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赤いチューリップ、花言葉は  作者: 楠木千佳


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8/9

答え合わせの、九月(1)


 二学期が始まってわりとすぐに行われるのが、文化祭だ。一日目は在校生徒のみ、二日目が一般公開となる。

 体育祭が終わるとすぐに生徒会と文化祭委員会主導のもと話し合いや各クラス、参加対象部活で準備が始まって、夏休み後半頃から二学期頭にかけて本格的に文化祭ムードが漂いだす。

 各クラスの催し物の分類としてはアトラクション、飲食、劇、展示の四つとなり、奏汰のクラスは飲食担当になった。いつも昼休みにパンを売りに来てくれるパン屋の方に協力してもらい、パンを売る。教室内では販売だけだが、他に休憩所として開放している教室では食べてもいいように案内する形式だ。

 当番は一人あたり一時間程度でシフトが組まれるので、それ以外の時間は自由になる。

 アイスやお菓子を売っているクラスもあれば、お化け屋敷や迷路、縁日なんかもあり、そして体育館では劇や有志によるバンド演奏などもあって時間なんていくらあっても足りない。

 一日目の自由時間を、橋詰と一緒に端から端までひとまず見て回っていた奏汰は最後の四階まで来ていた。シフトは二人とも開始直後の時間枠だったので後ろを気にする必要もないので、なおのこと好き勝手ができる。

 四階は展示がメインなだけあってか、人はほとんどいなかった。

 パンフレットを見ていた奏汰に、橋詰が「あ、悪い」と声をあげる。


「俺、一旦部室行かねぇと」


 やけにスマホを触っていると思ったら、サッカー部の先輩に呼ばれているらしい。


「また連絡するわ」

「おっけー」


 上ってきたばかりの階段を一段飛ばしで降りていく橋詰には悪いが、奏汰としては実はちょっと有難かった。この階に気になる展示があるのだが、なんとなく橋詰と一緒だと気恥ずかしいというかむず痒いというか。

 一人になったのをこれ幸いと、手前にある静かな教室を覗き込む。


(入って大丈夫、だよな)


 誰もいないのかと思ったら、奥に机があり眼鏡をかけた女生徒がぽつんと座っていた。目が合うと会釈されたので、慌てて頭を下げ返す。


「ご自由にどうぞ」

「どうもお邪魔します……」


 女生徒はノートのようなものになにか書き込んだ後すぐに脇に置いてあった文庫本を開き、それ以上なにか言うことはなかった。

 美術部の作品がパネル展示されているその教室は文化祭中とは思えぬほどしんとした空気を漂わせている。賑やかで人が集まりがちなアトラクションや飲食のエリアとは階が違うせいかもしれない。

 緊張しながらそろりと教室へと足を踏み入れた。

 美雨が美術部だと教えてもらったのはわりと最近の話だ。夏祭りの時に連絡先を交換してもらえたおかげである。

 奏汰はパンフレットに『美術部作品展示』と載っていることを知った時から、彼女の描く絵が見てみたくて、ここが気になっていた。


(橋詰いないから気兼ねなくじっくり見れるし……というか、どの絵も上手だなぁ……)


 絵に詳しいわけでも興味があるわけでもない奏汰が抱ける感想なんてその程度だ。本心であることは間違いないが、こんなやつが来ていい場所ではないような気がしてくる。

 入口付近から順番に眺めていくなかで、パッと目に飛び込んできたのは淡く優しい色合いのチューリップだった。


(あ、これ)

「ーー青野君?」


 反射的に振り返る。

 同じTシャツを着た美雨が、奏汰を見てぱちぱちと瞬きをした。


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