相棒と食事
昼の鐘が鳴る少し前。
中庭の木陰で、変成科の四人は自然に集まっていた。
シアンが先に口を開く。
いつもより声が弾んでいて、隣に立つファルケの袖を軽く引いている。
「ごめん!今日はファルケと東屋でお昼するの」
申し訳なさそうな素振りは、ほとんどない。
むしろ楽しそうで、隠す気もない笑顔だ。
ファルケは照れたように視線を逸らしながらも、否定しない。
そのまま二人並んで歩き出していく。
……仲良しだなぁ。
いいなぁ。
そう思いながら見送っていると、隣から肩を軽く叩かれた。
「じゃあ、俺たちは食堂?」
振り返ると、レックが当然みたいな顔をして立っている。
「うん。肉食べたい」
即答すると、彼は肩をすくめた。
「野生が抜けてませんなっ」
「濃かったからね! 三ヶ月!」
食い気味の返事に、レックは堪えきれず吹き出す。
「ははは!」
並んで歩き出す。
人の流れに混じりながら、自然と歩調が揃う。
食堂は相変わらず混雑していた。
トレイを手に列に並び、空いている席を探す。
いつもの場所。
壁際の、少し静かなテーブル。
腰を下ろすと、レックが自分の皿を指差した。
「あ、これ美味しい。食べてみて」
差し出された一口分を受け取る。
「……うまっ」
思わず声が出ると、満足そうに頷かれた。
「でしょ。じゃあセナのそれも味見させて」
「肉は渡さん!」
即座に皿を引き寄せる。
「俺はさしだしたのに!」
「知らん!」
わちゃわちゃとやり取りするのが、もう当たり前みたいになっていた。
向かいに座るレックは、終始楽しそうだ。
笑うたびに目が細くなる。
食事が一段落した頃、ふと思い出したように口を開く。
「そういえば、もうすぐ夏季休暇だろ?」
「うん。そうだね」
「予定、決まってる?」
少し考えてから答える。
「幼馴染と一緒に家に帰る予定かな」
レックの動きが、一瞬止まった。
「……幼馴染?」
「うん。同じ村出身」
そう言った瞬間、箸を持つ手がわずかに強張るのが見えた。
「帰る家が一緒、ってこと?」
「そうそう。帰る場所は同じだからねー」
何気なく返したつもりだった。
でも、レックの表情がほんの一拍遅れる。
笑顔のままだけど、目が揺れた。
「……そっか」
それ以上、深くは聞いてこなかった。
沈黙が落ちる。
気まずい、というほどではない。
でも、さっきまでの軽さとは違う。
(あれ?)
首を傾げかけたところで、周囲のざわめきに意識が引き戻された。
午後の授業が近い。
そろそろ戻らないと。
「行こっか」
そう言うと、レックはすぐに立ち上がった。
「うん」
並んで食堂を出る。
肩が近い距離。
いつもと同じはずなのに、
どこか、少しだけ空気が違う気がした。
理由は、わからないまま。




