ふたりで寝る夜
さぁ、シャワーも寝支度も終わった。
もう考えることはひとつだけ。
――寝る。
ベッドの端に腰を下ろすと、当たり前みたいにそこにラウルがいた。
枕に背を預けて、布団を少しだけ持ち上げている。
「はいはい、お邪魔しまーす」
軽く言いながら、隣に滑り込む。
身体が触れる距離。
久しぶりでも、違和感はなかった。
布団を引き上げる音。
夜の気配が、すっと落ちてくる。
「今日さ」
横を向いたまま、ぽつり。
「初めて、A班と街中探索した」
返事はすぐ来た。
「うん」
短い。
でも、ちゃんと聞いている声。
「美味しい屋台を見つけたんだ。
今度、ラウルとも行きたいな」
少しだけ、間。
「……いいね」
低い声。
どこか、抑えている。
「来週末は、またA班と遊びに行くんだけど……
ラウルも、行く?」
布団の中で、空気がわずかに張った。
「……あの男」
低く、言葉を選ぶ音。
「ペアなの?」
一瞬、考えてから答える。
「あの男……レック?」
「……そう」
「生き残るために組んだ相棒、かな」
自然に出た言葉だった。
「……相棒?」
「うん。
野外訓練中、ずっと支え合ってたから。
安心感、あるんだよね」
沈黙。
否定も、肯定もない。
ただ、呼吸だけが続く。
(あれ?)
と思った時には、話題を変えていた。
「それでね、森の部族……じゃなかった、変成科村の話なんだけど」
言葉が流れ出す。
家を作ったこと。
畑を耕したこと。
村みたいになったこと。
壊して、戻したこと。
ラウルは、何も挟まない。
ただ、耳を傾けている。
途中で、頭を撫でる気配。
それだけで、安心してしまうのが悔しい。
話しているうちに、瞼が重くなった。
「……眠くなってきた」
「うん」
返事は、すぐ隣。
意識が沈む直前、
頬に、唇に、首筋に。
今日も、柔らかな感触が落ちた――気がした。
(……気のせい、かな)
そう思う間もなく、
闇が、静かに降りてくる。
ラウルの腕が、逃がさないように回る。
その強さに、セナは気づかないまま。
夜は、何事もなかったふりをして、
ふたりを包んだ。




