The Wedding Day
注意:文才に関して、初心者です。どうぞ宜しくお願いします。
「いぃ~~~やぁ~~~だ~~~!!!」
「着なさいったら!わがまま言わないの!」
「絶対・・・イヤッ!」
幼子とお母さんのような会話が聞こえてくるのはローリングという小さな村の小さなパン屋の二階にある一つの小さな部屋だ。“小さな”を連呼したが、その小さい世界が只今叫んでいる女の子の全てであった。何やら部屋に居る二人は、白いドレスを持って着るか着ないかと喧嘩している。
「私は・・・絶対こんなドレスなんか着ないし、あんなデブなんかと・・結婚・・・なんかしないっ!!」
青いカリブの海を写したような目と深い、目とはまた違う青の髪を持った女の子が言った。それに対し、
「な、何を言うかっあんな素敵な方の事をデブ・・と。あの人と結婚したら村一番幸せになるのよっ!!」
白い綺麗なウェディングドレスを持って女の子より一回り年上の女性は言った。
確かに、村一番金持ちの息子と結婚できたら、(金銭面では、苦労せずに)幸せだろう。
ローズは、好きな人も居ないし、お金のことを考えたら、結婚すると得なのだろうなとぼんやり思うが、どうしても、自分の思う幸せに繋がる気がしないのだ。漠然とそう思う。両親が事故で亡くなってからローズと双子の弟を母親代わりに育てつつ両親の残したパン屋を経営して働き続けてきた姉は、お金持ちと一緒になるのが一番幸せと考えるようになる。その姉に言っても、しょうがないことなのだが。
なのでわがままと思いつつもとりあえず、こう反抗してみる。
「でも世界一ではないわっ」
「まだそんなことを言ってるの?身近に居て、しかもローズ、アナタと結婚したいと言ってくださってるのよ?とにかく今日は、式なんだからこれを来てちょうだいっ!」
そうなのだ。ずるずる嫌だ嫌だと言って来たが、もう後が無い。今日が結婚式。でもやっぱり、
「いーやーだーっ」
また同じ様に、繰り返されそうと思われた頃、12:00のベルが鳴った。
つまり式の始まりである。
「姉さん!これが・・・この結婚が私の、妹の幸せだと思ってるの?私、ずっとパン屋の娘でいいの!二人でパン屋経営していこうよ!もし私が後で後悔したら(絶対する)どうしてくれるの?」
「まぁ、大丈夫でしょう。だってあの人村一番金持ちだもの。後悔なんかしないわ。」
どこからその確信は来るのか謎だ。
「お金がすべてじゃないわよ!」
「なに言ってるの。大丈夫大丈夫。」「どこが?!」何が大丈夫なのか良く分からない。
「でもね・・・」姉は続ける。
「なによ」
「離婚したり、家に帰ってきたりしたら許さないからね。」にっこりと笑い姉は、その綺麗なエメラルドの目を細める。
「む、無責任っ最低っ信じられないっ!!これは私の人生だよ!?」
もう一応18歳なのに何故人生を姉に決められるのか。
「はいはい。ぁーーーーもぅ始まったわよ。」
姉は容赦ない。
この結婚は姉とそのデブ・・・ゴホンッ・・ステキな金持ち息子の親が決めたことである。
そのステキな息子は、ローズの写真を見て気に入ったらしく、結婚はノリ気である。勘弁して欲しい。
もちろんローズは嫌がったが姉が金さえあれば幸せだと信じてるのでローズの気持ちなんて無視。
けれど。
「あんたは、まだ恋したことないし、結婚は確かに早いかもしれないけど、私は早く安心したいの。この先、ローズを嫁に欲しいと言って且つ、お金持ちの人って現れないかもしれないし。」
その言葉に、そろそろ姉への親孝行ならぬ姉孝行しなきゃいけないな、と思って抵抗を諦めたローズだった。双子の弟は優秀らしく、ある名家の養子に入り、今は大きな都で騎士になる為の勉強をしている。最近は、あまり音沙汰が無いが、姉は弟が養子に出た時、『ルース(弟)、騎士になる夢に少し近づいたね。よかったね』と、とても幸せそうだった。
(何が幸せか分からない・・・けど、姉にはずっと幸せになってもらいたい。)
だから・・・。
ーーーーーーーーーー
音楽が鳴り響き、白いドレスを纏ってでてきた彼女は誰もがハッとするような美しさがあった。青の目と髪が純白のウエディングドレスによって引立ち、空と雲を連想させる鮮やかさだった。
。
(あぁ・・・着てしまったよ・・・・そういえば、このドレス、お母さんも結婚式で着たものだって姉さん言ってたな。のわりに、傷んだりしてないなぁ。・・・・。現実逃避も、もう出来ないっ・・・もう私結婚するんだわ・・・。ついこの前まで子供扱いだったのに・・・。18歳になったら・・・いきなりコレだもんなー。)
ローズが音楽に合わせてゆっくり歩いている先にはあの憎き彼女の夫(になる予定)が待っている。
あのムチムチの腕、ぷくぷくの顔・・・。にっこりしてるつもりか分からないけどとにかく顔は歪んでる。それだけなら別にいいのだが、一番最初に会った時に上から下までじろりと見られた時のあの悪寒は今も忘れられないし、(姉は『きっと照れてらしたのよ』と言う。何故そうなる?!)噂によると女子が森の中にある温泉(もちろん脱衣所なんてのも何もない自然温泉だ。)に入っている時にわざとその近くを通るとか。性格はまだすぐに判断できないが、良い噂はあまり聞かないのが証拠だろうか。
(なんで私なんだろう?こいつには好意も持ったこと無いし。優しくした覚えもない。
やっぱり、顔で?・いやいやいや。だったら姉さんの方が美人で料理もなんでもできる。
分からない・・・・何で私?
