつほっといてさ」
「…私に構わないでください」
「そんなつれない事言うなよ。そんなことより遊ぼうぜ」
いきなり腕を掴んできた。
「離してください」
「今のうちに言う事聞かないと痛い目みるよ嬢ちゃん」
面倒くさいなぁ。能力使ってノシちゃうか?でもここじゃ人目を引くし。どうしよう。誰かが助けてくれるのが一番なんだけどね。…そんな勇気ある人居るわけ無いよ。
そしたら何故か今朝ぶつかった子が思い浮かんだ。…まさか、そんな都合良く来てくれるわけ…。
「おい、やめろよ。嫌がってるだろ」
…え?
「何だよてめぇ、ヒーロー気取りか?あ?」
「…ヒーロー…か、ある意味あってるな」
もう一度良く見る。……やっぱり、今朝ぶつかったあの子だ。
「はぁ?」
「そのままの意味だよ。それに、その子に用があるし、知り合いなんだ」
何で来てくれたんだろう。いや、携帯を探しに来てたまたま来たのかな?
そんなことを思っていたら不良が私の腕から手を離し臨戦態勢になっていた。
「あぁ、成る程。てめぇが待ち人か。ちょうど良いてめぇが居なくなりゃ遊べるって訳だ」
…何言ってるんだか。遊ぶなんて一言も言ってないのに…。きっと自己中な馬鹿なんだろうな…。
「待ち人?」
「てめぇのことだろうがよ。とぼけてんじゃねぇよ!」
不良がいきなり殴りかかってきた。が薫はそれを簡単に避けて、溝に一発ぶち込んだ。
「おげぇっ!!」
「正当防衛成立…」
薫がそう呟き終わると不良は倒れた。
「てめぇ!」
もう一人の不良がさらに殴りかかってきた。薫はそれを難なく避け…
「先に殴ってきたのはそっちだろうが、よ!」
見事にボディーブローが不良に決まった。
「おごあっ」
もう一人の不良も力なく倒れる。勝てないと悟ったのか、残った不良が倒れた不良達を抱え、
「くそっ!覚えてろ!」なんて捨て台詞を言いながら逃げていった。
わぁ、簡単に倒しちゃったよ。にしても動きが良い、良すぎる位に…。訓練されてるのか身体関係の能力者かな…?
リンダは少し考える。最初に殴りかかられた時、不意打ちに近いのに簡単に避けた。さらに綺麗に溝に一発…。何かの訓練でも受けてるのだろうか?それとも…
「ふぅ。君、大丈夫?今朝ぶつかった子だよね?」
「あ、はい。そうです」
不意に声をかけられたが冷静に対応し、すぐに思考を変える。
「やっぱり。あのさ、今朝ぶつかった時そこら辺に黒い携帯落ちてなかった?」
「これですか?」
リンダはそう言うとポッケから拾った携帯を取り出した。
「あ、それそれ。ありがとう。拾っていてくれたんだね」
「あの時急いでたみたいだから渡せなくて持ってたんです」
「あ、あの時か。あの時登校初日なのに寝坊して遅刻しかけてたんで急いでたんだよね。ごめん」
彼はアハハと苦笑しながら頬をポリポリしてた。話しているとドキドキしてきた。
「……あの返してくれるかな?」
「え?」
私はまだ彼の携帯を握っていた。それに気が付くとすぐに彼に渡した。
「あっ、ごめんなさい!」
「んっ、ありがとう。それじゃ」
彼は目的の物を受け取ると帰ろうとした。……何だろう。…何でだろう。…何で、まだ居たいと思うんだろう。
「あ、あの!」
少し大きな声で呼び止める。ちゃんと聞こえたのかこっちを振り向いてくれた。
「さっきのお礼をしたいから、一緒にレストラン行きませんか?」
自分で言ったことが恥ずかしい。でも本心でもある。まだ彼と一緒に居たい。何故かそう思ったから。
少し考えてるのか、返事が少し遅かった。
「……うん。良いよ」
その時、彼の顔を見て私の気持ちは確信になった。……私は、彼が好きだ。名前も知らない彼に、一目惚れしていたのだ。
少し遅くなってすみません。
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