2・告白
―――三年前。
全てが暇だった。
外見が悪い方だった俺は近寄ってくる女子がいるわけもなく、剣道部に所属していたので剣道一筋だった。
剣道部で知り合った女子とはそれなりに仲が良かったが、彼女の気は俺にはいささか強すぎた。
彼女の友達がいると言うので、俺はちょっとだけその彼女の“友達”と話すことになるのだが、それが俺と“彼女”の出会いだった。
彼女と“友達”は中1から同じクラスだったらしく、今回も同じクラスになったとか言って、すごく二人は仲が良かった。
席替えがあり、彼女と同じ班になった俺は彼女と話をした。
こんな俺にでも躊躇なく話し掛けてくれる彼女に驚いた。
「ねぇ、みやちゃんと同じ剣道部なんだよね?」
彼女は剣道部の方を“みやちゃん”と呼んでいた。
多分、萩ノ宮だからだと思われるが・・・・・・俺は頷いた。
「やっぱりそうなんだ!みやちゃんが原田君も一緒だって言ってたから。」
彼女は可愛い顔に花を咲かせるように笑うと前に向き直った。
格好は萩ノ宮とは不釣り合いなほど正反対で、気が強く、反発するものには叩きつぶす萩ノ宮の友達とは思えないほど、大人しく、スカートは長く、いかにも地味そうだった。
何回か同じ班になり、彼女は俺を原田君、から原田と呼ぶようになったが、萩ノ宮と彼女の性格の差は何故友達なんだ?と疑問を覚えるほど違っていた。
そしてまた、俺は彼女を好きになっていた。
昼休み一番長く話している女子は彼女だったし、俺の一番近くにいる女子も彼女だった。
たぶんそれは彼女もそうだったのかもしれないと思う。
彼女は男女構わずに誰にでも話し掛ける萩ノ宮とは違っていたし、友達も少ないほうだったと思うからだ。
そのせいで俺らは周りから「付き合ってんじゃねーの?」と噂をたてられたが、そのたびに彼女は「うちと原田が付き合ってるとか原田にも失礼じゃん?うちらは友達なのに!ね!」と俺に話題を振っていたので、少なくともこの時から彼女が俺を好きにはならないことは分かり切っていた。
俺は・・・・・・友達止まりなのだ。
それでもよかった。
ただ、彼女といられればそれだけで。
だから、その発言も何度か聞いたのだが、俺はあまり気にしなかった。
わりと何度も同じ班になり、彼女の隣の席も三度ほど座った頃、「ねぇ、最近みやちゃん元気ないの・・・・・・部活でなんか起こったことない?」と聞いてきた。
俺は曖昧に「まぁ、」と答えると、彼女は怒り気味に「ダメじゃん!そーゆー時は原田が支えてあげなくちゃ!」と言ったとき、萩ノ宮が「だぁぁぁあっ!そんなこと言わなくていいっ!」と彼女を怒った。
彼女は驚いて目を丸くしたが、すぐ戻ると、「でも・・・・・・」と呟いた。
当時の萩ノ宮は俺から見ても無茶をしていたし、その無茶がたたってか周りからもウザがられていた。
本来ならこの年から新一年が入ってこなかったため、剣道部は無くなるはずだったのだ。
俺は・・・・・・いや、俺だけではない。
剣道部の連中は皆、剣道部がなくなったらどこにはいろうかなぁくらいの楽天的な考えしかなかったのだが、萩ノ宮は「先輩からよろしくねって頼まれてるの。」と言っていたので、その旨を彼女が俺よりも、誰よりも萩ノ宮の苦労を知っていたのかもしれないと思う。
「原田が剣道かぁ、覗きに行くけどいつもみやちゃんしか見ないなぁ。」と彼女が笑ったときは、正直こちらも覗きに来ていたのかと驚いた。
それから数日たち、とたんに彼女の元気がなくなった。
季節は春から冬へと移動して、また春を迎える準備をしていた頃ではないかと思う。
俺は少し気になったが、ある日唐突に「サキ、引っ越しちゃうんだって。」と萩ノ宮に言われた。
竜宮 サキという名前だった彼女は、女子からだいたいサキと呼ばれていたが、俺は何が起きたのかいまいちよくわからずにいた。
でも、冬休みを超え、春休み何週間か前くらいに「うちが引っ越すって知ってるよね・・・・・・?」と聞かれて、事実だったのだと思った。
たぶん彼女も自分の転校を知らない人はもういないと見兼ねていたのだろう。
俺は「うん、まぁ。」と曖昧に頷くと、「うん、だから言ったじゃん!同じクラスになることはありえないって!」と苦笑した。
確かに俺は来年のクラス替えの話をした。
彼女は、その時から転校が決まっていたらしい、俺はてっきり二年も続けて同じクラスになるわけないという意味だと思っていた。
そして、数日後、彼女には好きな人がいることを知っていたが告白した。
誰だかはしらなかったし、絶対に振られることはわかっていたが、それでもいなくなった彼女の影を追い求めて後悔するのだけは嫌だと思ったのだ。
結果は・・・・・・彼女を泣かせてしまった。
まさか泣いてしまうとは思いもしなかった。
彼女の言い分は、“大事な友達を傷つけたくない。でも、うちは時が経てばいなくなる。どっちを選んでも原田を傷つけることしかできない。”と。
そうして1日ほど彼女が俺の彼女になった期間があったが、やはり無理があると思った。
彼女は、“・・・・・・やっぱり友達じゃダメなのかなぁ?”と言いだしたのだ。
そりゃ、そうだろう。
俺は“わかった”と返事をして、俺の思いは呆気なく2日ほどで終わった。
でも、思いは消えることがなかった。
何度かメールをした。
彼女もメールを返してくれた。