私の取り柄は健康だけだしっ。分からない・・でも別に分かりたくもない。)
夫になる予定の男との間の距離が短まった。あと少しだ。
気付いたら長いと思っていた赤い絨毯の半分は歩いてしまった。
(嫌だ)
ローズは、とたんに逃げ出したくなった。諦めたはずだったのに。
彼女の一番たどり着きたくなかった所にたどり着き、隣の男と向かい合ぅ。男の太い唇がむにむにと動いてる。
あ、そうだここで、キスもするんだっけ。と思った瞬間、
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)
ローズの全身に鳥肌が立った。神父の話も耳に入らない。嫌悪感しか感じない。
神父の話が終わり彼女の隣にいる何もかも太い男が、
「はい、誓います。」
と言った後、彼女の方にも聞いてきた。ハッと聞かれていることに気付き、
とっさに『絶対っ誓わねえよ。タコ』と言いそうになり、口をいったん閉じ、彼女はチラと姉を見た。
(愛しそうに、よかったね。って顔してるね。姉さん安心してるの?本当に私が幸せになれると信じてるのね。嬉しいの?・・・これで姉さんの負担は何も無くなるよ。)
ローズの脳裏に両親を亡くしてからの姉と弟との日々がうかぶ。
姉さんが少ないパン屋の収入でお洒落もしたいだろう年頃の自分の服は買わずに、その分を食費にあてていること、毎日同じような服を着ている姉を冷やかす同年齢の子がいたこと、そうとも知らなかったその頃のローズと弟は毎日のように食べたいだけ食べていたこと。
そして、ローズ達の前では、いつも明るい姉が、ひっそりと枕に顔をうずめて両親の名を呼びながら泣いていたことに初めて気付いた日の夜のこと。
(私が居なければ、姉さんの生活も楽になるし。そろそろ姉さんを『保護者』という役目から自由にさせないと。)
意を決してローズは言う「・・・。ち、ち、誓ぃ・・ま・・」
バリン・・・
教会の中の人が一斉にさっきまで新郎新婦に様々な色の光を落として綺麗に輝いていたステンドグラスに注目した。無残に割られ、日の光が容赦なく降り注ぐ中、変な服を着た人達数人がステンドグラスの枠に立っていた。
1人、その中で一番威張ってる黒髪の男がローズ達の前へ飛び降りてきた。
彼女が、(足・・痛くないのかな?我慢してるのかな。かっこつけてるんだなきっと。)なんて考えてるうちに、その男は彼女の隣にいるデブな男を殴り倒した。
(あの余分な肉が一番ある場所を殴ってたからそんなに痛く無いんじゃないかな。)と彼女が倒れた彼の腹を見ながら思ってた時、男は彼女をひょいっと持ち上げていた。
そんなことを予想もしてなかった彼女は、驚きながら、
「な、なにするのよ!?」
「ごめんな 式めちゃくちゃにして。あんたには興味ないけど、そのドレスに興味あるんだ。」と男はちっともめちゃくちゃにして悪くも思っていない顔で言った。しかも、失礼である。
「めちゃくちゃにしたことはどぅでもいいのよ。私こいつ嫌いだったもん。」つい、本音が出るローズ。
「なんだそりゃ。ま、とにかく、この子の親御サーーーン。ドレス脱がすの面倒だからこの子を2日ほど借りますねーーーーー。」その男は左眉を器用に上げてローズに呆れた後、唖然としている人々の顔を見てニカッと爽やかにそう言った。
「え?」彼女はわけわからないという顔でこの男を見た。
ローズも周りの人々も突然の訪問者に状況が分からないまま、あっけにとられている間に、教会を出てさっとローズを馬に乗せ走り去っていった。争いというのがあまり無いこの平和な田舎の村は、平和ぼけをしているせいか、ローズが誘拐されたと気付く頃には、ローズはこの村の外にいた。
ローズは、この男に誘拐された事にあまり恐怖を感じなかった。
むしろ彼女にはその男は白馬の王子に見えたから。
(ただ、残念なことに男の乗っている馬は白で無く茶色だ。)
ローズ・ルースは18歳。姉は一応25歳の設定です。
ローズにとってルースと姉はかけがえの無い大切な家族です。
そして小さなパン屋がローズの世界の全てでした。




