友として?黒き暗殺者として?④
読者の皆様明けましておめでとうございます。今年もSEEDをよろしくお願いします。
暗くてひんやりとした廊下を篠本と一緒に静かに歩く。普通に歩くと音でばれる可能性があるからな。まぁもっとも、暗闇と同化してるから問題ないんだけどな。
「ヒソヒソ(ずいぶんと暗いなここ)」
勿論篠本は気付いてないから真っ暗な廊下と認識している。
「ヒソヒソ(多分寝ているんじゃね?)」
「ヒソヒソ(だったら早く行った方が良いじゃねぇか?)」
「ヒソヒソ(早く歩いたりしたら足音でばれちまうかもしれないからダメだ。ゆっくり行くんだ)」
まぁばれないんだけど。
息を忍ばせてゆっくりと出口に向かう、万が一に出くわしたらこいつをぶち込めば良い。
……そろそろ出口だ、解除するか。
「ヒソヒソ(おっ、出口が見えてきたぞ)」
「ヒソヒソ(ああ)」
出口を開けようとした時、突如後ろの部屋のドアが開いた。
「「!」」
「連絡がこねぇな、アイツ寝てやがるな」
頭をかきながら男が一人部屋から出て来た。
やばい!とにかく暗闇の中に隠れるしか!
薫は篠本を引っ張って暗闇の中に逃げ込んだ。篠本も何も言わずに居る。
男がゆっくりとこちらに向かってくる。勿論薫達には気付いてはいない。男は薫達の横を通り過ぎ、出口の扉を開けた。
そこから月の光が漏れだしてくる。
しまっ……!
「ん?……お前どうやっ……!」
男が何かを言い出す前に薫が「身体強化」を使って腹に渾身の回し蹴りを喰らわした。
痛っ!防弾チョッキみたいなの着けてるからかてぇ!
「おおっぐ……」
止めに顎に膝蹴りを食らわせる。
「がっ……!」
男が外に吹っ飛ぶ。今のでばれちまってるはず!
「篠本!早く行くぞ!走れ!」
「お、おう!」
急いで貨物船から脱出する。
薫と篠本は港の入り口付近にあるコンテナの中に隠れていた。
「ハァハァ、ハァーーー。ここまで来れば大丈夫か?」
「ああ、流石に追ってこれないだろう」
にしてもおかしい、おかしすぎる。あんだけ思いっきりやったんだ、追っ手が来ないはずが無い。
「ハァハァ、なんで追ってこなかったんだ?」
「わかんねぇ……、普通追っ手が来る筈なんだけど…。まぁいい、後は姉ちゃん達が来るまでまとう」
「ハァハァ、あぁ…」
それにして、結局使わなかったなこれ。念のため奪っておいたんだけどな。
「お前、それスタンロッドか?」
「ああ、念のため盗んでおいたんだけど、使わなかったな」
「結局蹴り倒したしなお前」
「焦っててな、流石に肝を冷やした」
「俺も。もうダメかと思ったよ」
それ以降会話は続かなかった。後は待つだけだ。
それにしても、本当に何で追っ手が来ないんだろう。何か命令する声も聞こえなかったし、それに、ぶちのめした男、確かに見張りが居ると言った。俺が来た時には誰も居なかったのに。……まさか俺以外にも誰かが進入していた?誰が?何のために?それとも統制機構の人間?
ブーーーン、キキィ
そんなことを考えている内にどうやら付いたらしい。
「行くか」
「ああ」
「おーーーい!姉ちゃーーーん!こっちーーー!」
「薫っ!?あんた何でここに居んのよ!」
「わり、先に助けちまった」
「馬鹿っ!」
「痛っ!」
姉ちゃんに拳骨された、まぁ当たり前だけど。
「あんた自分が何をやったか分かってるの!?反SEEDのテロリストに喧嘩ふったのよ!?自殺行為じゃ無い!」
「大丈夫だよ、相手は寝てたし。確かにヤバかったけど……」
さらに拳骨を喰らった。
「さらに!?」
「なんで私たちを待たなかったの!?」
「早く助けたかったんだよ…」
「自分のことも考えなさい!薫は能力者なのよ!?わざわざ殺されに行ったのよ!?」
「うぐっ」
姉ちゃんはいつもダラダラしてるけど仕事になるとすごく真面目になる。だから怒っているけど俺のことを心配してくれてるのも凄く分かる。
「も~翔子、いい加減にしてあげたら?」
「だって!」
「弟君が大事なのも分かるけど、早くお友達を助けたかったんでしょ?良いことじゃない」
「そうだけど……」
「でしょ?早く片付けちゃいましょ。お説教はその後でも出来るでしょ」
「……分かったわよ。薫!後でまた説教だからね!」
そのまま姉ちゃんは同僚の人に連れてかれた。
「あっそうだ、弟君。君にも聞きたいことあるからこっちに来て」
「あっはい、分かりました」
聞きたいことはきっとテロリストの数や細かい場所、どういった場所に潜伏していたかだろう。俺も姉ちゃん達に付いていき、事情徴収され篠本と一緒に保護された。そして姉ちゃんに一時間近く説教された。